- 『猫と. 完/エピローグ』 作者:九邪 / 未分類 未分類
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「マジかよ……!?」
俺は学校帰りの道の途中、裏山で3つの光りの点が目に入った。明らかに松明とかそういうのとは違う。何か神秘的な感じがする。
俺は好奇心に負けて自然に裏山へ歩を進めていた。
そのとき不思議と今日の学校での会話が思い出された。
1話.猫と同棲!?
昨日学校にて
「やぁ雅人。健やかなる眠りからお目覚めか?」
「……眠い」
俺は白峰雅人(しらみね まさと)八重(やえ)高校の1年生だ。今朝、学校で寝ていたのに隣の工事現場のせいで起こされてちょっと不機嫌だ。
今俺に話しかけてきたのは黒峰猛(くろみね たける)。名字が似ているので始めて会った時から何か気があった。
こいつはなぜか宇宙人やら、妖怪やらそういう系の話が好きな男だ。けど友達思いのいい奴だ。親友。そう呼べる間柄だと思う。
「ねぇ、昨日のテレビ見た?」
「……何の?」
俺はぶっきらぼうに答えた。しかし、猛は興奮しているようでまったく気にもしない。
「あれだよ。『怪奇・日本の妖怪ベスト20』だよ。」
「何だそのいかがわしい番組は?お前、いい加減その世界から足を洗った方がいいぞ?」
「なにを!お前なぁ、本当に妖怪ってのは居るんだよ?ただ僕たちが気付いていないだけさ」
「お〜い『白黒コンビ』。何話してんだ?」
「「その名前で呼ぶな!」」
俺と猛が同時に言った。俺たちはその名字と仲のよさから『白黒コンビ』と呼ばれている。俺と猛はあまり気に入ってない。
「なんか用か?良」
烏良一(からす りょういち)通称:良。ちょっと変わった名字のこれまた仲のいい友達だ。こいつは学校一の情報通でいろいろと便利な存在だ。こいつは大の女好きで、学校中の女に声をかけている。しかし、あまりもててはいない。俺のほうがもてるくらいだ。
「まあまあ、そう言わずにさ。いい情報があるんだよ。なんと、あのお堅い1−4の宗方が告白するらしいんだよ。相手はあの3組の木下だぞ!」
「マジかよ?宗方がねぇ。しかも、木下とは……」
「そんな事よりさっきの話しの続き!」
「あぁ、悪ぃ悪ぃ……」
内心、チッと舌打ちした。こいつのオカルト会話は長くなる。だからさっき、良が会話を途切れさせてくれた時は「よっしゃ!」と心で万歳したくらいだった。
「だからだねぇ、妖怪と言うのはいつも僕たちの近くにいるのだよ。ただ僕たちが気付かないだけ。たとえばそこらへんの猫だって、化け猫かもしれないし。教室の壁でさえヌリカベかもしれないんだよ?」
「まさか〜。そんなわけないだろ。それだったら、あの校庭の二宮金次郎も動いたりするのか?」
俺と良は笑った。猛はすねたように顔を膨らませた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おいおい……冗談だろ?」
俺が裏山で見た物は、明らかに普通の猫より2倍ほどでかい猫だった。
それだけならまだ良いにしても、なにやらぼんやりと青白く光っていたし、なんか空飛んでるんじゃねぇの?って思うくらいジャンプしたりと、確実に普通の猫と違った。猛、スマン。お前の言うことをもっと聞いておけばよかった。たとえば化け猫の倒し方とか。もし生きて帰れたら、明日、猛に謝ろう。そのうち2匹が1匹に襲い掛かっていた。ヤバイ状況だと思う。2匹の猫が1匹の猫を追い詰め、今にも飛び掛ろうとしていたのだった。
俺はとっさに助けに行った。
「ヤメロ!」
俺は飛びかかった猫と、追い詰められた猫の間に入った。その猫は止まらずに俺にぶつかってきた。俺は吹っ飛びがけ下に落ちていった。俺は意識が遠くなっていった――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、俺は何食わぬ顔で学校に来ていた。
「ふぁ〜。眠い……」
