- 『もこもこアルバイターズ [ 前編 ] [ 後編 ]』 作者:愁一 / 未分類 未分類
-
全角7731文字
容量15462 bytes
原稿用紙約23.9枚
「洋二っ! 俊郎っ!」
窓際で、アイスを食べる俺達の名を呼ぶ人がいた。もし仮にその人物が女だったとしたなら、俺達はきっと暑さも吹っ飛ぶぜ! の勢いまで感情をもっていけたと思う。けれどそれは儚い夢で、現実に俺達の名を呼ぶのはれっきとした男だ。男、だ。何度言おうとも男なのだから悲しい。くわえていたアイスを口から離し目の前に座る俊郎を見ると、予想通りに顔が歪んでいた。俺も同じように今顔を歪ませている。俺達はハァとため息を深くついてその人物が近づいてくるのを待った。遠くから呼ばれて、その人物が誰かわかってしまうのは凄いことだと思う。だがそれは仕方のないことだ。ワンパターンな俺の周りの人生。
「なぁ、なぁ、今ヒマ?」
やっと隣まで来たそいつは俺と俊郎の真ん中に椅子をガタガタ持ってきて勝手に座った。笑顔でやって来たこの男の名は三浦。短い髪を重力に逆らうように立てている。実際似合っているから羨ましい。俊郎も、色素の薄い長めの髪をワックスで横に流している。微妙にハネた髪が、やはり似合っていて。俺はと言えば、地が黒く髪が薄いのでどうしようもない。そのうえ直毛気味。二人が羨ましくて、一度ワックスで髪を遊ばせてみたことがある。その日は一日二人に笑われ続けた。災難。
「ヒマじゃない」
俺と俊郎は見事同時にそう答えた。
「実はいい話があるんだけどさ……」
三浦の欠点は話を最後まで聞かないところだ。むしろ自分で聞いておいて相手の言うことなどこれっぽっちも聞いていない。三浦の中で俺達に発言権はないのか。
「バイト、しねぇ?」
にかっと笑って三浦は言った。あぁ、またかと俺は思った。三浦はいつも変な話を持ってくる。顔が広いから情報通なのだ。俺と俊郎はよく三浦の口車にのせられ悲惨な目にあってきた。内職の手伝いをさせられて誤ってぶっ壊して死ぬほど土下座したり、変な探偵の助手として浮気相手の調査に乗り出したら見事バレて殴られそうになったり。監禁されそうになったこともある。全部話せないのが残念だ。三浦にはこうして日々、恨みが積もっていくのだなぁ、と俺はしみじみ思う。毎回、三浦の話にのってしまう俺達も俺達なのだが。
「今度は大丈夫?」
俊郎が三浦をじっと睨んで聞く。
「当たり前だろっ! 俺が親友をそんなひどい目にあわせるかよ」
嘘つけ。俊郎も、まだ睨み続けている。そんな俊郎に焦った三浦は大きな手振りで言う。
「今回は普通のアルバイトだって!」
「……どんなバイトなんだよ」
俺もしょうがなく質問をする。
「遊園地だよ!」
嬉しそうに三浦は言う。どうして俺はこんな男と腐れ縁なんだろう。そんな事を考えるが三浦の話を聞いているうちに、いつのまにか消えてしまう。そこが三浦の上手いところだと思う。それになんだかんだ言って、俺と俊郎もヒマなんだ。
「暑い」
次の日曜日、俺と俊郎は見事遊園地の入り口にいた。俺達の住む市から電車で数十分のところにある。この遊園地は俺達の住んでる県の中でも大きな方で、休日はたくさんの人でにぎわうと評判だ。アトラクションも結構な数があり、中でも観覧車は日本で二番目とか三番目とか。まぁ……よく知らない。三浦が言っていたけれどもう忘れた。俺も小さい頃はよく家族できていた。少し、ほんの少し懐かしい場所。
「暑いんだけど。洋二」
「俺に言うな」
