- 『セカンド・アース』 作者:里央真文 / 未分類 未分類
-
全角3616文字
容量7232 bytes
原稿用紙約12.15枚
コピーとは何か?
オリジナルの複製。
セカンドとは何か?
ファーストの次に作られたもの。
地球は滅亡した。だが、科学者たちは第二の地球を作りおえていた。そして、地球のあった場所に作動させた。
そして、死んだ人々のコピーを作った。
全てが二。
全てがコピー。
セカンド・アースとは、こういうものなのである。
一話
明智病院という看板を掲げた場所に、二人の少女が居た。一人はあおい、一人はニーナ。
「ニーナ…私、もうだめかもしれない。私、きっと死ぬんだわ」
あおいがため息をついていった。
すると、ニーナが首を横に振った。おさげの奇麗な赤髪が揺れた。
「そんなことない! そんなこと思わないで。きっと、きっとたすかる!」
ニーナはベッドに横たわるあおいの手を、しっかりとにぎった。
「オリジナルが死んだら、ここはどうなるの。だって、本当の人類をつなげていかなければ…。あたしが絶対生かせて見せるから…」
ニーナはあおいの手をもっと強く握った。
あおいは首を振った。
「無理なのよ…ニーナ。ここはオリジナルの人間が生きられる場所じゃないの。空気も薄くて、ごほっごほっ! …地球と重力も違う。歩くのがやっとなのよ…」
そういい、あおいは目を閉じた。
「疲れちゃった。ごめんね」
そういい、あおいは静かに眠り始めた。
ニーナは、近くにあった呼吸用マスクをあおいに付けた。そしてあおいを悲しそうな瞳で見つめた。そして首を横に何回も振り「ダメダメ」とつぶやくと、前を向いて歩き出した。
「あおいは、地球に帰りたいんだろうなあ…」
そうつぶやくと、ニーナは部屋を出て行った。ガラガラッとドアを開ける音が、部屋に淋しく響いた。
オリジナルの人々は、このセカンドアースでは生きられなかった。生きているのがやっと、ということだった。病院に居る半数は、オリジナルの人々だ。
オリジナルの人は、常にコピーを毛嫌いした。特に、自分の親友や、家族のコピーには。
「もうあの子はいないの! コピーなんかいらない。こんなの、あの子じゃない!」
「あいつはもうもどってきやしないんだ。コピーで慰めてどうするんだ」
オリジナルの人は嘆き悲しんだ。
コピーの人たちも、自分が役に立てなくて、どんなに悔しかっただろう。
そして―…
「零…」
目覚めたあおいは、窓を見つめ、そうつぶやいた。
壊れた青い、ペンダントを握り締めながら。
二話
ガラガラッと病室のドアがあいた。すっと入ってきたのは、この明智病院の看護士だった。
「三月(みつき)あおいさんですね…? これから検査を始めますよ、さあ行きましょう」
あおいは、オリジナルのため、定期検診をうけているのだ。
看護士がそういうと、あおいはぐっと辛そうにベッドから身を乗り出した。看護士は慌ててあおいのそばへ駆け寄った。「せぇのっ」という看護士の掛け声で、あおいは看護士のカタにつかまった。あおいはぐったりして、汗だくだった。
「ハァ…ハァ…」
起き上がることがこんなにつらいなんて、あおいはそう思ったに違いない。何せ、故郷の地球ではこんなことなかったのだから。
そして廊下を三分ほど歩くと、検査室についた。
「先生、お連れしました」
「うむ、わかった」
そういうと、看護士と医者はあおいを持ち上げ、機械の上に寝かせた。「ハァ…」あおいの荒い呼吸は、まだ続いていた。
「力は抜いていいですよ。リラックスしてくださいね」
ピッピッ、ガチャン。機械の操作音が静かに響く。
ウィーンと動き始める機械。あおいは浅い眠りについた。
あおいは、妙にはっきりとした、不思議な夢を見た。
目の前に、小さな男の子と小さな女の子が居る。
「こっちこっち」
身体が自由に動いている。
「今行くよ!」
バシャバシャという水の音。眩しい太陽。
キャーキャーというかん高い子供の笑い声が、キンキンと響いていた。
「はははっ。ほうら捕まえた! 見てみろよ、あおい」
男の子が魚を掴んでいた。その様子を見た女の子はそっちへ近づいていく。
「うわあ! すごーい」
魚を得意そうに持つ男の子に女の子はそういうと、にっこりと笑いかけた。
「零(れい)、すごいね!」
「三月さーん。検査、終わりましたよ」
看護士の声で目が覚めた。
あおいはまわりを見渡してから、看護士に手伝ってもらい起き上がった。
「今のところいじょうはありませんね。休養を続けてください」
「…………」
あおいは無言のまま検査室を出た。
今の夢はなんだったのか?