「君はいつも眠い眠い言っとるのぉ」
大きな欠伸をした俺のもとに猛が来た。なんか変な口調だ。じじくせぇ……
「しかも、何?その顔の引っかき傷は?猫にでもやられたの?」
「あぁ……化け猫にね……」
俺は顔に無数にある引っかき傷をなでる。触れるとまだ少し痛かった。
「何!?雅人、遂に君も妖怪に目覚めてくれたか。くぅ、この日のために切々と君に妖怪の素晴らしさを伝えた甲斐があったよ。思えばそれは僕たちが始めてであった頃からか……あのときの君は――」
猛は俺が妖怪に目覚めたと勘違いして、その嬉しさの余りなにやらブツブツと喋ってる。今話しかけても無駄だ、と思い、俺は良のところに行く。
「おい良、何見てんだ?」
良は自分の席でノートを見ていた。こいつは貴重な休み時間に勉強するタイプじゃないので俺は尋ねてみた。
「んあ?あぁ雅人か。これはな『良一特製・八重高の全て』と言う俺の情報誌だ。これに俺の全ての情報が書き込んである。全校生徒のテストの点から、校長のカツラ疑惑の真偽まで全て、だ。」
「マジで!?すげぇな。で、校長はやっぱりヅラなのか?」
「おっと、お客さん。ここから先はこれもらわないといけねぇな」
良は右手の親指と人差し指を合わせ円を作る。ようは金よこせ、てことだろう。
「どうだい?お客さん。気になるあの子の好きな人。お安くしとくよ?」
「別に俺はこの学校に気になる女なんていねぇよ。」
俺がそう言うと、良はつまらなそうに舌を鳴らす。
「なんでぇ。お前それでも高校生か?もっと青春しろよ」
「大きなお世話だ!」
「………ところでお前その顔の傷はどうしたい?」
「ん?あぁ、ちょっと化け猫に襲われてな」
「何ー!?雅人、お前まで猛と一緒のオカルトブラザーズになっちまったのか?……なんて事だ」
良は口ではガッカリした様子だったがノートに今、俺が言った事を書き込もうとしているのを俺は見逃さなかった。こいつは何か面白いことを知ったら次の日には学校中の生徒が知っているというくらいい降らす奴なのだ。俺は慌てて「冗談だよ。」といって止める。
「―――と言う訳で、僕と君が妖怪好きになったのは運命であって……て、あれ?雅人ーー?」
猛はまだ一人で話し続けていたらしい、今ようやく俺がいないことに気付いたようだ。
「ただいまー」
俺は家のドアを開け、中に入る。
俺はこの高校に入るため上京して独り暮らしをしている。あ、故郷から来た妹の白峰明菜(しらみね あきな)もいるから二人暮らしか……。妹は俺が言うのもなんだが、かなりのお兄ちゃん子で俺を追っかけて家出当然で俺の家に転がりこんできた。妹は中学1年、今は学校に行っている。なら、何で家のドアが開いてるのかって?泥棒?違う違う。まぁ入れば判るって。
「お、雅人。帰ってきたのか」
「あのなぁ、せんべい食いながらテレビ見てんじゃねぇよ」
「いや、この“てれび”なる物が面白くてな。」
家の中には一人の小柄な可愛い女がいた。せんべい食いながら寝ながらテレビを見ている。おばちゃんみたいだ。
こいつは俺の彼女でもなんでもない。ていうか人ですらない。まぁ、途中だった裏山での出来事を話してやろう。
「うぬ、目が覚めたか?」
俺は目を開けたら、目の前には猫がいた。さっきの猫か?どうやらこいつが手当てしてくれたらしい。ん?手当て……?しかも、喋っ…た…?
「ギャーーーーー!!!!!!!!!!!ね、ねね、猫がーー!!」
猫は少々俺の声に驚いたようだが、やがて、叫びまくってる俺に目掛けて一発パンチを御見舞した。これが猫パンチか!!
「落ち着け、このたわけが!」
俺は猫のなんともいえない威厳に押されてピタッと静まった。
「私は『猫又』という妖怪だ。かれこれ200年ほど生きておる。さっきひょんなことから、仲間に襲われての……もう、猫又の里には戻れん。主は私を助けてくれた。よって私もお前を助けた。」
俺は次第に落ち着いていった。猛の妖怪話がなかったら気絶していたかもしれない。猛に感謝……するべきなのか?
