- 『流星群の唄−そして青鳥は終わりを告げる 第1話』 作者:神璃 / 未分類 未分類
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原稿用紙約12.6枚
女神は、何を想ったのだろう。
俺の幸せを吸い取ったのは、神々なのか?
俺はあの日から、何を失くしてしまったんだろう…
流星群の唄―幸せの鳥の鎮魂歌―
そして青鳥は終わりを告げる。
#1
「流亜君…。ここの問題、あってた?」
少し響きのある声と、可愛らしい顔の少女。
璃世(リセ)だ。
流亜(ルア)の彼女であり、可愛らしい顔は頭の良さそうな雰囲気を持つが、実際には成績は決して良い方ではない。
そして璃世は、時々おかしなことを言う。
「…神は、欲深い人間には、救いの手を差し伸べてはくれないもの…」
そう、呟いている。
「一瞬、ほんの一瞬でも、その小さなものを本物と間違えてしまったとき…。それは偽物、本物なんて存在しない…」
璃世は暇なときいつも、この文の載っている本を読んでいる。
題は分からない。ぼろぼろに擦り切れて、題が読めないのだ。
流亜と璃世は一週間前、どさくさに紛れて成立した恋人同士だ。
璃世が文化祭の準備で忙しい時、流亜が手伝ってくれた。
それから文化祭のごちゃごちゃした雰囲気に紛れて、いつの間にやらこうなった。
流亜は璃世を、普通の女子として可愛い目で見ていた。
微笑み。
あなたの微笑み。
それがあるから。
大切な
宝物で。
本当の私を、
あなたは知らないから。
彼氏だから、彼女のことを全て知っている。
そんなことはありえないのだ。
「流亜君…。本当のシアワセって、何だと思う…?」
璃世が流亜に、突然聞いた。
「友達と遊んでるときかなあ…寝ていて、いい夢を見てるときかなあ…」
小さな声で、璃世は言う。
「璃世…?」
不思議に思った流亜が、彼女の名を呼んだ。璃世は、何やら慌て始めた。
「え…?あ、あのねっ、私がいつも読んでる本に書いてあるの、えっとね…、あ、あれ?」
璃世はいくつかのページを捲り、その文が書いてあるページを探し当てた。
「あった。ほら、ここ…」
シアワセを求める者は、本当のシアワセを見ることは無い。
幸せを願わないものに、本当のシアワセを見る権利は無い。
本当のシアワセ、それは誰にも“わからない”。
文を読み、流亜は何か感じたことがないような感覚に襲われた。
「あ、ごめんね流亜君、変なこと聞いちゃったね」
「いや、いいんだけどさ…」
そのことは、気にしない。
永遠を彷徨う者が聞いた。
あなたの幸せとはなんですか?
悪戯な女神は答えた。
それは、内緒よ。
「…ごめんね…。私だって辛いの」
彼女の瞳から輝く雫が落ちた直後、彼女の目の前の小鳥は、動かなくなった。
「残酷よね、運命って」
女らしい口調と共に、璃世と同い年ほどの少女が現れた。
「由菜…」
由菜(ユナ)という少女は悪戯を考えるように微笑み、璃世に近づいた。
「久しぶりね璃世。生贄は決まった?」
生贄、と言う言葉に動揺もせず、璃世はさらりと言葉を返した。
「実はまだなの。でも私の通う学校には、生気で満ち溢れた人が沢山いるから ちょっと迷っちゃう」
「そう…。私も実はまだなの。私は学校になんか行かないしね…」
由菜は溜息をついた。困っているようだ。璃世は少しだけ微笑み、言った。
「私の通う学校に来る…?」
由菜は顔を上げた。璃世は微笑みを絶やさず、また優しく言った。
「いっぱいあるから」
由菜は嬉しそうに顔を輝かせた。
「いいの!?ありがとう!」
「幻霧の祭り、朝凪の祭り、舞星の祭り。この三つは済ませたの?」
「うん。いい生贄はいなかったけどね…」
由菜は悪戯に微笑み、それと逆に璃世は哀しく俯いたが、お互い手を振って別れた。
翌日、璃世や流亜のクラスに、新しく来た者がいる。
「由菜です。これからよろしくお願いします」
彼女は頭を下げ、皆が拍手する。
守りたい人がいる。
私にとって
それは罪。
私が私である限り…
「璃世、由菜ちゃんの知り合いなの?」
転校してすぐに仲良くなった由菜と璃世の姿を見て、2,3人の女子が聞いてきた。
「うん。そんな感じ」
