- 『精 魂 伝 - しん こん でん -』 作者:イソップ物語 / 未分類 未分類
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全角3430.5文字
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原稿用紙約11.25枚
少女・天道まゆみは読書好きの高校3年生。
趣味は本がある場所なら何処へでもいくということ。
ある日、まゆみは少し寒い冬の道を藍色のコートを身にまとって、
赤いマフラーを首に巻き雪の降る町を歩いて、
商店街を抜けたその直ぐ近くにある小さな公園の奥に何分か歩いていく。
まゆみの目的地は古びた図書館である。
その図書館で一番古そうな本を見つけるとまゆみはすぐさま読もうと本を
開き始めた。そのときだった。その時、本のページが光りぼわりと煙が出た
かと思いきや、煙の中から小さな影が4つぼやりと見えた。
なにかと思い眼を細めるとそこには4人のまだ幼い子供たちが現れた。
私は後に、この子供たちのことがわかった。
どうやら、この子供たちはこの古い本の中から出てきたらしい。
この子供たちのことを知ったのはこの古い本の本文を見てのことだった。
この古い本によると『扉を開けし、光の精霊が出迎えるであろう。』
つまりこの子供たちは本に住む小さな精霊だということで
『それぞれに宿りし力火時間氷雪』
と書き示されていた。この子供たちに備わった『火時間氷雪』
といった能力を示している。そして、その下の文に私は眼をやる。
すると面白いことが書き示されていた。
『火を宿りしファイア時間を左右に動かすことを能力とするタイム
氷を発生させる、また、氷を自由自在に操り出す力を持つアイス
雪を枯れ地に降らすスノウ。』つまりこれはそれぞれの持つ個性と能力
にそってこの4人の子供たちの名前は名づけられていたということだった。
なんともかわいらしい名を持つ精霊たちに出迎えられたもんだ。
私はその不思議な本を見つけてから以来、その図書館に毎週通うという
習慣が身についてきた。精霊たちにまた出会えることを期待にして。
私にとって精霊たちの居る本を開くことは精霊たちの居る世界とこの現世
をつなぐ『扉』のように思える。だから私も、精霊たちもお互い面白い話や
遊びを交わしながらその中で仲を作っていく。
私はいつものように図書館へ行き、精霊たちの宿る本を開く。
そして光に包まれながら出てくる精霊たち。
その中で一番に身を乗り出すのが
「まゆみ、今日は何してくれるんだ?」
赤い髪の少年。
「あ、ファイア。相変わらず、元気ね。」
いつも半そでと短パンだけを身にまとい、首に勾玉の首飾りをぶら提げ
短く紅い髪を立てている。いかにも悪戯好きといった顔付きのファイア。
私はそれで居て寒くないのかと疑問に思うが、彼自身寒いという「さ」の
字もないようだ。子供は風の子というが、この子の場合、火の子だ。
その横に少しの風が吹くだけでも靡きそうな薄さで服全体が薄い青に
染まっているワンピースを身にまとい、幼げな顔付きでなんとも無邪気な
性格のアイスと手や体全体が雪のように冷たく、真っ白で雪のような着
物を身にまとっていて、雪のようにしっとりとした性格のスノウ。
二人そろって私にかまってほしいといわんばかりの眼で私を見つめながら
「「まゆみ、まゆみ」」
盛んに私の腕を引っ張る。この二人は4人の中で多分、
一番年下のようだ。(実際、精霊とは生物の魂なので
その魂も個人差があるため見た目だけではわからない。
そのためその精霊たちの態度で判断している。)
「あ、はいはい。スノウ、アイス。なあに?」
「遊んで。」とスノウ。その横で「だっこぉー。」とアイスが叫ぶ。
アイスの言い分どおりにするとアイスは喜んで私に抱きついてくれる。
それはいいのだが、それには一つ欠点がある。
アイス→水から出来た氷→氷は冷たい。
つまり、アイスは水から出来た氷の魂から生まれたため水そのものの
液体の能力を持つ精霊だから、私はびしょぬれになってしまう。
夏ならまだしも今は冬。
「あ、はいはい。じゃあ、最初はスノウの意見ね。
なにして遊びたいの?スノウ。」
とまゆみはスノウに訊く。すると、スノウは
「雪合戦する。」
と答える。最もこの肌が凍るような寒さで、そのうえ
雪の降りつもる日にはもってこいの遊びだ。
「いいよ。やろう!」 「うん。」
まゆみとスノウだけが盛り上がっていると端っこで
アイスとファイアがいじけている。
