- 『R・P・G 序章〜第1章1』 作者:道化師 / 未分類 未分類
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序章
友人が遠い街で死んだ。
届いたのは一通の手紙だけ。
骨も無い、何も無い。
葬式に来た人は皆口々に言うのだった。
「だから、いかなければよかったのに」
俺はただ一人重いリュックを背負い、この村を出る決心をした。
誰にも告げていないはずだった。
「煉夜(レンヤ)!!」
列車に乗り込もうとする俺の背に聞こえたのは、恋人の声だった。
「行かないで! このまま此処にいてよ」
涙を浮かべたその瞳はキラキラと輝く。周りに咲く赤い花々が、彼女をより一層際立てる。美しかった。
「――じゃあな、莉真(リマ)」
俺はそれ以上言わなかった。いや、言えなかった。
「馬鹿……もう知らないわよ!!」
莉真は手に持っていた鞄を投げつけた。それは俺の背中に当たり、空しく落ちた。
列車の戸が閉まった。
アイツは死んだんじゃない、殺されたんだ。
そんな思いを強く握り締めた。
「……死なないで」
莉真が囁く声は赤い花びらと共に風に吹かれた。
第1章 蝶と仮面
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「はい、お茶です。どうぞ」
小さな家だった。そこに住んでいたのは、沙茄(サナ)という女だった。女は茶色く輝かせた髪を揺らせ、俺の元に茶を持ってきた。
「――ありがとう」
俺はそっとカップに口をつけた。温かい湯気が俺の頬を撫でた。
「それにしても、此処を訪れる人なんて珍しい」
沙茄は俺の前の席に腰掛けて言った。
俺は今、アイツが死んだ街にいる。行くあてをなくした俺は沙茄に救われ、ここに泊まることになった。
「誰もいないんだな」
俺は思わずそう呟いた。他のところは寂れてしまっていた。それどころか人すら見当たらなかった。
「当たり前です。あんな事があった場所ですよ?」
沙茄はそれが普通なのだと言っているようだ。
「だが、あれは10年以上も前の話だろ? 最近は人も増えてきたと聞いたが……」
少し視線を落とす。沙茄はゆっくりと口を開く。
「……出るんですよ、ココ」
「はぁ?」
俺は呆気に採られた。まさか幽霊が出るとかで、ここまでひどいというのか?
「違いますよ。人喰い……他人の美しさを恨むあの女」
沙茄の声が低く、重く感じられた。
「――どんな奴なんだ、そいつは」
しばらくの沈黙。風の音だけが響く。
沙茄は静かに手を顔の前に持ってくる。
「――己の醜さを、仮面で隠すの」
カタカタと窓の音がした。
俺は一人、ベッドの上で考えた。もしかすると、その人喰いがアイツを殺したのかもしれない。そんなことばかり思っていた。そしてもう一つ、気になる事があった。それは――
「あ?」
窓がガタンという音を立てた。どうやら風が強くて木の枝が飛んできたようだ。
「そういえばカーテン開けっ放しだ」
カーテンを閉めに、俺はベッドからおりた。
俺は何も言う事が出来なかった。
雨に黒髪を濡らした女。白い仮面が俺を見ていた。
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2004/04/10(Sat)16:44:11 公開 / 道化師
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■作者からのメッセージ
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自分の好きな作家さんの作品に同じタイトルのものがあります。
そのタイトルをみて話を思いついたのですが(汗
作家さんの影響ってすごいなぁ……