- 『ひとり―on one's own―』 作者:紅霧ナガレ / 未分類 未分類
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 原稿用紙約4.85枚
 
 [>昴サン
 
 今晩和。トイです〜。まだ六月だけど暑いデス。
 今度オフするんだけど来ませんか〜?
 日程は6月25日(木)でPM2:00 R駅前集合です。
 今のところほかにも…ほめほめサン,江戸サン,ゆらサン,夏月水乃サンがいらっしゃる予定!
 ぜひぜひ来てください!
 来る,来ないの連絡はトイにメルください。そういえば昴サンから一度もメル貰ったことないよ〜。欲しいなァ。なんちって。
 昴サンが来てくれるのを祈ってます!
 
 >ほめほめサン
 
 ごめんね〜。レス返し遅くなって。
 オフの日程は>昴サン(↑ね)のとおりです。
 大丈夫!?塾と重なってないっ?
 もし重なってたら抗議しに行くー(笑
 では!
 
 fromトイ]
 
 [昴]ことオレは,キーボードに手を沿える。全ての指が動き出すと同時に,かたかた,と軽い音がつづく。
 [トイ]にメール。―それが目的だ。
 
 [昴です。
 オフ行かせて頂きます。2時ですよね?
 黒いコート着てます。もし見つけたら声かけてくださると嬉しいです。
 
 話は変わりますがトイさんは何歳ですか?
 ちなみにわかたしは15です(中三)
 
 では]
 送信ボタンをクリックする。ヒヨコが封筒を加えているアイコンが右往左往するが,すぐに元の画面に戻った。
 時計をみながら欠伸をしている間―パソコンから離れて,キッチンでコーヒーを煎れている数分のあいだ。すでに返事はきていた。急いでカップ片手にファイルをひらく。
 
 [トイですっ。
 すごいですね〜。タメですよ!わたしも中三の15歳です。
 
 やった!昴サンも着てくださいますか。嬉しいですっ
 わたしは赤いサンタさんみたいなコートなので,昴サンが裂き見つけたら声かけてくださいねっ。
 ところで昴サンは部活入ってますか!?
 わたしは音楽部の指揮者です。楽しいですよ〜。顧問と先輩怖いけど…中高一貫の活動なんです。
 それではまた。]
 メールの返事をうつ。幾分の時間も要しない作業だが,今回はやけに時間を要した―ような気がした。時計の長針はたった60度しか回らなかったのだけれど。時間の錯覚の酔い…とでもしておこう。
 
 [返信ありがとう御座いました。
 同い年なんですね。もうすぐわたしは16になりますが。
 誕生日が29日なんです。
 わたしはパソコン部所属ですよ。とても暇で帰宅部同然なんですけれど。ゲーム製作くらいですかね。明確に「部活動」と称せる作業は。先輩後輩関係は全くなくて,いいクラブですよ。
 頑張って下さい。いつかは最上学年になるのですから。
 
 赤いコートですね。
 声をかけます。
 オフは何処で行うのですか?ほかの皆さまの服装ももし分かっていれば教えて下さい。以上です。]
 
 コーヒーをすする。シロップもミルクも入れていない,純粋なブラックコーヒーはいつも感じるよりやけに苦かった。はじめ熱湯だったそれはいつか,冷たくなっていた。それの苦味は喉にしみついてしまい,水を飲んでもコーヒーの味はぬぐえなかった。
 
 [トイ]に会いたかった。
 ディスプレイからもれる微かな蛍光。丁度オレの目前のカレンダーが「6月22日」を示しているのを照らしていた。そのまま向かったキッチンでコーヒーを紅茶に変え,またパソコンを見る。…またキッチンにいた刹那に返信が届いていた。「詳細は掲示板にかいています」とだけの真っ白なファイル。文字がかすれた汚れのようだった。
 
 [トイ]に会いたい。今はそれだけだった。
 
 
 to next…続
 
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2004/08/13(Fri)22:49:53 公開 / 紅霧ナガレ
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■作者からのメッセージ
 はじめまして。紅霧と申します。
 初めて書きます。小説は。
 掲示板への書き込み,メールがほとんどを占めてしまいましたが,次は説明文のほうが割合多くなるとおもいます。
 
 辛口で構わないので,どしどしアドバイス,お願いします。
 
 次回,アテネの炎の余韻が波うつ頃に第二話を投稿します。眼を通して頂けると幸いですv
 
 では。