- 『ここで造られた 読みきり』 作者:風間 リン / 未分類 未分類
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全角2370文字
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原稿用紙約8.35枚
ピピピピッ ピピピピッ パシ
機械的な目覚ましの音が布団の隙間から出てきた手によって消される。
「ふぁぁぁ〜。ねむー。もう朝ぁ?早すぎぃ…。」
女子中学生、柳瀬メグミ。かわいいといえばかわいい。家も裕福。
階段を降り、リビングに入ると母の裕美が朝食を作っていた。
「メグ、おはよう。」
その言葉にまったく反応せず、おいてあったトーストをかじった。
朝の電車登校。もっと反対していれば金で入ったお嬢様学校に行かずに近くの公立中学校にいけたのに、毎日こんな満員電車にのらずにすんだのに、と入学当初家で嘆いていたがもう慣れた様子だった。
メグミは有名な私立女子中学に通っていた。
学校に着くとまずすること、それはあるクラスメイトの靴の中に画鋲と砂を入れること。
典型的ないじめ。メグミはいわゆるいじめっ子。
「柳瀬さん、どうしてこんなことするの?」
集団でサユという子を殴っているとき、虫のような声で言われた。
「何でって?ストレス解消。あんたムカツク。暇つぶし。わかった?」
その言葉に唖然し気力を無くしたサユのことなんてメグミは忘れていた。
今の標的(ターゲット)は学校でもずば抜けてかわいいと他校の男子がもてはやす平山麻衣。
父が有名な会社の社長らしく、教師達からも気に入られていた。持って生まれた美貌と権力がやるせなかった。
おとなしい性格で臆病なのでいじめやすかった。あくまでこれはメグミの頭の中の麻衣の性格だが。
学校にばれないように地味ないじめが続く。
殴るときもばれないように見られたら恥ずかしいようなところを殴る。顔は絶対に汚さない。
「平山様ぁ、あんたすっごいお嬢様なんだってねぇ。」
メグミが麻衣の髪の毛を引っ張っていやみったらしくささやく。
ギロリと一瞬麻衣がにらんだ。
「なんだよっ!その目は!!死にたい?」
メグミのポケットから小さなナイフが出てきた。
「え、ナイフじゃん。メグそれヤバイって。」
回りにいた女達がナイフを見て顔を青くした。
「麻衣、死にたくなかったら私をご主人さまって呼びな。」
「ご、ご主人様…。」
麻衣が小さな声で言った。
「ぎゃははは!!ホントに言ったよ!この馬鹿!!あははは!!」
メグミや回りにいる女達がゲラゲラ笑った。
麻衣は走ってその場を去った。
麻衣が学校にこなくなって3日。
「あいつ、今日もこないよぉ。どうするメグぅ。」
ひとつの机に何人もの女が群がる。
「ほっとけほっとけ。あいつん家は名家だから責任感じて学校来るからぁ。」
メグミがそういった瞬間、教室に女が一人走ってやってきた。
「メグっ!あいつきたよ!」
「ほらきやがった。今日は何しようか。」
メグミが立ち上がった瞬間、放送が鳴った。
『1年5組柳瀬メグミ、阿藤由加、長谷啓子、西園寺あさみ、山下沙希、斎藤みゆき、北川理恵、至急職員室に来なさい。』
そのメンバーは麻衣をいじめていたメンバー。丁度机の周りに集まっていた7人だ。
「え、もしかしてバレた?」
「でも何で!」
「ヤバイよっ!」
「どうする!?」
そんな会話が続く。
「し、至急って言ってるし…職員室行こう。」
メグミは努力で成績首位をとり、教師の前では優等生でいた。世間にばれるのが本当に嫌だった。親にばれて今の裕福な生活ができなくなったら…。
「「「「「「「し、失礼します。」」」」」」」
7人同時に職員室に入る。
「遅いわよ、もう少し早くこれなかったのですか?」
学年主任の教師がいた。
「何か御用ですか?森先生。」
軽く微笑を漂わせメグミが言った。6人はメグミの後ろにぴったり張り付く。
「柳瀬さん、平山さんからある話を伺ったのだけど、あなた達にに質問してもよろしいですか?」
メモのようなものを見ながら言った。
「何でしょう。」
「平山さんが、あなた達にいじめられているというの。本当かしら?」
「そんな、私達と平山さんはとても仲がいいのですよ。一緒にいるところ、先生は見たことありますよね?」
「ええ、あなた達が一緒にいるところは何度も見たことがあります。だから心配になって。」
よし、これできっと大丈夫だ、と7人は確信した。
「失礼します。」
麻衣が入ってきた。後ろにはスーツ姿をした男が二人立っていた。
「お嬢様の弁護士の村田と申します。」
「お嬢様護衛の黒川です。」
「メグ、やばいよ。」
メグミのすぐ横にいた由加が小声で言った。
メグミは真っ青な顔をしていた。
「ここ一ヶ月、お嬢様に命じられお嬢様のあとを追っていました。この娘らにお嬢様が殴られているときの写真です。」
一枚の写真が出された。写真は一枚だけでは終わらなかった。
次々と写真が出てきた。
「これをお聞きください。」
麻衣が紙袋からカセットテープを取り出した。
平山様ぁ、あんたすっごいお嬢様なんだってねぇ
なんだよっ!その目は!!死にたい?
え、ナイフじゃん。メグそれヤバイって
麻衣、死にたくなかったら私をご主人さまって呼びな
聞こえてくるのはあのときのメグミたちの会話。
「証拠は十分です。お嬢様はあなた方を訴えたいと申しております。」
「いまさら謝っても無駄だからね。 敗者ども。」
メグミに顔を近づかせ悪魔のような笑みを浮かばせながら麻衣が囁いた。
そのまま泣きじゃくりながらメグミ達はその場に座り込んだ。
麻衣の顔は達成感に満ちていた、とメグミは思った。
その後、その7人が追放となりその中学には通えなくなった。
メグミは親に見離され、家での立場が狭くなった。
全寮制の学園に入り監禁されるような日々を送るのが、メグミのその後。
麻衣はというと、あの学校の人気者になっていた。
その後、麻衣がとんでもないことをすると薄々きずくのはメグミだけであった…。
END
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2004/08/09(Mon)01:00:29 公開 /
風間 リン
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風間 リンさんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
今回、前作の番外編を書かせていただきました
麻衣の中学生の時の話です。
楽しんでもらえたら光栄です
感想お待ちしております