零という男の子は、いったいだれなのか?
さっき、自分がつぶやいた名前、それはなんだったのだろう。
あおいは、ベッドにどさり、と倒れこんだ。
「それでは私は行きますよ。何かあったら呼んでくださいね」
看護士の声など、まるで聞こえない。
考えるのは、あの夢のことだった。
零とは誰か? 思い出そうとした。が、頭がズキズキと痛む。あおいは「ふぅ」と一息ついて、休むことにした。
夜も、眠れず。考えていることはただ一つ…
三話
翌日のことだ。あおいはベッドに仰向けに寝そべりながら、壊れた青いペンダントを握っていた。
「…………」
あおいは無言のまま、ごろんと横になった。そしてペンダントをぎゅっと握り、深い眠りにおちた。
あおいは、夢を見た。あの時と同じように、とてもはっきりしていた。
大きな丘の上の、大きな木の下に自分が居る。あの青いペンダントを首から下げている。
自分の隣に見知らぬ男の子が座っていた。笑顔で話しかけている。
クスクスッと笑う声、太陽の光でキラキラと輝くペンダント。
「あおい、僕…」
男の子はそういいかけた。男の子と自分の顔が重なった。
バタバタと鳥が飛んだ。
「零…」
そう言い、自分は目に涙をためながら、丘を駆け下りていった。
ズキン…とまた頭が痛み出す。
思い出したい! 止めて、まだ…。
まだ、知りたいことがたくさんあるのに!
そう強く思った瞬間、また夢から覚めた。時は既に朝だった。どうしてなのかわからない。自分で思い出せない記憶がある。検査でも、異常はないといわれたのに…。
「大丈夫? 汗、すごくかいてるよ」
ふと、あおいはベッドの横を見た。すると、そこにはタオルを差し伸べているニーナが居た。
あおいは「ありがと」と小さくつぶやきタオルを取った。
「悪い夢でも見たの?」
あおいは黙りこくったままだった。
「ねぇ? ニーナ…」
あおいが不意に言った。
「このペンダント…ニーナがくれたの?」
そういったとたん、ニーナはわけがわからない、という顔をした。
「違うけど…」
「そう…」
あおいはため息をフー、とついた。「疲れたの?」とニーナに聞かれたが、あおいは答えなかった。
ニーナに相談すべきか、しないか。あおいは悩んでいた。
「りんご、剥いたから。気が向いたら食べなよ? 何か食べないといけないしね」
そういってニーナは病室を後にした。
あおいは、すっと目を閉じた。
4話
「あおい、元気なかった。何かあったのかな…」
ニーナは病院の中庭のベンチに座り、ため息をついていた。太陽はちょうど南の高いところに居た。
「あたしが、あおいと出会った日。ここが、できた日…」
ニーナは空を見上げてつぶやいた。赤色のみつあみがふわりと揺れた。
ここができた日。ニーナは病院の前の海岸線にそって歩いていた。何をしてよいのか、まったくわからないからだ。
その後、ニーナの目はじきに大きく見開いた。誰か、誰か倒れている!
ニーナは慌てて駆け寄った。「まだ息がある」ニーナは確認を取った。
その子はハァハァと荒い息遣いで、壊れた青いペンダントをしっかり握っている。
「大丈夫? どうしたの?!」
ニーナが呼びかけた。すると、
「わ…私っ、わ…わからない。何か大きな音が…ばく、ば…爆発して! 熱かった、と…とっても。ああ、まぶしい光が包んだの…そしたらここに居て…うっ!」
その子は苦しそうに答えた。
「もういい。何もしゃべらなくていいから…。ど、どこか病院につれてかなくっちゃ」
ニーナはその子を起こすと、肩に捕まらせた。「行くよ」といって、歩き出す。目指すは目の前にある病院、明智病院だ。
ヨロヨロとした、足遣い。目は半開き。髪は奇麗な銀髪だった。
「病院に連れて行って、あたし、初めてここのことを知ったんだっけ。そして、最初の友達を作ったのよね…」
ニーナは目を閉じた。すると、オリジナルに居た頃のあおいの笑い声が聞こえてくるような気がした。
「あっ!」
ニーナは不意に叫んだ。
「あおいはあのペンダント、どこから来たのか知りたがってた! この星の誰かがあげたんじゃない。あれは…あれは、あおいがオリジナルから持ってきたものだったんだ!」
-
2004/09/25(Sat)09:02:45 公開 / 里央真文
■この作品の著作権は里央真文さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
四話目です。
状況説明ももう少し入れたほうがよいですかね・・・?