- 『逆R指定・幸せのカタチ【読みきり】』 作者:夜行地球 / 未分類 未分類
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原稿用紙約11.6枚
お兄ちゃんと出会ったのは三年前の夏。
ママと新しいパパの再婚が正式に決まった日のこと。
ママから新しいパパには息子さんが一人いるっていう話は聞いていた。
だけど、初めて会った時はびっくりして固まってしまった。
だって、あまりにも格好良過ぎたから。
私がぼうっとしてたら、お兄ちゃんは、
「初めまして、俺は修司って言うんだ。これからよろしくね、麻美ちゃん」
と言って、照れくさそうに手を差し出してくれた。
握ったその手は暖かくて、何だかとても安心できる感じがした。
この人とこれから一緒の家に住めるんだ。
その時、私はママの再婚に反対しなくて良かったと心の底から思った。
それから三年間、私たちはとてもうまくいっていた。
何一つ不自然な所の無い、絵に描いた様な幸せな家庭。
この幸せはいつまでも続くんだって思ってた。
何の保障も無いのに。
パパのニューヨークへの単身赴任が全ての始まりだった。
ママのお店の仕事も急に忙しくなってきたみたいで、夜遅く帰ってくることが多くなった。
広い家に私とお兄ちゃんの二人だけ。
そんな時間が次第に多くなっていった。
それでも、それなりに楽しかった。
お兄ちゃんの笑顔を見ていれば、幸せな気分に浸っていることが出来たから。
でも、それも一ヶ月前に変わってしまった。
大学受験に失敗したお兄ちゃんは、ほとんど笑顔を見せてくれなくなった。
たまに見せる笑顔も、どこか無理をしているようなぎこちなさが見える。
もう一度、お兄ちゃんの心からの笑顔が見たい。
失ってしまった幸せのカタチを取り戻したい。
それが、今の私の一番の願い。
今日もまたお兄ちゃんと二人っきり。
ママはまた仕事で遅くなるって言っていた。
コン、コン
私の部屋のドアがノックされた。
「麻美、ちょっと話があるんだ」
不安と期待の入り混じったようなお兄ちゃんの声。
私がドアを開けると、お兄ちゃんはどこか所在なさげに立っていた。
「なに、話って?」
「実はさ……」
お兄ちゃんは言いづらそうに口ごもる。
でも、その目はちらちらと私のベッドを見ていた。
やっぱり、そうなんだ。
私はベッドに近づいて、腰掛けた。
「これでいいのかな? お兄ちゃん」
私の言葉にお兄ちゃんが目を丸くする。
「お兄ちゃんの考えている事なんてお見通しなんだよ」
私は、へへっと笑ってみせた。
「私ね、この前お兄ちゃんが予備校へ行っている間に、こっそりお兄ちゃんの部屋に忍び込んじゃったんだ。それで、見ちゃったの。お兄ちゃんが本棚の奥にしまいこんでるあの本とか」
お兄ちゃんの顔が赤くなる。
「だから、別に後ろめたく思ったりする必要は無いんだよ。私も心の準備が出来てるし」
お兄ちゃんが申し訳なさそうな顔をした。
「本当にいいのか? 俺が今から麻美にしようとしてるのは……」
「ほら、ごちゃごちゃ言ってないで早く入って来てよ」
その言葉に、お兄ちゃんが私の足元まで近づいて来る。
強がって言ってみたものの、本当は少しだけ不安だった。
ママのお店の常連さん達に聞いても、最初はやっぱり痛さの方が強かったとか言ってたし。
それに、中学三年生にはちょっと早いかなとも思う。
でも、全てはお兄ちゃんの笑顔のため。
それが見れるのなら、多少の事は我慢しなくちゃ。
「麻美、じゃあ始めるよ」
お兄ちゃんの指が私に触れる。
私のほうは準備が出来ている。
お兄ちゃんが少し力を入れた。
「痛っ……」
いきなりの痛みについ声が出てしまった。
「大丈夫か、麻美? やっぱりやめようか?」
お兄ちゃんの心配そうな声。
「ううん、平気。気にしないで続けて」
「分かった。でも、無理はするなよ」
時折訪れるズキンという痛み。
それを私は唇をかみ締めて耐える。
最初はただ痛いだけだった。
それが、途中から痛みに気持ち良さが混じりはじめてきた。
気がつくと、
「いや、そこじゃなくて、もっと右」
なんて事を口走っている私がいた。
全てが終わった後、お兄ちゃんは私に不安そうに聞いてきた。
「どうだったかな?」
「すごく気持ちよかったよ」
「そうか、それなら良かった」
お兄ちゃんはほっとしたように、無邪気な笑みを浮かべた。
久しぶりのお兄ちゃんの笑顔。
やっぱり私の決断は間違っていなかった。
「でも、今日の事はお母さんには絶対に内緒だぞ」
「うん、分かってる。二人だけの秘密だね」
私達は指切りをしてから、くすくすと共犯者的な笑い声をあげた。
次の日は私の方からお兄ちゃんの部屋に乗り込んだ。
「昨日の続き、しようよ」
そう言う私を、お兄ちゃんは呆れたように見つめる。
「麻美、体の調子はどうなんだ?」
「ものすごく快調。お兄ちゃんにしてもらったお陰かもね」
ふん、と力こぶを作ってみせる私を見て、お兄ちゃんは苦笑いした。
「そうか、それならやらせてもらおうかな。俺も試してみたいこともあるし」
ベッドに腰掛ける私とその足元にひざまずくお兄ちゃん。
黙々と行為は続いていく。
やっぱり少し痛かったけど、昨日よりもちょっと気持ち良かった。
ママには言えない二人だけの秘密。
ママがこのことを知ったら、一体何て言うんだろう?
