- 『女神の災来〜Are you kidding?〜』 作者:水守 泉 / 未分類 未分類
- 
	全角3488.5文字
 容量6977 bytes
 原稿用紙約10.75枚
 女神の災来〜Are you kidding?〜
 
 時間ってのはホント酷いと思う。ここで大地震が起きたって他の場所じゃ至って普通に生活してる人達はいるし、朝が来て夜も来る、お腹も空くし眠くもなる。
 どう足掻いても起きた状況は変えれないし、何だかんだで時間が経てば変化を求められる。
 そう、例えば自分の運命が阿呆みたいな女神に変えられたとしても、だ。
 ・・・
 ・・
 ・
 とりあえず、今日の予定としては。
 この朝っぱらから起こった次元のずれた出来事で鬱々とした気持ちを整える為に、軽い気持ちでウィンドウショッピングでもしながら気分転換でも図ろうと思っていたわけで。
 まぁ、カバンの隙間から顔を出してる自称女神とかいうネズミがいなければもっと良かったけれど、この際妥協も必要だと今日知った。
 「ねぇ」
 「うん?」
 「実はこれ夢で。起きると至って普通の休日が来るとかない?」
 「ないよ」
 絶望的だ、何で普通に人生送るだけで満足してた私がこんな状況に巻き込まれるのかこの場で偉い方の神様とやらに問いつめたい、それが出来るなら魂売れるよ。で、結局何が起きてるのかって言えば簡単な話で。
 「お、おいっ! 何をブツブツ言ってるんだ! は、早く鞄に金を入れろ!」
 何で、お金をおろしに来ただけなのに銀行強盗までセットでお得みたいに来るのか尋ねたい。むしろ波瀾万丈ってコレなわけ?
 とりあえず、この事態が阿呆ネズミのせいなのは確定。
 「ちょっと〜そんな事ないわよ。これはきっと貴女の日頃の行いを改めるようにって神様からの試練ね!」
 「勝手に人の心を先読みして妄想してんじゃないわよっ!というか何で一番遠くにいた私なわけ?もっと近い人いるんだからそっちにやらせればいいのよ」
 「いや〜運命って恐いね」
 「・・・あんたが私の担当でしょうが」
 えへ♪とか言ってるのでこれ以上頭がおかしくなる前に話を切ろう。さっさとお金を詰めて渡せば私の仕事は終わりなんだから。
 「あぁ・・・ついに悪事に手を染めるのね」
 誰の所為でこんな運命になったと思ってるのか言いたいのを堪えて、とりあえず自分で持てる分を鞄に入れて机の上にドンッと置いた。
 これで、強盗が逃げれば後は私の知ったことじゃない。警察に捕まろうと逃げ切ろうとどうでもいい話なんだから。この非日常から抜け出せるならやり方なんて気にしない。
 「よ、よし。じゃあそ、それを持ってくるんだっ!」
 何か音がしたような気がしたが、頭で考えるよりも先に体は勝手に動いて行動していた。
 机の上にある鞄を無造作に掴み放り投げると、強盗から5m程度の場所にドスンと落ちた。
 「・・・拾え」
 途端に周りの空気が固まった、地面に伏せてこちらを見ていた人達全員がゴクリと唾を飲み込むような表情で瞬きもせずに強盗とこちらを見ている。
 「な、何いって」
 「黙れ、さっさと拾え。そしたら帰れ」
 「顔恐いよ・・・大丈夫?」
 「何のこと?私、今とっても良い気分なのよ。笑って自分を押さえないとやってらんないってくらいに」
 「は、はははやまらずに行こうか。人生長いんだからここで無茶しちゃダメだよ?ほら、よくあるじゃないPTプレイは『命を大事に』ね?ね?」
 何を言ってるのか、私は至って冷静なのに。
 「お、お前これがみ、見えないのか持ってくるんだよ! さっさとしろ!」
 さっきから手に持っている物なら最初から見てて最早珍しくも何ともない。他人事のように冷えた自分が表情一つ変えずに見ている今の自分には子供が玩具を出して威張っているようにしか見えない。
 「・・・で?拳銃がどうかしたわけ?」
 「どうかしたって・・・死ぬんだぞ! 撃たれたら死んじまうぞっ!」
 「ふうん? それで? 撃って私を殺してどうするの? 晴れて殺人犯にでもランクアップ? お金も盗れずに刑務所行き確定? なっさけない、人殺すだけの度胸があるんなら強盗なんてせずに働けばいいじゃない、馬鹿じゃないの?」
 ネズミのいる方からうわっ、言っちゃった。とか聞こえたが無視して強盗を見る。何故か伏せている人達が私を見た途端に目を逸らしたが気のせいに違いない。だって、こんなに落ち着いてるのに目を逸らす理由はないはず。
 なんて考えていたら呆然としていた強盗が途端に勢いよく喋りだした。
 「お、オレだってなぁ! こんな事したいわけじゃないんだ! 大人になると責任ってのが出るんだよ! まだ子供のお前にその辛さがわかるのかよぉ!」
