- 『遠い時代で会いましょう - 前編』 作者:ゆーU.S. / 未分類 未分類
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原稿用紙約9.55枚
人はいつだったか、時渡りの装置を発明した。
それを使えば遠い昔にいける。行けるのは昔に限らずだった。
それを使えば過去にだってさかのぼって行けるんだから。
これはかなり、凄い代物だといえるだろう。時渡り、いわばタイムスリップだ。
何故、こんな話をするのかって?それはこの時渡りまたの名をタイムスリップといったことが出来る少年の物語だからなんだ。
その少年の名は国井正春(くにいまさはる)といった。正春は少し暗い一面を持った女の子で、ショートヘアの黒髪を垂らしている。
正春の少しくらい一面とは他の人と自分は異なることがあって、少し普通ではないということが悩みで、いつもその悩みを抱え込んでいるためそこが少しくらい一面として出ているのだ。
それは正春が他の人と違い現在から過去、未来、そして昔といった「場所」を行き来するという変わった体質の持ち主で、正春は自分自身がタイムスリップをするということに不安がりながらいつも学校の校門を通っている。
タイムスリップといえば、よくアニメなんかを見ていると「タイムマシーン」と言った乗り物に乗って時空を越えたり、「こんなことになったのはきっとあれが原因だったんだ。じゃあ、あれを始める前の時間に戻ってまたやり直そう。」とかいう出来事を最初からまたやり直したりするというのが多いだろう。
だが、正春のする時渡りはそれとまったく違った方法で時空を超えるのだった。
それは正春が普段から通っている「小学校の校門」から正春が「こんな時代に行きたい!」と強く願ってその校門を通り抜けると、そこは正春の願ったとおりの時代の風景や建物がずらりとあたり一面に広がる。
まさにその風景は夢のような、夢ではないような現実なのだ。
そして、正春が夢のような夢でないような現実を見だし始めるともう、後戻りは出来ない。ただ、一つ正春自身が心から「現代に帰りたい。」と強く願えば、その通りに正春は現代へと帰ることが出来るのだ。
つまり、戻るも、行くも正春の想いしだいなのだ。
正春はどうしてタイムスリップが出来るのかというと、国井家は先祖代々時を渡り歩くといった体質を受け継いできているのだ。
ちなみに正春の父、国井健吾(くにいけんご)がその時渡りの血を引いている血族の一人でもある。そして正春の母、国井美智子(くにいみちこ)は何の変哲もない普通の血族なので、正春の時渡り体質は父・健吾の血を引き継いでいると考えられる。
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ある翌朝、正春はいつものように元気良くご近所の人に挨拶をしたり、道の途中途中で歩いている友達や、クラスメートに明るく声をかけたり、挨拶をしたりと学校の校門が見えるまで気分よく歩く。
そして、正春の眼の中に校門が飛び込んでくると正春の顔色は変わった。
それはさっきまでの明るく、元気のよい顔色が消え今度は暗くて沈んだ、重苦しい顔色が出てきた。
「(はあ、また・・また、この校門を通らないといけないのね。)」
正春は校門を潜るか、潜らないか…と心もとない気持ちで小学校の校門を前に一人、立ったまま溜息をついた。
正春が溜息をついていると、遠くのほうから甲高い女性の声が響いてきた。
「ちょっとぉ〜、国井さぁ〜んっ。」
「え?・・ぁ」正春はその声に気付いた。その遠くで叫んでいた声の人物は
「先生。惚(こつ)先生!」正春の担任、惚零儒(こつれいじゅ)先生。中国から着てからもう何年もたっているためか、日本語はペラペラと喋れる日本人なじみの先生なのだ。
「遅刻、しますよぉ〜。」惚先生は相変わらずマイペースで、ゆっくりな喋り方なので生徒の間で「のほほん」というあだ名で呼ばれている。
「あ、はい。…ですが、」
正春は惚先生に強く背中を押されて、正春の足が徐々に校門へと近づいていく。誰も正春が校門からタイムスリップをするなんて想っても居ないこと。
「(はぁ、校門からタイムスリップしちゃう体質なんです!といったって、それは夢のまた夢のような話なのだから信じてもらえないし。
もしそこで、言ったとしたらもう、言ったその場で即、クラスの笑われ者だ。そんなの嫌だ!私は笑い者になんか、絶対になりたくないからっ。)」
惚先生は正春の後ろで「いいからぁ〜っ、はいはい。」と何度かささやいている。正春は心の中で「(いやぁ〜〜っ、助けてぇ〜〜〜〜っ!!!!)」と助けを求めていた。
