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『KILL YOU・・・・・・』 作者:梓 / 未分類 未分類
全角1624.5文字
容量3249 bytes
原稿用紙約5.75枚
瞳を閉じてゆっくり深く陥ると。
今までの嫌な出来事。全て深い長い激しい川に流され行く。
私はそんな深い長い激しい川を逆流していく一匹の小さな鯉なんだ。
川の激流に身をよじっては、また戻り、そしてまた。そう、逆流していく。


この小さな体で、上っていくんだ・・・・・・。



「不幸」






「斉藤さん。検査の時間ですよ。行きましょう。」
ピンクの優しい服に包まれた女の人=看護士は、ベットで永遠に眠り続けていたかった私に優しく微笑み、ベットの私を車椅子に乗せた。
私は何も思わなかった。此処が病院である事も、私が病気だと言うことも。
そして、私の足が動かない事も_
車椅子に乗せられた私はきっと、同級生から見たら滑稽な姿と思われることだろう。陸上部のキャプテンで、あんなに足が速かった、千明が。そう私がこんなタイヤの二つついた椅子に乗っているんだから。
検査を終え、また病室へと戻った。二度と歩けない私の足を見てただたんに、何も思わなかった。感情を抱くことも無理な状態だった。
私がこんな足になってしまったのはちゃんと裏づいた理由がある。

―先週―
「千明、行こう!」
「うん。」
友達と部活後の帰り道だった。いつもと同じ時間が流れていた。
いつもどおりだった。いつも通りの風景。何も変哲はないんだ。
横断歩道の前にいて、そこは赤信号だった。ちゃんとルールを守り待っていた。横断歩道の向こう側の歩道に、大好きな彼氏がいたんだ。
私の方を見て、「千明〜!!来いよ!」なんて叫んでいた。
急に愛しくなってきて、無我夢中でカレの元へ走っていった。
まだ赤信号だったのに。

キキーっ!!

予想通りというか。何というか。乗用車が私を5メートルほどかっ飛ばしていった。私はただ血を流して真っ赤に。ゆっくりと。倒れた。
馬鹿だった。ただそれだけで脊髄損傷となり、見事に自慢の足は二度と動かなくなってしまったのだ。


そして今病院にいる。
つい最近、カレシと友達がお見舞いに来た。けど嬉しくはなかった。カレは
「馬鹿か?何でアソコで飛出すんだよ!!呆れた。別れようぜ?千明の足二度と動かないんだろ?!」
友達は
「馬鹿だよねー。赤信号で飛出すなんて小学生でもしないし。絶交しよっか。」
投げかけられた言葉の意味に理解するのはかなり時間が掛かった。
その言葉の意味を受け止められた時、もう誰も病室にはいなかった。

私だってあんな展開になるなんて思いも寄らなかった。ただ私は赤信号という時に、向こう側にカレがいた。そのカレに逢いたくて、抱き合いたくて。駆け出したんだ。
天涯孤独という状況だった。誰も相手にはしてくれなかった。
こないだ偶然見つけた美味しいクレープ屋も、紹介する相手もいなくなった。ただ、ただ、このまま死んでゆくのもワルくはない。

「この世界に足が動けない人はたくさんいるけど、私みたいな不幸者は私だけだろーね。」
なんて病室で独り言をいっていたのに、その言葉に返事が返ってきた。
「んな事いうなよ。俺だって彼女を車椅子で運ぶほど、不幸せな事ない。」


返事の主は、分かっていると思うけど男だった。背のがっちりしてる割には顔は華奢だった。笑顔がクシャクシャだった。
「彼方は・・・・・・・?誰?」
「俺?俺は君の隣の病室の彼女、上村 響の彼氏、市川 爽。君は?」
「あ、斉藤 千明。高3です。」
何故か初対面なのに、不思議と親近感が沸いてくる。

「君、足怪我してんの?俺の彼女も脚、動かないんだよね。」
「先週の四ツ橋南高前で事故あったでしょ。あの事故で足動かないんですよ。」

ただ、ただ。カレの笑顔が待ち遠しかった。
「そうなんだ・・・頑張れよ!!足が動かないくらいなんだよ。俺だって・・」
「俺だって・・・・・・?」
「ま、いっか。」

そんな何気ない会話が終わると爽は病室を出て行った。
久しぶりだった。看護士以外の人と会話をするのは。
ましてや、男と会話するなんて、もう一生ないと思っていたから。
2004/05/16(Sun)14:38:55 公開 /
■この作品の著作権は梓さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
足が動けない少女をモチーフにした作品です。ちょっとダサい理由の事故でしたがそれ故に、彼女の一途さが現れてくるといいなぁーと思います
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