- 『渇き水 “第1話”』 作者:ねぎとろ / 未分類 未分類
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東京都のとある郊外で記録的な集中豪雨に見舞われた。
だが奇妙なことに洪水にはならない、下水の流れも緩やかだ。
人々や気象庁がそうゆう事態に気づいた中を走り続けている少年がいる。
「ハァ、ハァ...どこだ、何処にある。早く行かないと俺がし...。」
少年はふと自分が心の中で思っていることを呟いてると知り口を止めた。
周りの声も気になる。だが今はそんなことを思っている暇はない。
1秒でも早く走らないと恐れていた事態になる。
「何なのあの子...傘も差さずに...何か急いでいる用でもあるのかしら...」
少年は再び周りの声が耳に入った。―そうだまわりの人たちの言う様に
そんなに急がなくても戻って家に帰ってシャワーを浴びて暖かい布団で
寝ればいいじゃないか―少年は一瞬とどまった。―そうだそれでいいそのまま戻って家に帰れ―だが少年は、思っていることを払いのけ一心不乱に
走り続けた。
「畜生...あんなことをしなければ...あんなところに行かなければ...。」
少年は、その時あった出来事を心に思い浮かべた...。
「可哀想ね、まだ46歳でしょ。杏子さんいい人だったのにどうして。」
東京都のとある郊外で小さな葬式が行われた。
看板には“橋本杏子 告別式”と書かれている。
その葬式に1人の少年が正座をし浮かない顔をして座っている。
「おい直人。元気出せよ。母さんが死んだって父さんが居るじゃないか。」
その少年の隣で大柄な男性が囁いた。
「うん。そうだね。母さんが死んでも父さんが居るよね。そうだよね...」
そう言うと直人は、再び沈み始めた。
「ほら、もうお通夜が終わりだぞ。直人、先に帰るぞ。お前も帰るか?」
父親が直人に呟くように喋った。
「ううん。先に帰ってて。あとからまた来るよ。」
その言葉を聞き取ると無言のまま父親は帰っていった。
周りの人数も徐々に減り始めてとうとう残ったのは、
直人と坊さんだけになった。すると坊さんが直人に近寄りこう言った。
「坊主。そう落ち込むな。生き物は誰だって死ぬ運命なんだ。
たとえ人間であろうと犬であろうと死ぬんだ。“たまたま”お前の母は
死ぬのが早かっただけなんだ。ほらよ、これをもってここから
南に少し進んでみろ。“水神神社”って言う神社があるはずだ。
そこで参拝してみろすこし気が晴れるはずだ。ほれ元気出せ。じゃあな。」
直人の手に10円玉を渡し外に出て行ってしまった。
直人はとりあえずその神社に行ってみるかと思い、外に出て南に向かって
歩き始めた。
「...?おかしいなこんなとこは、初めてだ。まだ5分ぐらいしか
歩いていないのに。ん?何だあれは、あれか?」
直人の視線の先にはかなりボロの神社がそこにたたずんでいた。
石には読みにくいがこう書かれていた、“水神神社”と。
―あのおっさんが言ったのはここか?まぁいいや―
直人は夕日に当たり赤くなった小さな賽銭箱に10円玉を入れた。
そして目をつぶりこう拝んだ。―母さんの冥福がよくなりますように―
そう願うと回れ右をしていざ帰ろうとしたその時、目の前に、
編み笠を被り青いボロボロのみすぼらしい着物を来た男が立っている。
編み笠で顔はわからない。そしてその男が直人にこう言った。
「橋本直人...私は、ここの神社の主、清零と申す。貴殿にこの渇き水の
称号を与える。」
そういうなりさっさと手を出しなにかの力を出そうとしたときに
直人が突発的にこう言った。
「はっ?おっちゃん何言ってんの。渇き水?何それ。」
清零がため息をつきこういった。
「貴殿は飲み込みが悪いな。渇き水の称号つまり液体を乾かせる能力を
貴殿に渡す...使い方は...」
清零が直人が質問すると思い使い方の説明をした。
「液体に目を合わせこう言う“渇け”と。そうすれば結果は見てのとおりだ。いいな、わかったら手を出せ。」
直人はあたふたとしつつも手を出した。すると清零の手の中にいっぱいに
青い光が差した。しばらくするとその光が直人の手の中にいそいそと
入っていった。
「それで、貴殿も人間離れの能力を手にした。いいな使い方を誤るな...」
