- 『いちばん大切なもの』 作者:一握りの星屑 / 未分類 未分類
-
全角2051文字
容量4102 bytes
原稿用紙約7.2枚
☆第1章☆
もともと彼は貧乏ではなかった。有力と
言われる武将の側近として活躍した。も
う少しで、後一歩で、彼も有力な武将と
なってお金も権力も、名誉も手に入れる
ことが出来たろうに、あろうことかその
武将が強くなりすぎた彼に恐れをなして
家を打ち壊しに来るとは、彼も知らなか
っただろう。
そうして彼は、焼け果て朽ちた家でひっ
そりと暮らすことを余儀なくされたので
ある。
「畑はもう駄目か…。雨が降らずに育つ
はずもない。今年は飢えて死ぬかもし
れないな」
彼の名は鷹神。普通の農民として普通に
生まれて来たのだが、あるとき剣術を認
められ武士となったのだ。
鷹神はふぅと溜息をついた。去年もギリ
ギリで過ごしてきたのだ、いつか死ぬの
はわかりきっていたことだーー。
乾いた土にさっと手を通し、鷹神は家の
方へ歩き出した。実は昨日も、同じよう
なことを口に出して今と同じように家に
戻った。何を言っても畑は変わらないと
理解しているのに、何故か弱音をはいて
しまう。武士をやめて心が病んだのかも
しれない。いや、多分それは自分がーー
死にたくないからかもしれない。武士の
時はいつ死んでも良い心構えが出来てい
たのにーー。
ふと、家の向こうの森が目に入った。村
の者からは『魔物が住む森』と呼ばれ誰
も近づかないという森だ。それならーー
と鷹神は思った。誰も近づかないのなら
何か実でも成っているかもしれない。鷹
神は遠くで仕事をしている農民達をいち
べつして、さっと森の中へ入っていった。
「魔物が住む…とは言っても、これでは
魔物も住めんだろう」
生い茂った木々。視界を塞ぐ蔦。確かに
誰も踏み入れていないようだ。足に絡み
つく枝を折りながら、鷹神は奥へ奥へと
吸い込まれていった。
しばらく歩くと、開けた場所に出た。ほ
っと一息をつき、肩についていた虫を剥
ぎ取った。何かあるだろうか、と鷹神が
辺りを見わたすと、なにか輝くものが数
メートル先にあるではないか。鷹神が不
思議に思って近づいてみると、それは赤
く実のようなものだった。しかしその一
つ一つはやはり光を帯びていて、神々し
い感じがした。食べれるのかーー?鷹神
は戸惑った。毒があるかもしれない。し
かし、手が勝手に動いた。実を掴んだ。
鷹神はじっくりとそれを見つめ、そして
恐る恐る口に運んだ。
「………?」
口いっぱいに甘い汁が流れ込んだ。この
世のものとは思えないような味だ。こん
なに美味しいものを食べたのは久しぶり
だーー鷹神はもう一つ食べ、そしてもう
一つ食べーー。いつの間にか全て食べ尽
くしてしまった。
「あぁ、これはいかん。そろそろ日が暮
れる。もう戻ろう」
鷹神がくるりと実の成っていた木に背を
向け駆け出そうとしたーその時だった。
(お待ちなさい…鷹神よ)
☆第2章☆
「だっ…誰だ!?何故私の名前を知っている!?」
振り向き様に大声で叫んだが、そこには誰もいない。
もしや魔物というのはこのことかーー?
鷹神は久しぶりに背筋がゾクッとした。声の主の姿
が見えないのに、声がするのはおかしい…。
(鷹神…貴方は神の食するものをお食べになった…)
またあの声だ。天から聞こえてくるようで、地から
沸いてくるようにも聞こえる。心に響くようなーー
神の声?鷹神は怖くなった。
「か、神の食するものだと?それで、な、何用だ?」
(貴方には裁きを与えなければなりません…)
「では“おまえ”が神なのだな?裁きだと?死か?」
神はしばらく黙っていたようで、少し時間が経つと
ゆっくり話し始めた。
(裁きは…歩き続けること…西の最果てまで…但し…
貴方が『いちばん大切なもの』を見つけられ、私の
前で証明できれば…歩みを止めても良いとします…)
「西の最果てだと?そんなものあるわけがなかろう!
馬鹿にするつもりか?それに歩みなら自分の力で
静止出来るだろう!」
鷹神はフンと鼻で笑うと、さっと踵を返した。その
途端、腕が電流が走ったようにビリビリと痛んだ。
「うっ…!?」
(もし私に証明せずに歩みを止めるというならば…
私が貴方に怒りの雷を落としましょう…)
「わ、わかった!雷は落とさないでくれ!」
(では…貴方が旅の途中で困らないようにこれを…)
鷹神の足元に、そう…直径十センチほどの赤い石
のようなものが落ちてきた。その石は夕日に反射
して美しく煌めいた。
(それは貴方が人を慈しんだり…守ろうとした時
に力を貸してくれるでしょう…さぁ…鷹神よ…
お行きなさい…)
「ま、待ってくれ!私には食料もお金も無いのだ!
それでどうやって旅をすれば良い?」
神はふっと笑ったように言った。
(善良な者には必ず感謝が訪れる…貴方が良い行い
をすれば助けてくれる者が現れるでしょう…)
声がボリュームをしぼるように聞こえなくなって…
消えた。辺りはしんと静まりかえった。
鷹神は石を拾い上げ、懐にしまった。
「西の最果て…か。どう考えてもあるとは…」
鷹神の腕に微かに電流が走った。
-
2004/08/03(Tue)17:09:16 公開 / 一握りの星屑
■この作品の著作権は一握りの星屑さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
うぅ…。なんか変かも知れない。その前に
何で戦国時代なんだろう…。御免なさい。
あんまり上手くない小説で。あぁ恥ずかしい。
もし良かったら続きを読んでも良いですが、
嫌だと思ったら読まない方が良いですよ。見たら石になっちゃいますから(笑)
一応純愛で悲しい結末が…待っている。と
思います(汗
ではこんな感じで説明を終わりましゅ…
はっ…噛んだ…終わります(;_;)