 鬱屈していたものが出たのか。随分と感情的に喋り始めた強盗を見ながら唾が飛ぶとやだなと思い、少しだけ横にずれたがそれも気づかない程に興奮してるらしい。構わず喋っている。
 「借金で住んでいた家も何もかも無くなって、悩んで悩んだ末にこうなったんだ! そんなつらさがわかるか!」
 「黙れ、そんなのわかるつもりもわかりたくもない。さっさとここから出て怯えながら暮らしなさい」
 は?と間の抜けた声で強盗が勢いを無くしたのか先ほどと変わって気の抜けた表情になった。
 「何?お金欲しいんでしょ?そこにあるじゃない、人がせっかく詰めたんだから持ってけば?」
 「あ、あ・・・止めないのか?」
 「はぁ?何で私が止めなきゃいけないのよ。止めるのは警察、わかる?けーさつなの」
 「その警察だけど・・・」
 何かくすぐったいと思ったら背中の方からネズミが顔を出して服についてるフードに隠れながら耳打ちしてきた。一応、出る前に洗ったから気にはならないけど後で尻尾を天井にでも結んでおこう。
 「外にいるよ?」
 途端に拡声器の声が周りに響いた。
 『あー、犯人に告ぐー。お前は包囲されてるー。大人しく出るならいいが、出ないなら強行突破も考えているー。むしろ出なくていいぞー、最近事件少なくて血の気多い奴いるからなー』
 なんかとんでもないこと言ってるが現実はドラマと違うと聞くし、多分こんなものだろう。
 「違うんじゃないかなぁ・・・」
 「いいのよ、さっさと終わらせてくれるならどうだって」
 「なんか人間性が崩れてない?」
 「成長っていいなさい」
 とか話をしていたらいきなり横から袖を捕まれて引っ張られた。何事かと思って周りを見ようとすると首の方に手が回っており、頭に冷たい感触がゴツリと突きつけられている。
 「く、くそ! こうなったのも全部お前のせいだ! こうなったらお前を人質に逃げてやる!」
 「無駄なんじゃないの?強行突破する気満々みたいよ?」
 窓から外を見るとすでに屈伸運動や筋を伸ばしている警官らしき人達がいる。体格がなぜかアメフト選手のような人達ばかりで隅の方には生肉を囓りながら作戦でも練っているのか何か紙らしき物を指さしながら三人くらいが相談している。
 「うるせぇ!さっさと鞄を持ちやがれ!」
 「はいはい」
 よっこいしょと鞄を持ち上げて下の方に左手を添えて両手で抱えるように持つ。しゃがんだ際にフードで落ちそーとか聞こえたが落ちてないので気にしないでおこう。
 「とりあえず、驚いてみない?」
 誰に言うでもなく、そう呟く。不信に思ったのか強盗が何の話だと聞いてきた。が、言う必要は無い。とりあえず、準備として左手も鞄の持ち手を右手と一緒に掴んだ。
 「なんか外で張り切ってる人達来たら怪我しそうなのよね。手軽に終わらせるに越したことはないんだから、少し手伝いなさい」
 「だから、何のこと言ってんだ!」
 「こゆこと」
 強盗の声に重なるようにフードから飛び出したネズミが強盗の顔に飛びついて返事をする。途端に強盗が声にならない叫び声をあげながら慌てながら数歩後ろに下がった。
 「じゃ、飛び降りないと怪我するわよ」
 そう言って体を捻りながら一歩だけ後ろに踏み込んで勢いをつけたまま鞄を振る。グエッと蛙か何かが潰れたような声と一緒に強盗を見ると腹部に当たったらしくお腹を押さえてうずくまっていた。そのまま、体勢を整えて死なないように、と祈りながら思いっきり背中を鞄で打ちつけた。
 
 
 その後の展開は単純に終わった。やけに鼻息荒く飛び込んできた警察が正面玄関に体当たりボンバーを喰らわせて叩き割った後、割れたガラスで怪我をした警察を踏み越えて第二波が飛び込み犯人確保ー!とか叫びながら何故か犯人を胴上げしていた。
 事情聴取の時に聞いてみたら、皆色々あってね・・・と遠い目をされてしまいそれで納得する事になった。その内、お手柄として表彰されるかもしれないと言われたがその時は断っておこう・・・断れたら、だけど。
 「これで晴れて貴女も私の仲間入りね!」
 ・・・
 ・・
 ・
 「・・・あ!?」
 
 〜To Be Continue〜
- 
2004/07/06(Tue)19:54:32 公開 / 水守 泉
 ■この作品の著作権は水守 泉さんにあります。無断転載は禁止です。
 
- 
■作者からのメッセージ
 前回、女神の転所為からの続きですよ〜。
 レスをくれた『笑子さん』『髪の間に間に』さんには感謝です!
 あまり、成長してない気もするんですがまた色々とコメントして頂ければ幸いです。
 それではまた次作で〜。