- 『おかあさんとすずのおと』 作者:アッド / 未分類 未分類
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火照った顔が、河原から来る涼しい風で少し冷えた。
いつからここにいるんだっけ。
少なくとも、一時間はいるはずだけど……って、まだほんの十分しか経ってないじゃない。
あー暇だと、ほんっとに時間経つの遅い。
心の中で誰が悪いわけではない悪態をつくと、火照っていた体が十分冷えてしまった――もちろん、これだけで寒くなるわけなんてないのだけども。
……お父さんには悪いことしちゃったや。怒鳴っちゃったのは、私の責任だ。
……横には誰もいないし、それどころか、周りには誰もいない。
きゅっと、自分自身を抱きしめるようにして、急ごしらえで仕立て上げた喪服を見ないようにした。
だって。
悲しくなるから。
ある朝、私のお母さんは布団の中で冷たくなっていた。
昨日までは元気だったのに、そんなありがちな言葉が頭をよぎり、すぐに消えた。
鼻元に手を当てても、生温かい息はかかってこない。
胸に手を当てても、鼓動が無い。
ああ、死んでるや。お母さん。
頭の中が冷静すぎて、悲しみなんて湧いてこなかった。
ただ、お母さんは死んでいた。
私は、お母さんが大嫌いだ。
だって理由もないのによくぶつし、こき使うし、用事を押し付けておいてまた新たな用事を押し付けて、できないというと、ご飯はなくなった。
でも、そんなんでも私のお母さんはお母さんしかいなかったわけで。
悲しみは無いけど、ポッカリと穴が開いたみたいだ。
こういうのを『悲しい』というのかは、私には分からない。
お母さん。
いつか、大人になったら“ふくしゅう”してやろうとしていたのに、何で死んじゃったのさ。
私、自堕落すぎる生活するよ、あなたが命令した分を返すように。
お母さん、じゃあね、悔やんだりしないから。
だから、忘れないであげる。
立ち上がって、お父さんのとこに行こうとした時、お母さんが小さい頃に私にくれた、ポーチにつけた鈴が、ちりん、となった気がした。
悲しい、という気持ちは、どうしても湧いてこない。
けど、ポッカリとした穴が、心に開いた気がした。
これは、かなしいのかな。
すずのおとは、こんなにきれいなのに、すんでいるのに
どうしてわたしたちのこころは、こんなにも、きたないんだろう、よごれているんだろう
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2004/09/14(Tue)21:25:33 公開 / アッド
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■作者からのメッセージ
パッと思いついた言葉を並べたようなものです。
そのため文法が変なところがありますが、ご容赦ください。
ストーリーについてはあえて突っ込まない方向で。