直人が聞いた清零の最後の声だった。清零は直人が瞬きをしたとたん、消えてしまった。
もう日が沈み暗くなっていた。
翌日直人の目覚めは父親の怒鳴り声だった。
「直人ぉぉぉ!起きろぉぉぉ!」
その声は明らかに近所迷惑級のでかさだ。
だが直人はそれよりも何故こんな時間に自分の父親が居るのかが気になった。
「父さん何で居んの?仕事は?今もう7時半だよ。父さんでないと遅刻じゃないの?それに今日は夏休みの補習授業だからまだ起こさなくても...」
「だぁぁぁ!いっぺんに質問されると困る。1つ1つ聞いてくれ。あと仕事は今日は休みなんだ。」
直人は軽くため息をつき、1つ1つ丁寧に10分かけて質問し、答えを聞いた。そしてやっと朝食を食べれる具合に解放された。
「ほ〜ら直人。父さん特製のほうれん草のジュースだ!さぁ飲め。“たぶん”元気が出るぞ。さぁ〜て洗い物洗い物っと。」
父親から渡された青汁は明らかに私は苦いですという光を放っていた。
―ちっ、砂糖を入れてないな。あっそうだ渇き水使えるかな。ちょうどいいや、やってみよう―
父親がこっちを向いてないのを確かめたあと、青汁を見て小さな声で呟いた。「渇け。」
「ん?なんか言った?」
突然の父親の言葉で心臓が胸から飛び出しそうになった。
あわてて手でコップを隠し、
「えっ?何も言ってないよ。」
とごまかした。
父親は黙って頷きながら、家事に勤しんだ。
コップから手を放すと、直人は再び心臓が飛び出しかけた。
―ない!ない、ない、ない、ない、ない!青汁がない!あのおっちゃんが
言っていたことは本当だったのか。―
「おお!もう飲んだのか!?砂糖を入れ忘れたんだけどな...すごいな!」
三度直人は心臓が飛び出かけた。―いつの間に!?―
「そっそんなことよりも、もう行くね。こんな時間だし。」
直人は急いで鞄を引っつかみ、玄関の戸を跳ね飛ばし出かけた。
このころはまだ知らない。直人がずっと何者かに監視されていることをさらにその行為を影で食い止めようとする者の存在をまだ知らない。
今も直人の後ろに何者かが監視し続けている...。
一方直人は近くの普通の中学校に補習授業を受けに行った。
3−4と書かれた教室に入ると直人の予想以上に生徒が多かった。
賑わう中を自分の席に着き、いざ落ち着こうとしたときに友達数人に声をかけられた。
「直人〜母さん死んだんだって、大丈夫か?元気出せよ。」
直人は、今ここで友達のありがたみが心に深々としみた。
「ありがとう。大丈夫だよ。」
そう言った瞬間数学教師の野地が来た。
「やべっ野地が来やがった。じゃあな。」
友達が神速の如く素早く自分の席に滑り込んだ。
「夏休みは楽しいですか?まぁ補習授業では、楽しいことを忘れていただきます。早速ですが復習テストを行います。筆記用具の用意はいいですね。」
その野地の言葉に教室の中の全員(野地を除いて)の心が1つになり一斉に
ブーイングが起こった。だが野地は、そのブーイングを無視し、テストを配り始めた。そのテストだけで補習授業は、終わりを迎えた。
教室の人数も減った。教室に残ったのは、数えるほどになった。
「ねぇ橋本君。」
後ろから声をかけられ振り向くとそこには、黒髪で背は直人ぐらいの女の子が立っていた。
「何?斉藤。」
その女の子の名前は、斉藤久美。クラスでもあまり目立たない女の子だ。
「あ、あの。今日の晩一緒に商店街の祭りにい、い、行きませんか。」
斉藤は、頬を赤らませ、もじもじしながら言った。
「ん?いいよ。」
直人は、あっさりOKした。その言葉を聞いた、斉藤の顔が明るくなり、
「じゃあ7時に商店街の東口で待ち合わせね。」
と言い残しすたこらさっさと出て行った。
直人にとっては、初めてのデートでもあり、史上最悪のデートでもあった。
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2004/08/05(Thu)18:23:04 公開 / ねぎとろ
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■作者からのメッセージ
2回目の投稿です。
なんか第1話はドラマみたいですが(特に終盤)
第2話から正常になりますので
勘違いなさらないでくださいね。