七月にもなれば暑いのは当たり前だ。じっとしていても、汗がにじみ出てくる。こんな気候でも、元気なのは三浦とかいう野郎だけじゃないだろうか。
「行くぞ俊郎」
うなだれる俊郎をひっぱって、三浦が紹介してくれた人物のいる場所まで向かう。遊園地の入り口から遠いらしく、まだ開園していない遊園地の中を二人とぼとぼ歩いた。
三浦が言うには、今回のバイトはただ風船を持って立っているだけでいいらしい。俺の頭の中には帽子を被って制服を着た自分の姿が思い浮かべられた。あれぐらいでいいなら、ラクなもんだろう。
十分くらい歩くと、小さな白い建物が見えてきた。階段を上って、外から直接二階に入る。そういう風にバイトの人は入る、というのがココの決まりらしい。
「こんにちは」
あいさつをしながら、たどり着いた部屋に入った。中に、三浦がこの前見せてくれた写真の人物がいた。三十代半ばくらいのおじさんだ。太っているわけでもなく、中肉中背。髪には少し白いものが。
「あぁ、三浦君の知り合いの子達だね。宜しく頼むよ」
それでもにっこり笑うと、優しそうな人。
「隣の部屋に置いてあるのを、すきなのを選んで着ていいから」
そう言うと、おじさんは別の人に呼ばれて部屋を出て行ってしまった。俺と俊郎はクーラーのきいた部屋で顔を見合すと、隣の部屋へ足を向けた。ガチャリと、ドアのぶをまわすと意外なものが目に飛び込んできた。
「よ……洋二、これって……」
俊郎が焦って俺と、部屋の中の「ソレ」を交互に見る。
俺は口をぽかんと開けて、暫く放心状態だった。
隣の部屋にあったのは、バイト用の制服でもなんでもない。
着ぐるみ、だった。
ゆっくり近づいて、着ぐるみの一つを手に取る。
どう見てもそれは……
「洋二、ソレ、パンダ……」
「だよな……」
もこもことした手触り。綺麗な毛並み。愛くるしい瞳。冬ならばいくらか許せたこの着ぐるみも、夏のこの時期にはサンドバッグにしたい程の憎らしさ。ふと、見ると一歩下がっていた俊郎がすぐ隣に来て別の着ぐるみを手に取っていた。
「俊郎、ソレ……」
「うさぎ、だよね」
耳の長い、女の子なら「可愛いーっ」と飛び込んでくる(かもしれない)ピンクのうさぎ。そのうさぎの着ぐるみの頭の部分を持っていた俊郎。顔が可愛い系の俊郎には妙に似合っていた。口には出せなかったが。
何秒、いや何分かわからないが俺達は制止していた。口を開いたのは俊郎だった。
「やるしか、ないよね洋二」
「……」
そうなんだ。ココまで来てしまった俺達に残された道はひとつしかない。この暑さの中、目の前のふわふわとしたモノを着て風船を配るしかないのだ。あの太陽の下。
「クソ。三浦の奴」
「ヤだなぁ。暑いんだろうな」
弱気になっている俊郎の尻を右ひざで蹴りあげた。
「おら。やるぞ俊郎」
「へーい」
畜生。
その場で、俺達は着ているものを脱ぎだした。着ぐるみなんて着たことはないけれど服を着たままなんて当然無理だから全部脱ぐしかないのだろう。俺と俊郎はパンツ一枚になったところで、着ぐるみの首から下の部分を両手で持った。俺はパンダ。俊郎はうさぎ。他にもトラとかサルとかあったけれど、何故か俺達は最初に手に取ったそいつらに愛着がわいた。よたつきながらもどうにか右足を入れ、左足も入れようとしたとき不意に俺達のいる部屋のドアが開いた。まずい! と思ったが遅かった。入ってきたのは女の人で、次の瞬間には俺達を見て大声で叫んだ。こだまする。
「キャア――ッ!」
「ギャ――ッ!」
二回目に叫んだのは俺と俊郎だ。
どちらかといえば、被害者は俺達の方では?
