- 『 通学路 ―1―』 作者:銘菓 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.6枚
家。
眠る場所、食す場所、癒される場所、勉強する場所、用を足す場所。
学校。
勉強する場所。希望を失う場所。嫌な場所。死にたくなる場所。
この、家と学校をつなぐ場所。
葉桜染まりの通学路。
あたしは息を切らして走った。
この孤独を、激しい鼓動がかき消してくれた。
この痛さを、落ちてくる葉桜が包帯のように包んでくれた。
「何で?何で神様。あたしは生まれてきたの?」
思えば空は、深層心理のように濃い青へ変化していった。
大人びかけた黒髪が頬に纏わりつく。
切れ長の奥二重に見える光景。
手首に無数の無数すぎるリスカの数。
あたしがしたい事。
その@
*神様の命を頂戴する。
そのA
*あたしという存在を消す。
そのB
*殺生な生き方をする。
馬鹿みたいな願いを、今かなうようにと手首にかけたミサンガ。
逆の腕には、自分を傷つけないようにとした、リストバンド。
黒と白のリストバンド。ダイスキな色のリストバンド。
そのリストバンドをはずしてみる。
自分にある傷を見てただ、変なことを考える。
―痛かったっけ?―
その時、ふと右手に持っていたリストバンドが風に流される!!
「待って!!」
必死に追いかける。必死にためて買ったモノ。お金をクラスメートに盗まれながらも懸命に買ったモノ。
リストバンドは、葉桜が包帯のように包み込む中へ消えていった。
風がものすごい強い正午だった。
大事にしていたモノを飛ばしていった風は、あたしをからかうかのように。
目に見えぬSPEEDで消えていった。
あたしはその場をあとにした。その時、あたしは気づかなかった。
リストバンドが飛ばされていった場所に、あたしをいじめていた人物。
佐倉 愛利がいたことを。
彼女がリストバンドを拾ったことを。
通学路 ―2―
あたしの勲章。
生まれたときからある、心の傷。
あたしの失敗。
わずかに見出した、馬鹿な希望。
あたしの笑顔。
よく嘘っぽいって言われる。
あたしの成功。
自分で付けた、リスカの痕。
この関係を結んでる通学路ってわりとエラいんだねぇ。
素早い風が包み込む葉桜の通学路。
太陽の角度が小学校の算数の初歩的な事で習ったような直角に面してくる。
黒と白のリストバンド。リストバンドの裏にうっすらと混血がついている。
そんなリストバンド。安っぽそう。
「こんなの誰が落としたんだろ。もらっちゃおっかなぁ?」
リストバンドを片手に太陽に翳す。
ただ光がバンドの端から注ぎ込む。
佐倉 愛利。
あたしは、クラスメートの川栗美保に対する不安から彼女を苛めている。
彼女がいると、駄目なんだ。
彼女がいると、あたしの生まれつきの傷痕がよみがえってしまうんだ。
そんな、理由から彼女を苛めている。
今日だって、黒板に変なこと書いちゃったし、授業つまらないから抜け出してきちゃったし。彼女も、学校を出たみたいだし。
苛めっ子=強い
って、よく周りの友達はその先入観からか、あたしを慕う。
あたしは別に慕ってほしくなんかないんだ。
1対1で川栗美保の傷を互いに蘇らせたいだけ。
そんなあたしだって、死にたいって思う時だってある。
もう終わりなんだって思って、よく自殺サイトにアクセス。
利き手が左手のあたしの右手には、リスカの痕が無数にある。
確かこないだ見たとき、美保の手首にも同じような傷、あった。
だから苛めっ子=いじめられっこは同類。
別にそれでもいい。あいつが泣く姿を見ることができたのなら。
あたしは、このリスカの痕を見られたくなくて、包帯で隠している。
はっきりいって、包帯はウザい。自分がけが人みたいで嫌。
「このバンド、ちょうどいいじゃん♪」
リストバンドを手首にはめる。傷が丁度見えなくなる。
拾ったものから、お気に入りのものになった。
捨て猫を拾った。がその猫は新種の猫だった・・・・・・みたいな感じの感覚。
これで自分を傷つける事もないだろう。
これで包帯を巻く必要もないだろう。
これで川栗美保に勝てるだろう。
今、リスカの痕が見えないあたしは、最新ゲームの最強ボス。
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2004/04/25(Sun)23:36:32 公開 / 銘菓
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■作者からのメッセージ
遅れましたぁー続編です。