- 『ヒーロー!『一』』 作者:鈴鹿 / 未分類 未分類
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「和っ、早く、早く! 」
そう叫びながら、ポプラ並木を男の子と一緒に走っている少女がいた。
「早くしないと、遅刻よ。ち・こ・く」
彼女は、この町の中学校に通う女の子。
「まてよ、夏。俺、今朝足捻ったんだぜ? もうちょっとゆっくりいけないのかよ・・・」
そういいながらも、何とか彼女の速さについていっている少年、彼は彼女の幼馴染だ。
「まったく、朝遊んでるからだぞ。夏、遅刻しても知らないぞ」
彼ら・・・「如月夏と蒼井和」といえば、中学校の名コンビ。
「あたしら、いつだって無敵だから大丈夫よっ! きっと! 」
その時、キーンコーンカーンコーンと、空に鐘が鳴り響いた。
「キャーっ!遅刻するーっ!! 」
そんな二人の、夢は・・・・
ヒーロー! 第一話 いじめは絶対許さない!
ガラガラガラッ、と、ドアを開ける音が教室に響いた。
「フー・・・ぎりぎりセーフね」
そう、一息ついて夏は自分の席に着いた。
「お・・・おはよう、如月さん」
そう、夏に声をかけてきたのは、クラスで一番おとなしい、向居ななみだった。
眼鏡は大きい丸型、髪型はおさげ、そして、内気。
そんな彼女は、いつも女子にいじめられていた。
「向居ってさー、態度悪いんだよね。こっちが悪いことしてるみたいじゃん。やめてほしーよねぇ」
「そーそー、いっつも下向いてるし。ウチらから話しかけんの待ってるっての? バカみてー」
女子達は、わざとななみに聞こえる大きさの声でしゃべっている。
・・・これにはさすがにいらいらしてきた夏は、思いっきり机をバンッ! と叩いた。そして、一言「うるさいよ」といい、また席に着いた。
それを見ていたななみは、ただオロオロとしているだけだった。
「・・・・・・」
そして、放課後。
ななみは、あの女子達に校庭に呼び出されていた。
「あの・・・な、何の用でしょうか・・・・私、これから塾が・・・」
ななみがそこまで言いかけたとたんだった。
バンッと、ななみのかおすれすれに拳が飛んできたのである。
「あんた、むかつくの。下向いてて、そんなに楽しい? ・・・まるで、こっちが悪いことしてるみたいじゃない。キライなのよ、そーゆーの」
ななみに対し、不満をぶつけてくる彼女。
「そ、そんな・・・」
ななみのめは、今にも涙であふれている。
「わ・・・私はただ・・・」
「ただ? ただ何よ!! 」
女子達の不満は、これだけでは納まらないようだ。
「明日、いい? 明日よ。・・・不幸なことが起こるわね。絶対」
そういい残し、彼女達は去っていった。
「・・・」
ななみは、無言のまま涙をためた目を下へ向けた。
翌日・・・
「おっはよーん♪ 」
そう、元気よく教室に飛び込んできたのは、「夏」
夏は、ふとななみの席の方をみた。
「・・・ななみ? 」
ななみは、ガタガタと振るえ、目は潤んでいた。
慌てて夏はななみに駆け寄った。
「ななみ、どうした? また昨日の人たち? 」
夏がななみに聞いた、そしてふとななみの机に目を落とした。
「・・・これって・・・」
そこにはぐちゃぐちゃに破かれてしまったななみのノートがあった。ノートには、数本の画鋲が刺さっていた。
そしてななみの机には、血が少しポタリ、と落ちていた。
「画鋲・・・なんてひどいっ・・・」
ななみは無言のまま、教室を後にした・・・
「ななみ・・・」
そして、女子トイレ。
「ん?」
夏がたまたまトイレに行くと、あのななみをいじめていた女子達がいた。
手には、水の入っているバケツ・・・
「・・・・あ・・・」
何かをいいかけ、すぐに夏は物陰へ隠れた。
じっとして、夏は聞き耳を立てる。
「そこにいるのはわかってんのよ。ほら、いくわよ・・・。からだ、ぬらしてあげるから! 」
女子達はしまっているトイレのドアの向こうに話しかける。
「そうか、ななみはトイレに・・・」そうおもい、夏は彼女達の前へ出た。
今にも、トイレのドアの向こうにバケツを思い切り投げようとしている女子達の手を、夏がパシッと掴んだ。
「キャッ?! 」
夏がキッと睨みつける。
「あなた、こんなことして楽しい? 」
夏が睨んだまま女子に聞いた。
「た・・・楽しいわよ! だって、あの子が傷つくの嬉しいもの・・・私はあの子が嫌いなの! わかった?! だから苛めるのよ! 」
女子のリーダー的存在の子がいった。
「・・・じゃあ・・・」
夏は、女子の手をぎゅっと強く握った。
「ッ痛・・・」
「あたしがあなたに同じ事をしたとしたら? 」
夏の目は、まだ彼女を睨みつけている。
「せ、先生に言いつけるわ! だって、いやだものっ! 」
「なら・・・」
夏はもっときつく握り締めた。
「痛いっ! 」
もはや、夏は彼女の苦痛の叫びなど聞いてはいない。
「あなたが嫌なことは皆嫌なの。人が嫌がることをして楽しむ人なんて、人間失格よ! 彼女も・・・辛い思いをしたのよ? だから、謝ってあげて。じゃないとあたしが許さない」
キッとにらみつけた夏の目は、彼女を捉えてはなさなかった。
「・・・わかったわ。謝る! もう、いじめ・・・しない。・・・でもね・・・」
彼女がそこまでいうと、夏は握りしめていた手を離した。
「向居さん、今度から・・・下向かないで、明るく、一緒に話そうよ」
その言葉を聞いた夏は、にっこりと笑い、彼女の名札を見て言った。
「えっと・・・絵里?松田絵里。 ・・・よーしっ! 」
そういい、ドアのほうに駆け出す夏。
「じゃーねっ、絵里! 」
そう言い、夏は出て行った。
残された絵里達はぽかーんと口を開けていた。
くすくすっと笑みが、絵里からこぼれた。
「向居さん・・・いえ、ななみ、一緒に、話そう? ねっ」
トイレのドア越しに、ななみに話しかける絵里。
「・・・如月さんって、誰とでも友達になれる気がするわ・・・松田さん。ね・・・? そうおもうでしょう・・・? 」
「・・・うん・・・」
「如月さんは、私にとってヒーローだったわ」
「わたしも。・・・そんな気がする・・・・」
◆ ◆ ◆
夕方5時・・・
「和ーっ! ごめんね、帰るの遅くなっちゃって」
ばたばたと校門で待っていた和の元へ走ってくる夏。
「お前のことだから、また問題でも解決してたんだろ? 無敵のヒーローさんよ」
「うんっ! 」
にっこり笑い、駆け出す夏。
「あたしたちの夢は、世界中の人を幸せにすること。・・・それが・・・」
「ヒーローの役目!! 」
続く
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2004/08/09(Mon)13:02:42 公開 / 鈴鹿
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■作者からのメッセージ
どうも、鈴鹿です
連載物はじめてみましたが、どうでしたか?
MUU・・・自分ではよくわかりませんが、
また登場させていただきます。でゎ!