+
「す、スイマセン……」
数分後、どたばたの末なんとか落ち着いた俺と俊郎は部屋に入ってきた女の人と向かい合って椅子に座っていた。早紀さんというその女の人は大学生で、結構前からここのバイトをしているらしい。大学生には見えないその容姿や低い背から、同い年か年下だと最初は思った。童顔、なのか。いやあの……ハイ。小動物のような目が正直好みでした。
「いや、こっちこそ何かスイマセン」
椅子に座ったまま、小さくなっていくように見える早紀さんに、俺は謝った。「なぁ」と俊郎に話をふろうと顔を見ると。
「えっ! あ、あー。うん。え、何?」
しまった、と思った。と同時に後悔した。中学の頃から俊郎と俺の女の好みは一緒だったじゃないか。と、顔が赤い俊郎を見て俺はためいきがつきたくなった。何度か好きな女のとりあいをみじめにしたなあ、と記憶が駆け巡った。
「そういえば、バイトって早紀さんもコレ、着るんですか?」
ふと、気になってそんなことを聞くと彼女は首をふるふるとふった。
「う、ううん。わたしは着ないよっ」
首をふると、彼女の肩までの髪が揺れた。あまりにその動作が可愛くて、どうしようもなくて、俊郎の顔は今絶対見たくないと思った。ちょっと三浦に感謝した。
「あ、じゃあわたしはそろそろ……」
腕時計を見つめて、早紀さんは席をたった。俺と俊郎も、慌てて立ち上がる。彼女がソロソロ、ということは俺達もそうではないかと思ったからだ。
「風船は、そこのダンボールに入っていると思うから。頑張ってね。ヨージくん。トシローくん」
先ほど教えた名前を呼ばれて、有頂天になった俺達は、早紀さんが部屋を出た後着ぐるみ姿のまま飛んだ。ジャンプだ。そして勢いあまってこれから自分がかぶろうという、着ぐるみの頭につまずきコケた。
「洋二ぃー。これ、前見えにくい」
うさぎの頭をつけた俊郎が、日光の下に出ると言った。俊郎の後ろで階段をえっちらおっちら降りていた俺も、同じ事を考えていた。というか、やはりわかってはいた事だが暑い。何より暑い。前が見えにくいよりも息がしづらいよりも暑い。いや違うな、熱い。
「我慢しろ、俊郎」
「無理ー」
なんだか普通に話しているように聞こえるが、実はそうじゃない。着ぐるみ(分厚い)ごしに話しているわけなので、もっと低い声でもごもご言っているように聞こえる。だから顔をできるだけ近づけて話すか、大声で話すしかないのだ。どちらにしろ、おかしい光景。
スーハースーハーと低く息をしながらべたべたと歩く俺達。だいたい、遊園地の真ん中あたりに位置する、ジェットコースターの前で風船を配ってくれと言われ歩き出した。その場所につくと、ちらほら入場客がやってくるのが見えた。開園したらしい。日曜なので子供連れの客が多い。もちろんカップルもいる。彼女いない暦うんぬんの俺と俊郎には羨ましすぎて目が痛い。
風船を持って立っているうさぎとパンダは、はたから見れば可愛くうつるのだろう。着ぐるみの中ではどうなっているか知らず、子供がよってきた。
「わー。ぱんださんだー」
「うさぎさん、うさぎさーん!」
そうやってよってくる姿はやはり可愛い。俺自身子供がすきな方なので暑いことをのぞけば結構いいバイトかも、とか思った。でも風船をあげていると、どんどん子供が集まってきた。これはヤバイ。
「きゃーしっぽついてるー」とか。
「うさぎさんの耳触らせてー」とか。
俺達は子供にいじられ続けた。子供は子供を呼ぶらしく、風船が残り少なくなっても更に増え続けた。俺がしっぽをひっぱられている時に、俊郎は長い耳をもぎられそうになっていた。悲惨。一番驚いたのはわき腹にタックルしてくる子供だ。「オウッ」とよろけたところに更に攻撃。「結構いいバイト」? 前言撤回だ。この世界、厳しい。
「限界ー」
持っていた風船を全てあげ終わって、それでも子供は離れなくて着ぐるみを脱がされそうになったところを回避して今に至る。日向から逃げるように木陰に行く。俊郎がフハーと息を吐きながら声をもらした。右に同じく。俺も暑さが限界だった。今俺の頭付近の温度が異常に上昇している。まずい、このままではまずい。
「あ、洋二。アレ」
