- 『ただの旅人の物語 1・2』 作者:秋風 / 未分類 未分類
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原稿用紙約25.55枚
僕は『ただの旅人』です。
あの時は本当に『ただの旅人』でした。
そして今も『ただの旅人』でいます。
あの時、僕は記憶を探していました。
そして今も探しています。
僕は『ただの旅人』でいつづけています。
たとえ記憶がすべて戻っても
僕は『ただの旅人』でいつづけます。
それは『彼女』との約束ですから。
◇
1 シニカルな笑顔
お日様がてっぺんに上っている空は雲ひとつない良い天気で、
数年旅をしている僕の曖昧な記憶の中でも、とびきり綺麗な青空の日でした。
僕は二日前に寄った活気のある小さな村で買っておいたハムを何枚かナイフで切って、それを先日弓で狙撃されたときに盾にしたので少し歪んでしまった愛用の鉄のお皿にのせまして、火にかけていた小さなポットにパックの紅茶をつっこみ、少し置いてから同じ鉄で出来た愛用のコップに注ぎまして、さらにリュックからリンゴを一個取り出してかぶりついた時でした。
僕は自分の記憶を探す旅をもう3年ほどしているわけでして、さらにそれなりに危機を乗り越える実力も持ち合わせていましたので、かなりまわりに注意をはらってお昼の支度をしていたのですが、どうやら背後にただならぬ気配を感じましたので、かぶりついたばかりのリンゴをお皿において、料理用ではありますが、ナイフを片手に持ちまして、背後にいる気配のする草むらの方向へと思いっきり投げつけました。
けれど投げた先では何の音もいたしません。何かに刺さったわけでもなく、どこかに落ちたわけでもないようでした。
そして困ったことに、ただならぬ殺気が異様な殺気へと変り、僕の元へとものすごい速さで向かってきます。
その気配を持つ『ソレ』は現れました。
『ソレ』は人でありました。
僕の投げた料理用ナイフを左手の親指と人差し指で持ちながら、右手には抜き身の剣を携えて、何故かあちこちボロボロの姿をしておりましたが、
『ソレ』は確かに人間の女性でありました。
しかしその女性の表情はとても不機嫌そうでありまして、その表情を変えぬまま、僕が投げたナイフを僕が投げた速さ以上の速さで投げ返してきました。そして投げ返されたナイフは僕の座っている地面の横に、ガスッという音を立てて突き刺さり、僕は慌ててそのナイフを取ろうかと思いましたら
思い切り『踵落し』なるものを食らわされました。
意識が飛びます。ふっ飛びます。
さすがにブーツから繰り出される『踵落し』は格が違う痛さというものです。
意識の飛ぶ勢いも格が違います。
僕が意識をとり戻すのに、半刻ほど費やしたと思われますが、
実際はほんの数分意識が飛んでいただけだったようです。
(僕って結構頑丈じゃん。)
いや、そんなこと誇っている場合じゃないよ自分。
目が覚めますと、『踵落し』を華麗に決めてくれた不機嫌な女性は、変らず不機嫌な顔でこちらを睨んでおりました。
漆黒の髪の毛に意思の強さが伝わってくる紫色の鋭い瞳を携えて、それほど背丈がないのに、何故か異様に大きな存在として見えまして、彼女が不機嫌な面で剣を鞘に収める様は、見ほれるほど自然で優美なものでした。不機嫌な顔をしていなければ、それこそ本当に見ほれていたことは確かでしょうが。と付け足すことはやめておきます。そんなことを言ったら、今度こそ本当に殺されかねないので首を振って思いを留めて置いておきます。
それでもやはり、優美な動きには変りありません。まあ、踵落としを食らって意識がぼうっとしていたのがイイ具合に効果を上げているだろうということは戯言といたしましょう。
「君さぁ。人が戦ってる最中にナイフとか投げるなよ。危うく後ろから刺されるところだったじゃないか。」
「はい?」
唐突にそんなことを言われましても、僕としてはさっぱり別けのわからない状況のままでして・・・。というか、戦ってたとか有り得ないほど静かすぎる戦いだったのもありますし、僕は戦闘を頻繁にする人間ではありませんから、わかるはずもありません。
あれ?これってさり気に不可抗力じゃないか?