それからの私達にとって、ソレは日課のようなものになっていった。
ママはいつも帰りが遅くて、人手不足を毎日のように嘆いている。
私達の事より、新しいスタッフを雇うかどうかの方が重要みたい。
だから、ばれるわけが無い。
私は完全に油断してしまっていた。
「いま、何か音がしなかったか?」
足元からお兄ちゃんが声をかけた。
「ん、何も聞こえなかったよ。気のせいじゃない?」
「そっか……疲れてんのかな、俺」
お兄ちゃんが行為を再開する。
その十秒後、ガチャリという音と共に部屋のドアが開いた。
ドアの前には、冷たい目をしたママがいた。
「あなた達、最近妙に仲が良いと思ってたら、こんなことしてたんだ」
私達は完全に固まってしまった。
「あらあら、そんなに怯えなくてもいいのよ。ところで、修司君」
「……はい」
お兄ちゃんが気まずそうにママを見る。
「私にもしてくれるかしら? 最近私も溜まってるのよね」
ママは私を押しのけてベッドに腰掛けた。
「返事はどうなのかしら?」
あまり聞いた事の無い、冷たい口調のママの声。
「やらさせていただきます」
お兄ちゃんはママの足元にひざまずいた。
「ん、そこ……そう、いいわよ」
ママの声に熱がこもってくる。
「もっと強く……緩急をつけるのも大事よ」
お兄ちゃんの顔にも汗が浮かんでいる。
「まだ、終わっちゃ駄目。あと五分は頑張りなさい」
ママ、何だか楽しそう。
私は少しだけ嫉妬してしまった。
「なかなか良かったわよ、修司君」
ソレが終わった後のママは、実にすっきりした顔をしていた。
「毎日のように麻美にしてあげてましたからね」
お兄ちゃんが苦笑いする。
「本当はもう少しの間だけ秘密にしておきたかったんですけど」
そう前置きしてから、お兄ちゃんは全てを洗いざらい白状した。
大学を諦めて働くつもりだっていうのは、私も初耳だったけど。
その話を聞いて、ママの目も真剣になる。
「それ、本気なの?」
「はい、本当は最初からそのつもりだったんです。ただ、ずっと決心がつかなくて……でも、今日の事でようやく覚悟が出来ました」
お兄ちゃんの言葉を聞いて、ママは嬉しそうに微笑んだ。
「分かった。明日から私の店でスタッフとして働いてもらうわ」
お兄ちゃんの顔がパッと明るくなった。
「入門書だけを頼りに独学で頑張ったにしては上出来だもの。私の溜まってた疲れも綺麗さっぱり消えたみたい。足つぼマッサージ専門店『ル・シャトリエ』にも新戦力投入ね。さあ、バリバリ働いてもらうわよ」
「分かりました、店長」
お兄ちゃんも調子に乗って答える。
グルルルル……
連日のマッサージで、すっかり丈夫になった私のお腹が空腹を訴えた。
クスクスとお兄ちゃんとママが笑っている。
「それじゃあ、晩御飯にしましょうね。修司君も麻美も手伝って頂戴」
「はい、お母さん」
「はーい、ママ」
ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかった。
これこそ、私が求めていた幸せのカタチなんだもの。
<終わり>
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2004/10/03(Sun)18:36:13 公開 /
夜行地球
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■作者からのメッセージ
ちょっとした悪ふざけです。
精神年齢高い人の方が勘違いするかな、と思ってこのようなタイトルにしました。
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