璃世は微笑んで答える。2,3人の女子が去っていくと、由菜は璃世の耳元で呟いた。
「私達の正体も知らずに、よくもまあ話しかけて来られるわね。しかも人間の くせに璃世を呼び捨てで呼んで」
「仕方ないよ。私達が神であり化け物であるだなんて、誰が信じるの?」
言ってから璃世は「今の言葉、何かの映画みたい」と、苦笑いして言った。
由菜も微笑み、周りに聞こえないように呟いた。
「それもそうね。虚無神」
「…あなただって、崩壊神のくせに」
「あはは、そうだった!」
由菜は用事があるらしく、二人は手を振って別れるた。
璃世は何気なく天井を見つめながら、溜息をついた。
「璃世?」
溜息をついたところを見たのか、彼女の光である流亜が近づいてきた。
「流亜君、あのね…!」
璃世は突然のことに焦って、不思議顔の流亜に言った。
「あのね、あんまり私に近寄っちゃダメだよっ」
それだけ言って、璃世は走り去った。
流亜は不思議に思ったが、その場を後にした。
「璃玖姉様…私どうしよう…」
大精霊神・璃玖(リグ)は璃世優しいの義理の姉だ。
そして、一年前から本当に精霊と化している。
虚無神・璃世、崩壊神・由菜、大精霊神・璃玖、そしてもう一人、修羅神。
この4人に女神が加われば、始まる…女神刻の祭り。
穢れた人間達を削除する儀式の幕開けとも言える、聖なる祭り。
私の行動が、
指し示す残酷な答え。
私の存在が、
証拠となる罪の重さ。
「やっと来たのね、修羅神・襦羅」
襦羅(ジュラ)は少年だ。
暗いイメージを持つが、整った顔立ちの彼は、この世の全てを嫌っている。
人間はもちろん、自然、町、動物、平和、戦争、生命、死、魂、心までも。
「…大精霊神がいないのに、女神刻の祭りができるのか…?」
「大丈夫。大精霊神の能力“声”なら、お墓に封印されてるわ」
由菜は微笑んで言った。
「私の能力もあなたの能力も、もうすぐ完全になるわ」
「俺の能力“眼”、お前の能力“言”…」
「よく覚えてたわね。じゃあ問題。璃世の能力は?」
「…“涙”…」
遊び半分の由菜と、無表情で答える襦羅。
通りかかった璃世が歩いていく彼らを見つけ、追いかけた。
いつの間にか、黒い雲が空を覆っていた。
璃世は哀しそうに空を見た。
雲の黒い色は、闇の象徴のようだった。
「由菜!…と、襦羅君!」
「あ、璃世!奇遇ね」
「うん、通りで見たから…てか、雨降りそうだよ、傘持ってる?」
雷が、鳴り響いた。
窓に打ち付ける雨の雫。
心を打ちつける涙の雫。
途中、襦羅と別れ、璃世は由菜の家へとやって来た。
そして、これから起こさなければならない“祭り”のことを話した後、璃世は由菜にとあることを告げた。
「…それ、やばいんじゃない?」
「うん…。仕方ないよね。私、人間と付き合うなんて、罪だったんだもの」
「そりゃ…罪でしょうね。だからって、生贄にしちゃうの?」
「私があっちに行けば良いんでしょ?私、行くよ」
「え!?あそこに行くの?彼氏悲しむんじゃない?」
「いいの、あそこに行けば、あの人助かるし…ね」
雨は、大粒になっていった。
雷が鳴り響き、薄暗い部屋の中を一瞬照らす。
その瞬間、璃世は微笑みながら言った。
「姉様の仇…襦羅君を制裁できるチャンスだし」
少しずつ
でも確実に。
自分の中で、何かが崩れていく。
あれほど考えたシアワセが
今では恋しく思えてしまう。
ああ、
なんて愚かな自分。
哀しくなるほどに。
君が私を許してくれるのなら、
私はもう何も望まないだろう。
モノクロに包まれる、
自分の心。
吐く息は白く、
生きる彼女は暖かい――
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2004/08/08(Sun)17:24:00 公開 / 神璃
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■作者からのメッセージ
はじめまして、神璃と申しますw
小説を書くにいたってはまだまだ初心者なんで、これからよろしくお願いしたいです(ぇ)
この小説も進み方がごてごてだなぁとか思いつつ書いた気がします(汗)
頑張って完結させますので!(ぁ)