まあ、とりあえずは控えめな抗議をしてみます。庶民に優しいお手軽な民権運動です。ここは村でも町でも国でもないから民権運動なんてしてもどうしようもないわけですが。
「僕はただ、僕の背後のただならぬ殺気に向けて投げただけなので、まさか誰かが戦っているとは知りませんでした。あんなに静かな戦いなんて僕は見たことありませんし、そんな実力も持ち合わせていませんから、気付けるはずか無いんですよ。」
そんな僕の抗議に、その女性は「ああ、なるほど。」と納得してくれたようで
「ゴメンゴメン。悪かったよ。」
と、あまり悪びれた様子も見せずに軽く謝ってくれました。
けれど、その女性は反対に僕にツッコミをいれてきます。
「それだったらさ、殺気感じたからってむやみにナイフなんか投げるなよ。下手すると相手に位置を教えたりして自分の命が危なくなるじゃないか。」
あう。ごもっとも過ぎて反論など出来やしません。
それでも、いきなり『踵落し』を食らわされた僕といたしましては、あなた自身がすでに危険人物なんじゃないかとちょっとどころか本気で思うわけですけれども、恐いし怖すぎるので言わないことにしました。庶民に優しい・・・(略)・・・抗議によって女性が納得してくれたことで良しとします。
僕は早死にしたくありませんから。
「ところで少年。いや、青年か。こんな偏狭に何故いるんだ?旅人なのは見てわかるけど、ここには珍しいものも無いし、来て得する場所でもないぞ?」
「そうですね。でも、僕はここに来たかったんですよ。なんとなく。」
「はあ?」
自分でもよくわからないことを説明しようとしても、他人にわかるわけもなく。
「何だよそれ?」
そんな事を言いつつも。僕の説明のどこかが気に入ったのか、非常に不機嫌な顔をしていたその女性は、ふと表情を変えて、シニカルだけど何故か悪い気がしない笑みを見せました。その姿はとてもとても格好よかったので、僕は内心ものすごく驚いてしまいました。驚きの表情を表面に出せなかったのがちょっとした失態です。
「変な奴だなぁ。」
さり気に失礼だし。
「ま、いいか。」
「何がいいのかわかりませんが、とりあえずありがとうございます。」
「どういたしまして。」
あれ。何か全部「ま、いいか。」で片付けられたような気がするけど気のせいか?
僕が考えにふける間も無く、女性はシニカルな笑みを浮かべたまま、僕に再び話しかけてきました。
「あ、そうだ。君の名前はなんて言うの?」
唐突な、でもありきたりな質問に、僕は答えようとしました。
しかし、困ったことに名前が思い出せません。
仕方が無いので僕は、こう答えました。
「僕には名前があったはずなのですが、どうも思い出せません。あなたに言われるまで気付きませんでした。良ければ好きなように呼んでください。」
その答えに、女性は少し首をかしげましたが
「あー。それは止めたほうがいいかも。私、ネーミングセンスが無いと自信を持って言えるんだよね。時々ジャストフィットする名前もあるんだけどさ・・・・・・。」
そんなことを自信を持って言い切らなくてもいいんじゃないかと。
「とりあえず、変な名前で呼ばれたくなければ君が決めたほうがいいかも。」
ネーミングセンス無いと言い張るくらいなのに、時々ジャストフィットするということは、ジャストフィットした人って一体どんな人?そしてどんな名前?!
そんなくだらない事を考えつつも、僕は少し記憶を探ってみまして、思い出した単語を口にします。
「じゃあ・・・・・・ 『ヨウ』 と呼んでください。」
「 『ヨウ』 ・・・か。なんだか不思議な名前だね。」
「そうですか? 僕にはあまり不思議な名前とは思えないんですが、あなたが言うならそうなのかもしれませんね。」
ふむ。不思議な名前なのか。
「何かほんとに変な奴。」
うわ。自信を持って否定できないのが痛い。
「じゃあ 『ヨウちゃん』 と呼ばせてもらおう。」
ぬを。ちゃん付けですか?
一応19歳で成人男性やってる僕としては、ぷちカルチャーショックです。
「いやいや、そんな困った顔しないでー。冗談だからさ。うん。呼び捨てで呼ばせていただきます。」
冗談だったんですか。この人が言うと、冗談が冗談に聞こえないのは僕だけですか?