「私は仲間を裏切り里を追われた。そして、禁じられている人との交流もしてしまった。私にはもういくところがない……ではさらば」
俺は猫又の悲しげな背中を見て思わず引き止めてしまった。
「なぁ、よかったら俺の家に住まない?原因の半分は俺なんだしさ。」
猫またはこっちを振り返り少しいぶかしげにこっちを見ていた。「何か企んでいるのか?」と言う感じだったが、やがてこちらに寄ってきた。
「おぬしの目は嘘をついていない。私はナエ。しばらく世話になろう……」
「うん、よろしく。」
猛が聞いたら目を輝かして喜びそうな話だと思った。
「む!雅人。これは何だ?」
ナエは電子レンジをぺたぺたと触っている。
「あぁ、それは電子レンジっていって、物を温める機械さ。」
「ほぅ、人間界は便利だのぉ」
そういえばなぜナエが人の姿をしているかと言うと、ナエは200年生きた妖怪だから人に化けるのなど造作もないとか何とか。服は妹のをやった。
しかし、ナエの人間の姿は俺は心当たりがあった。その人が写った写真をじっと見ていたらナエが気付いた。
「何だ?誰だそれは?」
「あぁ、こいつは俺の幼馴染の加藤弥生(かとう やよい)って奴さ。去年引っ越したんだ。「忘れないでね」ってこの写真くれたんだ」
ナエはその写真を見ていた。どうやら自分と似ていると気付いてないようだ。
「惚れていたのか?」
「バ、バッカヤロー。そんなわけあるか!」
「ニャニャニャニャニャ。赤くなって、可愛い奴だのう」
ナエは猫丸出しの笑い声で笑いながらそう言う。俺はますます赤くなった。
「ただいま〜」
妹の声だ。どうやら帰ってきたようだ。時計を見ると、4時半。ちょうどいつもと同じ時間だ。
「ナエ、妹が帰ってきたから隠れてくれ。飯は後で持っていく。」
「うむ、早くしろよ。」
ナエは俺の部屋のタンスの中で暮らしている。朝飯、夕飯は俺が持っていくが昼は俺は学校にいるので、猫の姿でどこかから取って来るらしい。
「お兄ちゃん、ただいまv」
妹が俺に飛びついてきた。
「こら、重いだろ」
「あ〜失礼しちゃうな。あたしこれでも軽くなったんだよ?」
「へっどうだかな」
「そんなこと言うと、ご飯作ってあげないよ?」
「へいへい、悪かったよ」
「よろしい!じゃあ、ご飯用意するね」
妹はエプロンをつけて台所へ向かった。俺は料理が下手で妹が来るまではインスタント食品ばかり食っていた。だから妹が家に来たのは大助かりだ。
「おい、明菜。今日はちょっと味が薄いんじゃないか?」
俺は妹が作った料理を食いながら不満を漏らす。
「しょうがないでしょ。何でか知らないけど、台所からダシの煮干が減ってるんだから。なんでだろうね?お兄ちゃん食べた?」
「バカヤロー!猫じゃあるまいし、そんな物……」
俺はそこまで言ったとき犯人がわかった。
俺は飯を食い終わると急いで終えの部屋へいった。
「おい、ナエ!」
俺はずっこけそうになった。なぜかナエは俺の漫画を堂々と読んでいたからだ。妹が掃除に来たりしたら大変だった。
「コラー。何でタンスに入ってないんだ!?」
「あんな窮屈なところになど入っておれるか!」
なぜかナエは逆切れした。
「だいたい、お主は飯を持ってくるのも遅いし、タンスは汚いし……む、まさか、私を監禁するのが目的?」
「何だそりゃ?どこでそんな言葉覚えたんだよ?」
こいつは昼間テレビばっかり見てるから自然と覚えたんだろう……
「あ、そうそう。お前台所の煮干食った?」
「………食ってないぞ」
「何だ今の間は……?」
ナエは汗を垂らして、わざとらしく俺から視線をそらした。はい、犯人決定。
「お前って奴はー!!」
「うるさ〜いこのたわけが!!」
こうして俺の顔に引っかき傷が増えていくわけです。どう考えてもナエのが悪いと思うんだけど。
兎にも角も、俺と化け猫の奇妙な共同生活が始まったわけである。
2話.化け猫だけに猫かぶり!?
