- 『告白連鎖』 作者:昼夜 / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.65枚
まず、前置きになりますが、作者は是を読んだに当たっての読者様の悪心、不快感などは一切責任を負いませぬ。
自己責任でどうぞ。
「貴女は神を信じますか?」
若い神父はこの広い教会に訪れる大勢の人々の間を歩き、一番前に座り凛とした顔つきの女に聞いた。
「はい、信じます」
女は立ち上がり、神のオブジェにの前へと歩み、跪(ひざまず)いて言った。
「ああ、聖職者として私は失格です」
神父は右手で額を押さえ顔を歪ませた。
「どうなさいましたの」
女は神父を見上げた。
「貴女に恋をしてしまった。神に忠誠を誓い心を捧げた私が貴女に心を奪われてしまったのです」
思いがけない神父の言葉に女は喜びと戸惑いを浮かべていた。返事を伝えようと口を開いたが周りのざわめきがそれを遮っていた。
その神父の告白が引き金となった。
女のすぐ後ろに座っていた男が隣の女に告白し、隣の女は後ろの男へ告白した。その隣の女は前の女に想いを伝え、その女は立ち上がり後ろの方の男に告白した。その斜め前の男は少女に告白し、少女は少年にキスをした。
瞬く間に教会は騒がしくなり、座って神に祈りを捧げているものなど一人も居なかった。皆、教会に居る人全てが立ち上がり、大声を張り上げ、動き回っていた。外にも声が漏れだした。
通りすがりが何事か、と扉の片側を少し開け覗いた。
それがまたもや引き金となった。
押し合い、へし合いだった教会内に扉が開いたことによって僅かな隙間が出来た。
その隙間から我先に、と人々が外へと出ていった。
連鎖はまだまだ起こっていた。教会から出た者から通行人、通行人から教会から出て来た者、通行人から通行人。とにかく好きだという思いを伝えていた。
その時、教会内には只二人が残っていた。神父は女の返事を待っていた。
女は跪いた神父と目線を合わせるかのように屈みこんだ。
「心を奪われたのですか? 私に」
「はい」
「それでは心をくださいな」
「はい、どう、ゾ……」
短い会話だった。どこからそんな力が出たのか、神父は自分の右手を自身の左胸へと突き刺した。突き刺した所で息絶えたようでそのまま前のめりに倒れこんだ。女はそれを避けて立ち、うつ伏せになった神父を仰向けにすると右手を引き抜いた。
神父の右手には脈打つ心の臓が握られていた。
「ふふふ、愛してくださっているのね」
この光景も引き金となった。
開け放たれた教会の扉から覗いていた告白された女が男の心の臓を、告白された男が女の心の臓を、告白した女が自身の心の臓を、告白した男が自身の心の臓を取り出した。
「ふふふふ」
「はははは」
どくん、どくん。
上空でヘリの音が聞こえる。
だがここにいる村人達に届いている様子はない。笑い声だけがただただ響いていた。
「この村はもう駄目なようだな」
「凶暴性の新手のウイルスですかね」
サングラスにスーツを着こなした若い男二人が村を見下ろして言う。
「空気感染のようだ」
「ここより先はまだ大丈夫でしょう。 隔離要請はここまでで報告しましょうか」
「そうだな。 さあ、帰るぞ」
「帰ったら俺たちの町もこうなってたりして、なんてね」
「滅多なこと言うもんじゃねぇよ。 馬鹿野郎」
どっちの男の言葉にもユーモア的なニュアンスが含められていた。
ヘリの音が遠ざかる。
太陽が沈む。
赤黒い光に照らされた神のオブジェの顔はなんだか疲れ果てているようだった。
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2004/09/22(Wed)00:58:50 公開 / 昼夜
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■作者からのメッセージ
前置きも含めて小説、とさせて頂きます。
完璧にイッていると思われるかと思いますが、どうぞ読んでやってください。
批評戴ければ意外にまともに返しますので。