俊郎が数メートル先を指差した。そこには遊園地内を歩き回ってジュースを販売している車(?)があった。車と呼べるのか。はたまたトラックではないだろう。とにかく天の助けだ。
「俊郎、行くぞっ」俺達は重い体でダッシュした。
「スイマセン、その、青いやつ二つ」
「ひィっ」
売店のポニーテールのお姉さんは突然近づいてきたうさぎとパンダにおびえたらしい。そりゃそうだろう。俺だって彼女だったら恐い。でも今はそれどころではない。必死だ。生きるか死ぬかのせ……それとはまた別か。
「ろ、六百円です……」
「つけといてください」
「はっ?」
そこらへんの居酒屋のようにはいかず、お金を持ってこなかった事に激しく後悔した。またもやジェットコースター前を二人でとぼとぼ歩く。落ち込んだうさぎとパンダ。やってられない。あのポニーテール。結構可愛かったのに。そんな事を考えていると、後ろで「キャー」とか「ウワー」とか聞こえた。振り向くと、ちょうどジェットコースターが一番こっちに近いところを通っていて。
「楽しそうだね……」
「そうだな」
あれに乗れたら、少しは涼めるかも。そんな事を思った。
「乗りたいなー」
俊郎も同じ事を考えていたらしい。でも俺達の姿を見ろ。着ぐるみだ。更に落ち込んだ俺達に、救世主は現われた。
「トシローくーんっ、ヨージくーんっ」
声の主は麗しき早紀さん。遠くから、走ってくる姿が見えると、俺と俊郎は大変な程笑顔になった。と思う。実際見えないけれど、俺がなったんだ。俊郎も俺、もしくは俺以上に笑顔でしょう。
「お疲れさまーっ! ジュース持ってきたよー」
ジュース。その言葉に俺は心底神を信じた。見捨てないでいてくれてありがとう。おおげさすぎる思いがたくさんよぎった。危ないかも俺。
と、そのときだった。
早紀さんの右手側から、男二人が早紀さんに近づいてきた。遠くからなのでよくわからないが、どうやらからんでいるらしい。それに気づいたのは俊郎のが早かったらしく、俺が走り出す前にもう走り出していて。俺は後を追う形になった。情けない。近づいていくと、からんでいる男の片方が早紀さんの腕をつかんだ。その拍子に、持っていたジュースがカコン、と地面に落ちた。俺のジュース。
腕をつかまれたのを見た俊郎の走るスピードがギュンとあがった。驚いていると、そのまま敏郎は早紀さんの腕を掴んでいる方の男にドロップキックをかました。着ぐるみで。うさぎが。やられた男はそのまま倒れる。そばにいたその男の仲間らしい男が、驚きながらもうさぎに喧嘩をうった。
「なんだ、このうさぎ。やンのかコラ」
もちろん喧嘩を買ううさぎ。あぁ、怒らせてしまって。ああ見えてもうさぎは中学時代やばかったんだぞう。
「あぁ? うさぎナメんなよオイ」
うさぎと男がにらみ合っている間に、俺は早紀さんに近づいた。何が何だかわからない、といったような表情の早紀さんに一瞬自分も我を失って癒された。
「大丈夫ですか? 早紀さん」
「あ、わ、わたしは平気……でもあの。トシローくんが……」
「あぁ、あいつなら大丈夫っすよ。あれでも喧嘩はつ」
「違うの。こんなところで喧嘩したら、バイトクビになっちゃうよ!」
その言葉に衝撃をうけた。俺はすたすたとうさぎ、いやもういいか。俊郎に近づき耳元でささやいた。
「ここで喧嘩するとバイトクビになるぞ」
「別に関係ねーよ。ちょっと黙ってろ洋二」あらら口調変わってます。
「いいかよーく聞け。バイトがクビになったらいとしの早紀さんとも会えなくなるんだぞ」
その言葉を聞いてピタリと動きをとめた俊郎はひょこっと一歩うしろに下がった。そして捨てゼリフ。
「てめー今度あったら容赦しねーかんなっ」
そして三人で逃亡。後ろでなんだかんだ叫んでたけど、倒れてた男が起き上がらないのを心配して、どうやらかついで帰ったらしい。逃げているときに思ったことは、あいつら男二人で来て遊園地楽しいか、ってこと。
「はい、どうぞ」
暫く走って、ベンチに俺と俊郎は腰をおろした。早紀さんが、落としてしまったジュースの代わりに飲み物を買ってきてくれた。少しかげになっている場所なので、着ぐるみの頭部分をとる。かなり涼しい。
「なんか、ごめんね。ありがとう」
早紀さんが、俊郎にお礼を言っていた。俊郎はさっきとはうってかわって照れたような顔で話す。