「お兄ちゃん!早く起きないと遅刻しちゃうよ!」
「あ、あと5分見逃してくれ〜」
俺は部屋から悲痛な声を漏らす。俺は父親に似て朝は弱いし、料理も掃除もからきし。妹は母に似て、全く俺と正反対の性格だ。妹は呆れて溜息を着いてから俺の部屋に入ろうとする。俺はドアノブが回る音を聴いた瞬間飛び起きた。
「ワワワ!明菜。ホラ俺起きたからさ。下行っててくれよ。」
俺がこんなに焦る理由。それは部屋には案の定、タンスから落ちて床で寝ているナエがいたからだ。いくら妹でも兄の部屋に知らない女がいるのを見たらさすがにヤバイだろう。俺はナエを足でつついて起こす。
(ナエ。タンスに戻れ!)
俺は小声でナエに言う。ナエはのっそりとタンスに戻る。
「お兄ちゃん。早く来てよね」
「はい………。行ったか?」
俺はドアを開けて妹が下に行ったのを確認すると制服に着替えた。そして、ナエの服を置いていく。
「早くしないと、猛くんと良一くん来ちゃうよ?私も遅刻しちゃう」
「ハファッヘフ(判ってる)」
俺はパンを銜えていたので変な声が出る。そのとき、玄関から声がした。
「お〜い、雅人!行くぞ〜!」
良の声だ。多分猛もいるだろう。
「ホラ!来ちゃったじゃない」
「いってきま〜す」
俺はパンを銜えながら玄関へ向かった。
「御待たせ」
「ったく、毎度毎度、遅いんだよお前は!明菜ちゃんに迷惑だろ!」
「まったくその通りよ。良一くんの言うとおりだわ」
「お、明菜ちゃんおはよう」
「おはよう。じゃあ、お兄ちゃんよろしくね」
妹はまた家に入っていった。
「うん、明菜ちゃんやっぱり可愛いなぁ。誰かさんの妹にはもったいねぇぜ」
「悪かったな……ていうか明菜に手ぇ出すなよ?」
良は俺の問に何も答えなかった。妹はお兄ちゃん子だけど俺も充分兄バカな様だ。
「あ、そうだ。雅人知ってる?きょう転校生が来るらしいぞ」
「おい、そういう話題は情報通の俺からだろう?」
俺と猛は無視して話しを続けた。
「へぇ、男?女?」
「女の人らしいけど」
「マジで!?楽しみだな。美人だといいな〜」
良がニヤニヤしながら何か想像しているようだ。
「まったく、お前の頭には女の子としかないのか?」
「ない!!」
良はきっぱりと言い放った。ここまできっぱり言われると何か言う気も失せる。
「昔から言うだろう?『花とミツバチ、男と女』ってな。男と女は惹かれあう運命なのだよ……」
「な〜に気取ってんだよ」
俺たちは遅刻ぎりぎりの時間で学校に入った。まぁ、その原因は俺なのだが。多分俺がいなかったら二人は楽勝で間に合うだろう?
「ふぅ〜間に合った……」
「おい、雅人。もっと早く起きてくれよな。つき合わされる僕と、良の身にもなれ!」
「悪い悪い。今度から努力するよ」
俺がこの言葉を行ったのは通産で29回目だ。猛と良も判っているのでフゥと溜息をつくだけだった。
「お〜いみんな席につけ〜」
担任の松田(女)が入ってきた。公表している年齢は32だが、猛の情報によると40いってるとか何とか……。10歳近くサバ読むなよ。ていうか騙されるなよ生徒共。
俺は自分の机に座る。後ろには良、横には猛が座っていた。
俺は机に肘をついて、その手にあごを乗せてセンセーの話しを聞いていた。
「今日は転校生が来る。」
(お、猛の言ったとおりだな。)
「入ってきたまえ」
クラス中がざわめく、可愛い転校生だ。しかし、俺は、その転校生を見て、手がずれ頭を思い切り机に打った。俺は余りの痛さに叫ぶ。
「ギャーーーー!!!」
「白峰!うるさい、黙れ」
俺は先生に注意され、まだ痛むデコをさする。
「はい、じゃあ、自己紹介して」
「えっと、海林高校から来た鵺野ナエ(ぬえの なえ)です。よろしくお願いします」
やっぱりナエだ。あいつどうしてこんな所に……しかも、なんかおしとやかな女を演じてるし。ん?待てよ。この流れだともしかして……!
