- 『バニラ 〜始まりは甘ったるく。〜』 作者:雷仔 / 未分類 未分類
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バニラの飴を口の中に入れたら口の中は甘さでたちまち占領される。
この甘さはアノ人を思い出す。
甘いものなんて嫌いだわ。
バ ニ ラ
「浅木さん何舐めてんですか」
「・・・・飴。」
後輩の鈴木公平君は少し苦笑いし、「んなこたぁ分かってますよ」
って言った。
「鈴木君はバニラ味の飴、舐めた事ある?」
「バニラ味?ミルク味じゃなく?」
「バニラ。」
「いやぁ、ないっすねぇ。」
じゃぁ、これ。あげてもいっか。
「はい。」
あたしは彼からもらった最後のもの・・・。外国産のバニラ味の飴が
どっちゃり入った袋を鈴木君に渡した。
「え!もらってもいいんすか!?」
「かなり甘いわよ。」
スタスタとオフィスから出、会社の外に出たらムワっとした空気が前全体に広がり
口の中の飴と同様に、うざったるかった。
あたしは浅木鏡子。・・・・多分28歳。
ダラダラと会社でオフィスレディーをやっている平凡な女。
ちょっと最近変わった事といえば、恋人が死んだくらいかしら。
その瞬間あの人の笑顔が浮び、口の中の飴を音を立て噛み砕いた。
・・・・さっきの飴、本当に鈴木君にあげてよかったのかしら。
アノ人からもらった、最後のものなのに。
鈴木君、他の女の子達にあげちゃうんじゃないかしら。きっとそうよ。
そういう奴だわ。
返してもらおう。
いき無し私は焦り始めて会社へ向い、ダッシュで走った。
「鈴木君。」
「浅木さん?」
「さっきの飴、返して。」
息が切れきれで何言ってるのか分らなかったかもしれない。
「なんでdすか?」
「大切な人から、もらった、もの・・・だから。」
「じゃぁ、俺もですよ。」
鈴木君は冷たいような、甘いような。そんな目で見、
「好きな人からもらったもんだから、もう返したくありません。」
「は!?」イライラしていて、ついカっとなってしまう。
周りにはもうだれもいなくて(お昼休みだから)あたしと鈴木君の声が
無駄に響く。
「浅木さん、飴噛み砕いちゃったんすか?」
ゆっくり近づいてくる鈴木君。「せっかく美味しい飴なんすよ。」
「べ、べつにそんな飴甘ったるいだけだわ!」
「じゃぁなんで返して欲しいんすか。」
「それは・・・っ」
「俺のあげますよ。」
鈴木君ノ顔が近づいて、唇みたいなのが、触れた。
「・・・・!!!!!」
口の中に甘く丸い物が入ってきた。
「・・・美味しいものは、大事にしないと。」
「ごちでした。」そう言い鈴木君は部屋をゆっくりと出ていった。
「・・・口移しされた。」
あの鈴木君に?あの真面目そうな鈴木君に?
口の中にはただ甘い感触。
鈴木君はムッツリスケベね。きっと。
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2004/05/30(Sun)07:51:53 公開 / 雷仔
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