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『黒猫』 作者:深海 / 未分類 未分類
全角578.5文字
容量1157 bytes
原稿用紙約3.8枚


気がついた頃にはもう僕は一人で
物心ついた頃から僕は寒い路上でいつも膝を抱えて
過ぎる時間の遅さを恨んでいた


そんないつもとかわらない夜
一匹の黒猫が僕の目の前に現れた


何も言わず

何も喋らず

何も鳴かない


黒猫はただ僕の隣に座り込み・・眠った・・
その体温が暖かくて僕は久しぶりにぐっすり眠れた


それ以来
その黒猫は毎晩僕の隣にきて眠るようになった
相変わらず何も言わないし喋らないし鳴かない
けれど
その度僕は夢も見ない程深い眠りにつくことが出来た


お金も無くて
食べるものも殆どない
でも
夜が来るのが楽しみで
一日一日僕は生きる事が出来た


ある日


黒猫はいつものように僕の隣に座り・・鳴いた・・


一瞬

本当に一瞬

短く・・

鳴いた


僕は驚いてすぐに黒猫の方に目を向けた
しかし
黒猫はもう眠ってしまっていた


僕はしばらく興奮して眠れなったけれど
黒猫の体温が僕を眠りへと誘い
少しして僕は瞼を閉じた


朝起きると


黒猫は冷たくなって死んでいた
僕の隣で幸せそうな顔をしながら・・


あの夜

黒猫は僕に別れを告げたのかもしれない
これからは1人で頑張れと励ましてくれたのかもしれない


僕は泣いた
あの夜の黒猫の鳴き声が頭から離れない


僕は鳴いた
どうすることも出来ないくらい


ただ・・


悲しくて


悲しくて


悲しくて

仕様がなかった・・


2004/04/09(Fri)17:17:16 公開 / 深海
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