「あ、いや俺何にもしてないですよ」
オイオイ。誰だドロップキックかまして一人キゼツさせたのは。そこのうさぎだろ。と、いう言葉は飲み込んだ。なんとなく邪魔しちゃいけないような気がして。
「そういえば、早紀さんいいんですか? 自分のバイトの方……」
俊郎が首をかしげながら聞く。早紀さんは、少し視線を動かして、何か悩んでいたがゆっくり話し出した。
「それが……二人にちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
「はい?」
俺と俊郎の頭にはハテナマーク。
早紀さんのお願いはこうだった。お化け屋敷の中でお化けの役をやっている数人に、交代の知らせを持っていかなければならなくなった。あと三十分で交代役の人がくるので、知らせたいそうだ。
「普通に行けばいいんじゃないんですか?」
俺が聞くと、早紀さんは泣きそうな顔で言った。かわいい。
「わ、わたしお化け屋敷とか苦手なの。でも、交代は急遽やることになったから、中まで入らなくちゃいけなくて……」
なんと女の子らしいことだろうか。
「一緒に、入ってもらえる?」
俺達は、即効オッケーを出して、三人でお化け屋敷まで向かった。入り口の人にわけを話して、三人で中に入る。着ぐるみを一応またかぶったので、前は見えにくかったが早紀さんが真ん中で俺と俊郎の着ぐるみの腰あたりを掴んでいたのでまぁ、いいかなと思ってしまった。交代を伝えようとするたびに、早紀さんはその相手に驚かされて叫び声をあげた。
「キャ――ッ!」
「いやぁあ!」
むしろその声に驚いた。
極めつけは出口付近のお化けだった。あまりに驚きすぎて、早紀さんは俊郎に抱きついた。羨ましいなと見ていたら、反動で滑った二人に足をとられ俺もその場で激しく横転した。
「……いてて」
「ご、ごめんね……」
「あ、やべ頭とれた」
誤解を招く言葉だが、とれたのは顔ではなくて着ぐるみだ。
「あー、俺もだ。洋二も?」
「おう……ってあったあった。コレか」
出口付近はとても暗く、手探りで見つけるしかなかった。俊郎もすぐに自分の頭部分を見つけたらしくかぶった、らしい。
「二人とも、へいき?」
早紀さんに手をひっぱられ、俺達は立ち上がると出口から出た。少し前を歩いていた早紀さんが、出口を出た瞬間、タタッと駆け出した。何がなんだかわからず、突然太陽の下に出たのでよく見えなかったが、早紀さんが誰かに抱きついたのはかろうじて見えた。
「陽介! なんでここに?」
「今日バイトだって聞いたからさ」
それを少し後ろで見つめる俺と俊郎。「いとしの早紀さん」は彼氏モチ。
ブチリと何かが切れた俺達は、ある場所へ向かった。途中、すれ違う人たちに何故かじろじろ見られた。いや、今となってはもうどうでもいい。
「ママー。あのうさぎなんか変だよー」
「シッ! 見ちゃいけません!」
その日遊園地に来ていた人たちは奇妙なものを見たという。うさぎの頭でパンダの体をもつ着ぐるみと、パンダの頭でうさぎの体をもつ着ぐるみが、ジェットコースターに乗っていたらしい。
ジェットコースターが山場にさしかかったとき、俺はココロに決めた。もう絶対に三浦の話にはのらない。
↓
End.
-
2004/07/04(Sun)15:52:01 公開 / 愁一
■この作品の著作権は愁一さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
こんにちハ!!
愁一(しゅういち)です。
どうにか後編かきあげました。
最後の流れが速すぎたかなと
後悔しております。
前編を書いた際にレスをくださった
お二人にお礼を。
→卍丸サン
お名前は何と読んだらいいのでしょうか(爆)スイマセン!初めましてーッ!文章を優しいといっていただけて凄く嬉しいでス!!笑ってもらえて感動です!有難う御座いました。
→髪の間に間にサン
初めましてーッ!!トップ5に入ってますか!残りの4つを是非聞きたいです(笑)三浦が持ちかけた話、いつか書いてみたいです(爆)自分自身がギャグっぽいので(何)でも好みと言ってもらえて嬉しいっす!!有難う御座いました。
と同時に、前編で文の最後が抜けていた部分の訂正とお詫びを致します。