少し考え込んでから、僕は考えを強制終了して顔を上げてましたところ、女性はくつくつ笑っていました。
む。笑われてしまった。何か変な事してたっけ? いや、さっきからやたらと変呼ばわりされてるけども。
ひとしきり女性は笑って、その笑いが止まりましたら、今度は女性が僕に自己紹介をしてくれました。
「私の名前はクリシュナ。呼び方はご自由に〜。」
ものすごくポップなノリの自己紹介。
「じゃあ妥当に『さん』付けでよばせてもらいマス。」
「なんだ、冗談とか言わないのか。ちょっと肩透かし食らった感じだなあ。」
さすがに冗談でも『ちゃん』付けできるほど僕はツワモノでは無いですよ。下手なこと言ったらまた何かされそうで恐いですし、恐すぎます。
「そいではさっそく、ヨウ君や。」
「はい。なんでしょう?」
呼び捨てにすると言っておきながら君が付いているのは何故でしょう。
「目的が無いようですから、良ければ一緒に私の祖国まで一緒に旅をしてみない?」
頼みごとをするときは呼び捨てしない主義なのでしょうか?
「クリシュナさんの祖国ですか?」
「そそ。どうどう? 行って見ない?」
「うーん・・・・・・・。」
出会い頭に踵落し食らわせた相手と一緒に旅するには、
相当な根性無いと普通の人は首を立てに振らないんじゃないのかと思ったわけですが。やっぱり言葉に出さないことにいたします。早死には本当にしたくありませんから。
いや、待てよ。首を立てに振っても早死にする確率は高そうじゃないか?
「おーい。魂抜けてるぞー。こっちもどっておいでー。」
クリシュナさんは思ったよりもノリのいい人のようです。
まあ、目的が無いよりも、この人と一緒に旅してたほうが何かいいことあるかもね。
「おーけい。オーケイ。一緒に行きます。行かせていただきます。」
諦めも肝心です。
「あははっ! ほんっと君って面白いやっ! 祖国までの旅は楽しく過ごせそうだよ♪」
クリシュナさんの笑い顔は、やっぱりシニカルだけど憎めない笑みです。
そして『ただの旅人』たる僕と、シニカルな笑顔を持つ『彼女』との
短い旅が始まったのであります。
2 落とし穴にご注意あれ
僕が彼女ことクリシュナさんと出会って三日たちました。
僕は誰かと一緒に旅をすることがあっても、僕自信は他人に深入りするのが苦手でして、一緒に旅をする日数も自然と少なかったのでありますが、今回ばかりは少々違うようでした。
「ヨウ。そろそろご飯にしよう。」
自然と一体になったような素晴らしいまでの自然体のクリシュナさんと過ごした日々はまだたかだか三日ではありますが、他人に深入りするのが苦手な僕といたしましては、楽しく日々を過ごしていることこそ驚きの状況でありましたが、この時はただ当然のように思えたのだから不思議なのです。
「この先は私の祖国では有名な危険地帯なんだよね〜。」
まるでそよ風のような自然さで彼女は僕に言いました。
「いきなり危険地帯って何ですか?クリシュナさん。」
ありきたりな聞き返しではありますものの、一番分かりやすい言葉で返します。
「んー。見れば一番分かりやすいんだけどぉ〜・・・あえて言うなら、落とし穴がいっぱい。」
わかりにくいですし。と言葉に出さずにツッコミを入れていた僕ですが、困った表情をしていたのでしょう。クリシュナさんが少し方眉を上げてむすっとした顔になります。
「だーから見れば一番解りやすいんだって言ってるじゃんかっ。」
左様で。
「そう言うことだからさ、さっさとご飯たべよ〜。」
言うが早いが、すでに準備をし終わっているところがさすがなクリシュナさん。
彼女と過ごした三日間は、それはもうデンジャラスこの上無い日々でありました。
彼女が『危険』だと言えば確かに危険でありましたし、危険で済まされないほど危なすぎる出来事も『危険』の一言で済ますことも多々ありましたが、それでも彼女の危機感地能力はずば抜けて良いわけで、それの信頼性もありますし、経験していてもなお、彼女の言葉に耳を貸さないほど僕は馬鹿ではありませんから、おとなしく従うことにいたしました。
何度も、この人の神経はいったいどんなんでしょう?と思うことがあったわけですが、むしろ進行形でもありますけれど、彼女のことですから、「これが普通だ。」とでも言って、僕がへこみそうなので言わないことにしています。
さて、他愛も無い会話をしながらご飯を食べまして、一休みしてから僕らは再び歩き始めました。
クリシュナさんいわく、ここから先は危険地帯だと言った場所は、秋の紅葉が一年中見られる不思議な森の先にある大きな平原でありました。
その平原は、一年中秋である森とは反対の、一年中春なんじゃないかと思える色鮮やかな美しい花が一面に咲き乱れておりました。
