- 『ナツコイ!‐夏は恋して、僕と君 その2:なぁ、レジャーって、何だ?』 作者:元型‐プロトタイプ / 未分類 未分類
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〜あらすじ〜
僕は、公立白百合高校に籍をおく、高校一年生である。季節が夏に変わるにつれて、気分だけはハシャギ屋の僕は、漠然とした憧れをその季節に抱くようになっていた。高校一年の夏は一度しかこない。まぁ、高校二年の夏も、三年の夏もそうだが。とにかく、僕の頭はそんな「一度きり」という言葉に敏感に反応するように作り変えられている。
友人のデブ眼鏡:詠常寺杯太(えいじょうじばいた)・通称ヨミウリは、勉強はできるが、それ以外のことにはサル以下の脳活動しか行えない可愛そうなやつである。しかし、ヤツにしては珍しく、まともな計画を僕に持ちかけてきた。それは、僕が所属している部活:「魔化学研究会」の面子と共に何かしらのレジャーに赴いてはどうかというもの。もちろん、ヨミウリにまともな理由があるわけなく、ただ、「魔研には美人が多いから」と不純すぎる、本能に近い理由で提案してきたのだった。しかし、その不純な動機の提案でも、僕の脳の「一度きり」センサーにかるくひっかかった。
「魔化学研究会」は、部長の樫宮釐此(かしみやりこ):2年、頭のねじが吹き飛んでいる市井銚琉(しせいちろる):1年、超絶ドジッ娘黒髪ロングヘア清涼院之乃子(せいりょういんののこ):1年、口うるさすぎる幼馴染泉夜沙花(いずみやさはな):1年&僕という、男一対女四の計五人で形成されている。しかも、その四人、不思議なことに全員美人と来たもんだ。
そんな美人の園を、女好きのヨミウリが見逃すはずが無く、高校入学4ヶ月目にしてついに行動に出た、というわけであった。そして、僕は終業式の当日の午後、部長にヨミウリの提案を伝えてしまった。
なんだかんだいって、僕も楽しいことは好きなのだ。
・1・
僕は部長に、ヨミウリの提案を包み隠さず、すべて伝えた。少しむかついたが、ヨミウリがいなければレジャー(?)の資金もでてこない(ちなみに魔化学研究会には部費がほとんど支払われない)ので、ヤツがいかに優秀な人材かを、ほとんどウソを練りこんで説明した。部長は、僕の全ての説明を聞き終えた後、考え込むようにして指先で顎をいじっている。僕はそのしぐさに夢中になる。超美人の部長。まるで英国のお姫様みたいにウェーブしている軽いブロンドの髪と、視線が外れなくなるような豊満なバスト。そんな超美人が目の前にいるだけで胸がドキドキする・・・ハズなのだが、僕は彼女の本性を知っているため、どうも心にブレーキがかかる。これで、こんなヘンな部活の部長なんてしていなければ、たちまち全校の男子の女神となれただろうに。まぁ、今でもほとんどの男子の女神様なのだが。
しかしながら、部長のその指を顎先において真剣に思案する姿はかなりドキドキする。部で、新しい研究課題などが見つかったと時などにもたびたび目にするポーズなのだが、どうも僕は美人が真剣に悩む姿にぐっとくるタイプらしい。いや、ハッキリと言ってしまえば、悩む際に寄せられる部長のバストにぐっと来る。ぐっとくるのはいろんなとこに。えぇ、そりゃいろんな・・・
「ねぇ、ちょっと聞いてる?十輝君?」
「へぇ、そりゃいろんなトコにぐっと効きますよぉ、えぇ」
「?、何言ってるの?」
「え、あ、あぁ!す、すいません・・・なんです?」
「む、変な十輝君。まぁ、いいわ。で、その・・・あー、なんだっけ、その友達の名前」
「詠常寺です」
僕は先程のイケナイ妄想による動揺がばれないように、落ち着いた声を偽ってこたえる。
「そう。その詠常寺君なんだけど、本当に信用していいの?」
もっともな意見だ。ただでさえまともな思考回路を持っていないと思しきヨミウリであるのに、部長は初対面でヤツに胸を揉まれそうになった過去がある。いぶかしんで、然るべきだろう。しかし、今回は僕の願望もかかっている。夏にハシャがなければ、いつはしゃぐんだ。今年の夏は、今年しかない。一度きりの夏だ。
「はい。大丈夫だと思います。律儀なやつですから、あれでも」
1フレーズも真実を交えていない返答を返すと、部長はまた考え込んだ。あぁ、できればずっとそうして・・・、
[ゴンッ!!]