「いいなぁー。スノウは雪だから遊んでもらえるんだぁー。」
と一番相手にしてほしそうな口調で言う氷の精霊アイス。
「俺は良いや。どうせ、俺は火なんだからよ。」
と落ちこぼれる火の精霊ファイア。
「あ、あぁ。アイス、ファイア。あなたたちもどう?一緒に。」
まゆみはアイスとファイアを切り離すようなことはしたくはない
と思い皆一緒に遊ぼうと誘い出る。
だが、違う力を持つ同士長時間または短時間のどちらか
にいられるかということに分かれてしまう。元々、違った物
質の魂からうまれた精霊は力や性質が違うため多少、
無理がある。まゆみはそれを知らないわけではないのだが、仲間は
ずれはいけない。まゆみ自身そう思っていっている。
この二人ファイアとアイスもやりたいという気持ちはやまやまなのだが
その気持ち通りにやろうとしても出来ない。
その理由は精霊たち個人の能力や性質などが異なっていく。
アイス(氷)の性質は柔らかな雪を凍らせてしまいカチカチに固まる。
雪に触れたとしてもその柔らかな雪が固まって硬い雪になってしまう
のならば触らないほうがましだと考えたアイスはまゆみに言った。
「まゆみ、ありがとねさそってくれて。でも、ごめんね。」
アイスが意見を言い終わる。
言い終えたアイスのその横でファイアもまゆみのほうをジッと見て言った。
「まゆみ、無理して誘うことはないからな。ほら、顔が無理してる。」
とファイアがまゆみに言う。
まゆみはファイアのその言葉に笑みを零した。
「あ、ありがとう。ファイア、心配してくれてるの?」
まゆみの言葉にファイアは言った。
「違うね、まゆみ俺らは元々違う性質のヤツだから一緒に遊ぶことは出来ねぇ。」
「あ、そうか。ファイアは火だものね。」
「そうだ。もし俺がそんな雪なんぞ触ったらそれだけで溶けちまうから、
遊びもんにはならないからな。」
ファイアは火の性質を持つ者。
火というのは氷や雪といった固体を溶かしてしまう物質の魂。
「でも、それはこの本の中のお話でしょ?実際は魂の塊で出来たあなたたちとは違…」
とまゆみがいいかけた瞬間「違くねぇ!」
ファイアは少しまゆみを睨みつけて言った。まゆみはそれにギクッとする。
「まゆみ、確かに俺らは魂の塊で出来たもんだ。それに今はこうして近くにの居られる。
でもな、あの本とかいう中じゃ俺らはばらばらの地域で称えられてる神々ってやつ
なんだよ。ま、元々。俺らはこのまゆみが開いたっていう『 精 魂 伝 (せいこん
でん)』ていういわゆる神を交えた説話のただの登場人物じゃない。
だって実際神なんぞは存在せんから説話に過ぎない…といいたいところだが、
俺らは実際、何年か前に本の説話の中にヤツは俺らを閉じ込めたんだ。」
ファイアは自分から過去の記憶をまゆみ語るたびに怒りを強め
眼の色が今までの薄い赤だったのが濃い赤へと徐々に代わり始めた。
このとき、まゆみは初めてこの4人の子供たちがどんな人物なのかがわかった。
まゆみはこの子供たちが神として称えられていた4つの魂と4人の神々だということを知る。
つまり、この子供たちはただの魂の塊ではなく火の神ファイア・氷の神アイス・
時間の神タイムといった『役割上の神だった』というわけだ。
そう考えると今、まゆきは怒りに燃えた火の神(ファイア)の怒りに触れたということだ。
さすがは火の神というだけあって怒りに燃えるその熱さは半端ではない。
「(あ、熱い。さすが、火の神……て、感心している場合じゃないっ。
ファイアが火の神って事はアイスは氷の神。
てことは氷の魂の神であるアイスは火の神の
熱さには耐えられないってことだ!
あぁ、なんだかややこしい展開に私がしちゃったっ!!
どうしよう、私!てか、どうする私!?)」
ファイアの怒りの熱さを前にあせるまゆみ。
あせるまゆみの後ろ端の隅っこでタイムが何とかアイスの顔色を伺いながら溶けてしまう時間を停めている。
あせるまゆみ。
あせっているのだがまゆみはたった一瞬だけふと我に戻り先ほど、ファイアがまゆみに語っていた過去の話の中で『何年か前にヤツは俺らを閉じ込めたんだ。』という言葉を思い出す。
「(というより、…ヤツって?)」
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2004/06/25(Fri)18:59:39 公開 / イソップ物語
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■作者からのメッセージ
多分、次で終わります。