「これは絶景ですね。でも、落とし穴なんて全然見当たりませんよ?」
僕は正直な感想を述べます。一面色とりどりの花畑にしか見えない平原の、何処に落とし穴があるのでしょう。
「確かに絶景なんだけどね〜・・・。よく見てみなよ、花の咲いてる場所なんかをさ。」
「へ?花の咲いている場所ですか?特に不思議に思うところは無いように見えるんですけど・・・。」
僕は立ち止まって聞き返しましたが、クリシュナさんは平原を歩きはじめました。何故だか時々何かを避けてあるいているように、大きく蛇行しながら進んでいきます。そのクリシュナさんの行動と、花の咲いている場所とを良く見たら、クリシュナさんは、真っ赤な花の咲いているところだけ避けて通っていました。そのことを何故なのかと聞こうと声を発しようとした矢先に、僕の居た位置からおよそ100メートルほど離れた、同じく一年中紅葉が見られる森から
「うりゃぁ!」「とうっ!」「ふんがぁ〜。」「きゅぅ〜。」
と、最後に聞こえた声以外は、やたらと勢いのある声が聞こえ、声の聞こえた人数分だけ人が現れました。
すると突然、クリシュナさんがこちらに振り向き、平然とした顔でこちらに声を少し大きめにして言ってきます。
「ちゃんと足元見なよ〜。落ちるから。そりゃあもう華麗で突然に。」
とりあえず、クリシュナさんが歩いたところを歩けば、さほど心配はないだろうと思い、僕はクリシュナさんが歩いた道をなぞって歩いていきます。
そして、勢いありまくりで出てきた四人の人影は、ただまっすぐに雄たけびを上げながらクリシュナさんの方に全力疾走で向かっていきます。真っ直ぐに。
「炎の魔剣士クリシュナ!今日こそ借りを返してやるっ!」
長身で身長ほどもある大剣を軽々片手で持っている男。
「今度こそ負けませんわよっ!!」
白を貴重としたフリルの沢山ついたドレスに身をつつみ、手にはバトルアックスを持っている美女。
「僕だってやれば出来るんだからなっ?!」
両手にダガーを持った気の弱そうな顔つきの少年。
「ひえぇ〜!勘弁ですよぉ〜。私まだ死にたくありませんよぉ〜。」
涙を流しながらも前の三人について行くツインテールの少女。なんか哀れ。
とりあえず僕は、足を止めたままでいるクリシュナさんに追いつき、向かってくる四人の様子を眺めます。4人とも素晴らしい速さで向かってきますが、途中で瞬間移動したかのごとく、一面のお花畑である平原から姿を消します。
消えるときに
「ごふっ。」「あうっ。」「ぎゃあ!」「のぅ。」
と、なんだか面白い悲鳴が聞こえたので、クリシュナさんは吹き出して笑っていました。
「あの。もしかしなくても・・・落とし穴に落ちたんですか?あの人ら。」
「大正解〜♪」
景気良く答えてくれました。
「で、結局落とし穴ってのは、一体なんなんですか?赤い花の咲いている場所がポイントだとは解るんですけど、それ以外はさっぱり。」
僕の答えに、「まあ上出来。」と言って頷き、そして、彼女はやっと笑いを止めると説明してくれました。
「赤い花が咲いている場所が落とし穴の場所。でもソレはなぜかと言うとだね・・・魔法訓練の副産物。」
意地の悪い笑顔を浮かべているのはおいといて、説明しながら4人が落とし穴に落ちて消えた場所に歩いていきます。かなりゆっくり。
「この平原は、私の祖国であるヴァーヴェイン王国の魔法騎士団志願の魔法学校の学生たちが、野外訓練としてここで魔法訓練しに来るだよ。細かいことはまあ面倒だからおいといてだ、ここでは室内では出来ない大規模な魔法や、威力の強い魔法なんかも使えるわけだから、それを避けたり防いだりした後が、訓練後には沢山できるわけ。けども、そのままだとあまりにも自然に対する敬意が無いってものじゃない? だから、その穴を塞ぐ魔法と目くらましの魔法をかけるわけ。それで、目くらましの魔法がかけられてることをわかりやすいようにするために、白系統の多いこの平原では真っ赤な色の花を塞ぎ穴ですよ〜っとわかりやすく見せてるわけだ。知らなきゃほとんど引っかかって落ちるけどな。」
「はあ、なるほど。いいんだか悪いんだかってやつですね。」
「まぁね〜。」
説明が終ったら調度4人が消えた場所につきまして、やっぱりそこには落とし穴は見えませんが、真っ赤な花が円状に綺麗に咲いて見えました。いくら目くらましの魔法とは言え、すごく精密に再現されているなと思える綺麗さです。
その感想を言いましたら。
「ヴァーヴェイン国は魔法技術が進んでるから。」
どうやらクリシュナさんにとっては普通すぎる事のようでした。
「にしても、お前らしつこいよなぁ〜。」
言いながらも、解除魔法を唱えるクリシュナさん。
あれ?クリシュナさんも魔法使えるんですか?