だが、その声も届くはずなく、とうとう、正春は校門の中へと足を踏み入れてしまった。それと同時に正春は白く、温かく、柔らかな優しい光に包まれて姿を消した。
「え?国井・・さん??」
なんとも言いづらい物を眼にしてしまった惚先生。眼を点にしたままただ、そこに固まりながら立っていた。そして、立っている惚先生の立つその前で『キーン・コーン』とチャイムが鳴り響いていた。
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その頃、正春は時代の流れに流されていた。
「あ〜・・れぇ〜〜。助けてぇ〜、誰かぁ〜〜っ!!」
時代の流れには何個か、いや、何万個かの時計があって、その時計の針がグルグル回っている。
「て、叫んでも私しか居ないんだぁ〜〜〜!!!もっと、いやぁ〜っ!!」
何時代に流されるのかは彼女の心に任せて。
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「あ〜・・れぇ〜〜。助けてぇ〜、誰かぁ〜〜っ!!」
正春は時空の流れに流されていた。
「て、叫んでも私しか居ないんだぁ〜〜〜!!!もっと、いやぁ〜っ!!」
正春はただ時代の流れに逆らうことなく流れに乗っていた。
「先生も、皆も、お母さんも、お父さんも…私のこと今頃どう、思ってるんだろう。お母さんとお父さんはこの私の体質を知ってるからまだいいとして…、よくないとしたら第一目撃者だしなあ。(今頃大騒ぎしているかも。)」正春がそうこう考えているうちに白い光が一面に正春の体を包み込むように広がってきた。正春はその光に包まれるがままに流されていった。
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そして、白い光に放り出された正春は目を開けた。
「…は、ここは!・・ここは戦国?」
正春の眼に飛び込んできた風景は凄かった。それは荒れ果てた地に、骸骨やら、死体やらがゴロついた箇所がちらほら正春の眼に飛び込んできたからだ。
「うわぁ、想っているところに行けるのは嬉しいけど・・ちょっとこれはなんでも、凄すぎでしょ。」
凄すぎなのも、仕方のないことだ。正春が着いたこの時代は春秋戦国時代という時代にたどり着いたのだ。つまり、年号で言えば770〜221年頃。
争いが多く続く時代についてしまった正春、これからどうその時代に対応できることか。
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正春はひとまず歩き始めた。「あ〜あ、どうしよう。このままここに居てもしょうがないことだし、あったか〜い私的極楽浄土みたいな場所であるお風呂にも入れないし。」正春はブツブツと呟きながら歩いてきた。
正春が呟きながら歩いていると「そこっ、何者だ!!」という女の声が聞こえた。正春はその声に気付いた。その声色を訊いた瞬間正春はふと思った。なぜかその声は不思議にも自分が自分の声を聞いているような感じだったからだ。「え、(あの子私にそっくりだ。まさかってこともありえるかも。あの子が…て、こともね。)でも、違うかも。いくらなんでも戦国時代に居る訳ないよね。」このとき正春はもしも、あの子が私のご先祖様だったら…と、とっさに思っていた。「(・・て、考えてる場合じゃないんだ。どうしよう?私がこの格好のままあの人の前に出てきたら大騒動が…なんてこともありえる可能性、大だしなぁ。本当、どうしよう?出るべきか、出ないであの人がここから離れていくのを待つか…)う゛〜〜ん、あ゛〜〜っ。」
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ここで時は変わり、広い東京のなかに維持している一軒家のなかで寛いで居る正春の父・健吾(けんご)は野球の番組を前に「正春のやつ、校門くぐっちゃったかなぁ…」と呟いていた。
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その頃、正春は「え〜〜ん、どぉ〜〜しよぉ〜〜っ。お父さぁ〜〜んっ、お母さぁ〜〜ん!!!」と助けを求めていた。
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2004/06/04(Fri)17:06:30 公開 / ゆーU.S.
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