- 『eyes 第一話〜第二話』 作者:連声 / 未分類 未分類
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目が死んでいるとよく言われる。
目がよく冷めてると言われる。
目が笑わないとよく言われる。
そんな俺の目。
目がよく透き通ってると言われる。
目がよく笑ってると言われる。
目からよく涙を出さないね。と言われる。
そんな私の目。
eyes-
第一話 「目」
俺の目は鮮やかなもの、透き通ってるものを見ることを拒絶している。その理由なんて知ったこっちゃない。美術の時間の先生が言った素晴らしいという作品だって、俺の目は見るのを拒絶した。俺の目は鮮やかなものが嫌いだ。だから俺は生まれて物心ついたことから、鮮やかなものを見たことがない。目は拒絶する。学校に通っていた頃だって俺は仲間の姿を見るのに精一杯だった。制服姿を見るだけで精一杯だった。俺の目は可笑しかった。母に連れられ眼科医に行った事がある。その時は、
「お子さんは、カラスィング病です。」
カラスィング病とは鮮やかなものを見ることで目、脳が異常に普通に人より刺激させられ拒絶すると言う事だった。
母は愕然とした。父は「まさか。」と言った。
それから俺の目は冷たく変化した。笑わなくなった。冷酷になった。嫌いでもない人を睨むようになったんだ。
俺は目で物を見るのが辛いので医者の進めで、症状が激しい左目に眼帯をして過ごしていた。前はあんなに女にモテていた。でも俺の目のお陰で誰も寄り付いてはくれない。
そんな俺の名前は、立花 豪。
そんな中、俺は高校を中退した。目のせいで、上手かった野球ができなくなり、断念した。野球を俺から取ったら何も残らない。野球で推薦入学したのだから、野球ができなくなるとは特待生では無くなる。奨学金もパーだ。
高校を辞めた俺には何もなかった。
いつも道をブラブラしていた。左目の眼帯はまるでかの、伊達政宗見たいだった。俺はカラスィング独眼流だ。
歩いていると、不意に女とぶつかった。迂闊だった。
「あ、すいません!!」
女は持っていた書類を落としてしまっていたので拾っていた。俺も仕方なくそれに付き合って拾っていた。
「え??」
俺は驚いた。この女の目に。
透き通っている。目に色彩がないようなくらい透き通っていて。
羨ましかった。憎たらしかった。俺は思わず、
「貴方、名前は何ていうの??」
「三枝 結城ですけど。」
結城の目は俺と正反対の目だった。白と黒のようにはっきり区別してあるように。
「貴方の目、死んでいますね。左目隠れているけど判る。」
結城はこう言い出した。
「よく言われる。病気なんだ。」
そう言って俺は立ち去った。結城も歩き出した。
―貴方の目、死んでいますね。―
また結城の目に見つめられたかった。
これがただの偶然のeyesの出逢いではなかったことを、
まだ知る由もなかった。
第二話「再」
俺、豪はアイツ、結城に会ってから目の調子がいい。何故だろう。いつもなら透き通ったヤツの目なんてまともに見れもしなかったのに、ヤツの瞳にはストレートに見れたんだ。不思議だ。
俺はやっと就職の当てについた。高校野球。すなわち甲子園を目指す球児たちの集う、球場の掃除だった。
似合わない職だけど、大好きな野球を目の当たりにできる仕事だったから、嬉しく思えた。緑の似合わないTシャツに、古びたズボンを履いて、俺は球場で仕事をする。
この日は、城南東高と、海南高の試合があった。俺は無論ナインじゃない。仕事をするただの高退野郎だ。黙々と仕事をした。
だけど見られずにはいられなかったんだ。
あるやつは、ホームランを打ち、あるやつは三振を取る。羨ましい。
俺は病気のせいでまともに、ナインの健闘ぶりを見られなかったけど、カキーンと打つ音と、スパっっと気持ちよく投げきる音。「ウーッス!」と威勢よく聞こえる音が、ナインの健闘だったんだろう。
左目の眼帯に日が当たる。瞼の裏がうっすらと赤く。
しばらくして試合は終えた。城南東高のピッチャー、山部 章吾の健闘で勝ったらしい。アナウンスで聞いた模様だが。俺は仕事のゴミを球場外のゴミ捨て場に持って行こうと球場を出た。するとそこには城南東高のバスがあった。選手がそこでワイワイ騒いでいた。選手たちは俺を見ると、
「あれって、北高の立花じゃねぇ?!めっちゃ剛速球投げる。確か高校退学したらしいぜ。病気のせいで。」
「本当かよ。あ、眼帯してっぞ!!」
嫌な事を言われた。だけど俺の仕事は野球なんかじゃなくて、ゴミの掃除だった。だけど目の前にある、目を瞑りたくなる光景を目の当たりにした。
「待ってよー章吾!!」
聞き覚えのある女の声が聞こえる。もしかして・・・・・・。俺は女の元へ走った。
「はぁはぁっ、あの君、三枝結城・・・・・・だよね?!俺覚えてる?」
俺はトレードマークの左目を指差しながら言った。
「あ、あの時の・・・・・・。」
「お〜い結城!早く!」
向こうから野球のユニホーム姿の男が走ってくる。この試合で大活躍した、山部章吾だった。俺は唖然とした。
「じゃぁ、立花君、バイバイ。」
結城は章吾の元へ走っていった。その途端章吾が俺のほうに歩いてきた。
「お前、北高の立花だよな?」
「ああ。何か?」
「結城に手出すんじゃねえぞ。眼帯野郎!」
章吾は二度、結城の元へ走り、バスに乗っていった。
あの二人はできてんだ。恋人同士なんだ。透き通った目のアイツは、イカレタピッチャーと、恋人なんだ。
風が眼帯の前を通った。眼帯を通して風が見えた。
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2004/05/05(Wed)15:59:11 公開 / 連声
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■作者からのメッセージ
目について考えてみました。文字は人柄を表すように、目だって人の心をそのまま映していると思います。そこを原点にして書きました。豪と結城の目。そこにはお互いの過去が関わってくる感じで書きたいと思います。明日嫌な事があるから雨が降って欲しい。でもそうはいかない。というような有りっ丈の瞳に写る欲望をストレートに書きたいです。感想お願いします。