「ディスペル!」
あ、そういえば誰かがクリシュナさんの事を『炎の魔剣士』とか叫んでいたような・・・。
「何処を触っているのですかっ、この変態っ!!」
「仕方ねぇだろっ?!大体3人も上に乗っかられて動けねぇからどうしようもねぇしっ!」
「兄さん煩い・・・。」
「うぅ。狭いよぉ〜。暗いよぉ〜・・・?」
なんだかものすごく騒がしいし。
「相変わらず元気すぎるよお前ら。」
クリシュナさんはシニカルな笑顔を穴の底にいる四人に向けて、そんな挨拶らしきものをします。
「あ、クリシュナさ〜ん!助けて下さい〜!狭くて暗くて恐かったですよぉ〜!」
一番上にいたのはツインテールの女の子。間延びした喋り方が独特です。
「一番上はキオちゃんか。キオちゃんは素直だから親切なオネェサンが穴から出してあげるぞ〜。」
クリシュナさんが親切?!いや、確かに素直な場合はとっても親切か・・・。
「わぁ〜い!ありがとですぅ〜!助かりますぅ〜!」
それほど深くはないので、手を掴んで引き上げました。でも、本当にキオちゃんとか言う少女だけしか穴から出してあげる気は無いようで、他の三人は放置したままです。むしろ、引き上げられた少女も他の三人を引き上げる気が無いもの問題ではあるのですが。
「コラー!キオっ!俺らを出せー!!」
なにやら抗議の声が穴から聞こえますが
「皆は少しそこで反省すべきですっ!」
抗議の声を抹殺する少女。なぜか間延びしない言葉で喋ると恐い印象が・・・。
「どうもすみませんクリシュナさん。結構急ぎの用事があるって聞きましたですよぉ?ささっと私たちを放置して国に戻ってくださいですぅ〜。色々な事情はクリシュナさんの用事が終ってからするですから!」
「そりゃあ嬉しいね。ありがと。んじゃ、お言葉に甘えて先を急がせて貰うよ。」
名残惜しさとかは一切無しに、そそくさと歩き始めるクリシュナさん。僕は急いで後を追います。
そんな僕に、キオちゃんという少女が言いました。
「あなたはこの世界の人っぽくないですねぇ〜?」
「えっ?」
聞き返したけれど、少女は仲間が落ちている穴に向かって、色々と抗議をしていました。
そして、立ち止まっている僕を振り返ってクリシュナさんが叫びます。
「置いてくぞ〜。」
その言葉に僕は反応して、疑問を抱いたまま歩き出しました。
この世界の人っぽくないってどういうことだろう?
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2004/10/05(Tue)14:23:02 公開 / 秋風
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■作者からのメッセージ
一ヶ月ぶりの更新になってしまいました。
どうもリアルが忙しくて皆さんの作品見れないし、自分の小説もかけないし・・・という状況でしたんで申し訳ない_| ̄|○
最近めっきりと秋っぽくよりも冬に近くなってきましたね。まわりは風邪引きさんばかりです。私も風邪引いて一週間咳き込んで大変だったんですけどね?
体調管理はしっかりしましょうっ!w