「痛っつ〜、ダレだ!今なんか投げただろ!」
何かが後頭部に当たった。大体のセオリーなら、銚琉(ちろる)がふざけて投げつけて来るのだが、床をみると黒板消しが落ちている。という事は黒板側だから・・・、
「てめぇか!沙花!」
沙花(さはな)が腕を組みコチラを睨んでいる。なぜか頬が赤い。僕が振りかえると視線をいじっていた携帯にもどし、また親指族に帰った。なんなんだいったい。よくも僕の私至福の一時を妨害したな。
その一連のやり取りを見ていた部長が、
「十輝君は、学校の勉強以外にも、女の子の勉強が必要ね」
と意味深なことを言う。なんのことかさっぱりだ。
「まぁ、おいおい分かるわ。で、ね。そのレジャー(仮)の話なんだけど・・・」
やっと、本筋にもどった。
「はい」
「やっぱり部活動の範疇にはひっかからないと思うの。一応あたしもそれくらいの分別はあるから・・・。その、詠・・・なんだっけ、そのナントカ君の入部は歓迎するけど。なんせ全員で5人だものね」
やっぱりだめだったか。すまん、ヨミウリ。僕の力不足で・・・、
「待ってくれんけぇ!!」
うおっ!この奇怪な方言は・・・。
「白百合高校、1年4組在籍、詠常寺杯太!ここに参上!!」
「ヨ、ヨミウリっ」
「ふふふ、話は全部盗み聞きさせていただきやした。いやぁ、トーキ君、君はなんちゅう不甲斐ないんけねぇ」
そういうと、扉のほうからずかずかと入ってきた。
「部長さんとやら、あなたは僕の提案が部活動の範疇にひっかからん、だからだめ、そうおっしゃりましたけぇ?」
「え、えぇ。そうね」
部長の顔が引きつっている。初対面のときのトラウマが彼女をせめているのだろう。
「だがしかし!!今回のレジャー(決定)はちゃんと、魔科学研究会の活動であるんですちゃ」
「・・・・・・どういうこと?」
部長は既に生理的嫌悪を誘われるような生き物を目にしたときの顔になっている。
「ふふふふぅ。なんとなんと、俺が予定している行き先はですねぇ、いきさきはですねぇぇい」
早く言え。
「かの!『妖精伝説』が噂されている『霞湖』周辺の土地なのですよぉ!!」
標準語でまくし立てて、ヨミウリは堂々と胸をはる。ヤツの口から聞き慣れない単語がほとばしった。『妖精伝説』・・・?なんじゃそりゃ。
と、隣で部長がわなわなと震えだした。なにか怒らせるようなことを、ヨミウリ言ったのだろうか。
「あ、あ、あのっ、あの『妖精伝説』のぉ?!!」
いきなりでびっくりした。部長が息を荒げて、ヨミウリに飛びつく。そのまま彼を抱きかかえるようにして、
「すごい!あなた!どうやって手に入れたの!?『霞湖』っていったら規制が厳しくて滅多には入れない土地なのよぉ!!すごいすごい!!ほんとリスペクト!!」
その間、ヨミウリは「ママン!ママン!」とか「メロンがぁ!」とか言いながら良い様にされている。いや、ハッキリ言って羨ましすぎる。
ようやく部長の抱擁から解放されたヨミウリは、夢見心地で、
「あのですねぇ。ウチの寺のですねぇ、分家がですねぇ、ソコにあるんですちゃぁ。『霞湖』の付近に。でぇ、僕はぁ、祖父にたのんでぇ、夏休みの間泊まらせていただけるようにしたのですちゃあ〜」
おぉ、コイツにしては随分と脳味噌をつかったもんだ。もうほとんど残ってはいまい。流石はでかい寺の跡取りである。そういうつながりがあったか。くっそ。
しかし、1つ疑問が残る。
「部長、その『妖精伝説』ってのは、いったい何ですか?」
部長は、興奮冷めやらぬといった面持ちでこたえる。
「『妖精伝説』はオカルトの中ではかなり信憑性の高いものよ!!あのね、昔から、そりゃ平安とかそれくらい古い時代の書物にも記されているんだけど、『霞湖』のにはね一年中、霞がかったみたいに霧がはっているの。でね。その霧を抜けると『霞湖』に着けるわけ。でもね、問題があるの。それは滅多に『霞湖』に抜けられないこと!ヘリで上空から探っても霧がかかって見えないし、空から降りようとしても下が湖だから、簡単にはいかないわけ。でねでね。運良く『霞湖』に抜けられて、そして奇跡的に生還した人のほとんどが「湖で妖精を見た」って証言してるのよぉう!どうどう!聞いただけでこう、不思議な発見がありそうじゃない?」
・・・。いや、僕、そのつぼがよく分かりません。
部長が言うからにはその筋の情報としてはかなり正確なものだと思うのだが、はてさて、その話からだと、その『霞湖』とやらに訪れるのは無理に近いのではないかと。
「いや、部長。別に『霞湖』周辺に行くことはできても、『霞湖』に到達するのは難しいのでは・・・」
僕は恐る恐る訊いてみる。
まだ、「はぁはぁ」と荒い息をし、肩を上下させている部長は、
「我が、『魔化学研究会』に、不可能なことなど無いわ!!どんな犠牲を払ってでも、このチャンスは逃さない!!」
思い出した。
この人はこういう人だった。
自分の趣味のためなら嘘・ハッタリを気にせず行使し、部に近寄った人間を問答無用で入部させる、そんな感じの人間だ。
と。
帰りたくなった。
というより、
言わなきゃ良かった。はぁ
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2004/08/02(Mon)22:57:18 公開 / 元型‐プロトタイプ
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■作者からのメッセージ
こんばんは。三度目の投稿、プロトタイプです。
いよいよ、物語が動き出した(注:動き出したのです!動かしたんじゃないです!キャラが勝手に・・・)
夏の物語なのですが、夏らしい描写が皆無なので、次回からは夏気ムンムンでいきたいと思います!!
コメントをくださった最低記録!様。誠に有難うございました。では!!