- 『月』 作者:鈴 / 未分類 未分類
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全角1053文字
容量2106 bytes
原稿用紙約4.3枚
新月から満月まで
毎晩月の光に晒し
最後に魔力の雫を入れた水は
最後の夜に何でも治せる秘薬に変わるという話をおばあちゃんから聞いた
その時は凄いことだと、ただただ思っていたけれど
今でははもう、ただの作り話
新月、ふとそんなことを思い出し、博士から貰ったコップに水を入れた。
ルイとどんな風になるんだろうと話しながら、月が満ちて今日は満月。
「色が変わるのかなぁ」
「どうなるのかな?」
わくわくしながらルイがお茶を入れようとする。
「僕やりますよ」
「ありがとう・・・」
床にこぼれたお茶を拭く。
「あ・お茶の葉が無いや」
「じゃ・じゃあ私買ってくるね!」
そう言って家を飛び出していった。
「ルイは?」
「買い物に行きましたよ」
風呂上がりのラム博士が少し考え込む。
「まぁ・・・いいか」
「?」
チラリと窓辺のコップを見やって、タオルで髪を乾かしながら階段を上がっていった。
意味ありげな言葉が耳に残って、ちょっとルイが心配になった。
「博士ーーー!!!!」
本を読んでいたラム博士の耳に、ロンカの叫び声が届いた。
やっぱりかとため息を吐きながら窓から顔を出せば、ロンカがルイを引きずってきている。
「魔法使っていいから、ソファに寝かせろ」
「は・はい!!」
ぱたん、と窓を閉めて、急ぎもせずに階段を降りていく。
ちょうどロンカがルイを寝かせているところだった。
幸せに、眠るように、横たわっていた。
「はははは博士!ど・どうしたら・・・・」
「落ち着け、全く・・・」
かりかりと頭をかいて、窓辺のコップを手に取った。
「ほら、魔力の雫」
「そんなことしてる場合じゃ」
「いいから」
「は・はい」
手に魔力を集めて、想像する。やがてころんとしたものが現れた。
雫のようで、薄緑色をしたそれは、ロンカの魔力。水音がして、雫が月光に晒された水に溶けてゆく。
コップの水をおでこにかけると、ルイが勢いよく目を開けた。
「博士?ロンカ?あれ?私どうしたの?」
「ルイさ〜〜ん」
今にも泣きそうな目で、ルイに抱きついた。
ラム博士はため息を一つ落とすと、扉を開けて外へでていった。
「おい」
『ごめんよ、ちょっと悪戯しただけなんだ』
暗闇に声をかけると、猫目の青年が現れた。
「これからはちゃんと降りてきて誘え」
『うん、ごめんよ。これからはそうする』
青年はすまなそう笑うと、星のかけらを残して、夜空に溶けた。
月光に晒されて出来た秘薬は何の薬?
それは月の夢を見ているものを、目覚めさせる薬
月の夜はあなたもご用心
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■作者からのメッセージ
今私が連載している小説の一つです
すらすらっとかけて、凄く良かったなぁ
最後の青年は星の一つです
ルイちゃんを気に入ってちょっと無理矢理夢の中でデートしようとしたもよう
失敗に終わる、の巻(笑)