「じゃあ……白峰の隣に座れ」
やっぱり!!
「よろしくね。白峰君」
「………」
俺は何も答えなかった。ナエは不愉快なのか少し顔をしかめて座る。
「鵺野さ〜ん。俺烏良一って言うんだ。よろしく〜」
「あ、よろしくお願いします。」
早速女好きの猛が話しかける。手出すの早!!
「鵺野さんておしとやかだね。」
「ウフフフ、よく言われます」
「よく言うぜ……」
俺がボソリとそういったら、ナエはこっちを向いてニコリと笑った。しかしその笑いはなぜか俺に恐怖を与えた。
休み時間、ナエは質問攻めにあった。海林中とか言う聞いた事ない学校の事を聞いたり、プライベートを聞いたり。ま、ナエは見た目はいいからしょうがない。
昼休み俺はナエを連れて、俺の昼飯スポット、屋上へと向かった。
「ホラよ、昼飯だ。」
俺はナエにパンと牛乳を渡す。
「一体なんで学校に来たんだ?」
「ん?何だ?私が来たら悪いのか?」
俺は一瞬たじろいだ、余りのナエの豹変振りに。
「いや、悪いってことはねぇが…」
「ふん、教えてやろう。私がここに来たのは昼飯のためだ。」
「昼飯?」
「2度言わすな。昼飯だ。お前が煮干を食うなと言うから、こうしてお前と一緒のところに来るほかないだろう?」
「いや、他はかなりあると思うんですが……」
「うるさい」
俺がまだナエに言おうと思ったとき、他の生徒も屋上に来た。
「あ、ナエさ〜ん。一緒にご飯食べませんか〜?」
「よろしいんですか〜?」
ナエはそういって女子生徒のところへといった。
「これぞ、まさしく猫かぶりってか。ハッハッハッハ……」
「よぉ雅人。何一人で笑ってんだ?とうとう壊れたか?」
良が屋上に来た。続いて猛も。俺はちょっと恥ずかしくなってあわてて言った。
「わわわ、え〜とお前ら、ちょうどいいから飯食おうぜ」
俺達は屋上で昼食を取りはじめた。俺と良は購買室で買ったパン、猛は弁当。なんでも自分で作ってるらしい、俺には無理だ。
「いい天気だね。こんな青空の日には『ふすま』が出そうだね」
『ふすま』何でも飛行機を狙う大型の空飛ぶ妖怪だとか…
「おいおい猛……飯食ってるときくらい妖怪の話は……」
「あ、あの雲の形、『土魚』に似てる」
『土魚』地下鉄とか地下にあるものを狙うモグラのような妖怪だとか……なんで俺こんなに詳しくなったんだ?いつも猛の話し聞いてたからかな?
「ダメだこりゃ。」
猛は自分の世界に入った。こうなると誰も連れ出せない、俺は良と話すことにした。
「なぁ、あの転校生のナエちゃんメッチャ可愛くない?俺好みだ〜。」
「まったく、お前はそればっか言って…」
「いいじゃねぇか、昔から言うだろう?『花とミツバチ……』
「だぁ、それは前にも聞いた!!」
どうやら俺の高校生活は大きく変わりそうだ……
3話.ピラミッドは王の墓
昼休みも終わり、午後の授業が始まった。
午後の授業は、数学だ。教師は確か……木田とか言う男の教師だ。俺は数学は嫌いだから殆んど寝ている。だから、余り先生は覚えていないが、確か女たらしだったような……
先生が教室に入ってきた。早速ナエのことに気づいたようだ。
「お!君が噂の転校生か!うんうん、確かにキレイな子だな」
「あ…ありがとうございます。」
ナエは少し木田にたじたじの様だ。俺はざまあ見ろとニヤニヤ笑っていたらナエが俺の笑みに気付いた。俺のほうを向いた顔は「なんとかしろ!」と言わんばかりの顔だった。
「君はどこから転校してきたのだね?」
木田がいつもと違う口調で話す。女子生徒の前だとこうらしい。
「え、あの海林高です……」
「海林高?聞いた事ないな……。どこの高校だい?」
「えと、あの東北の……」
ナエのバカ!これ以上墓穴掘ってどうするんだよ!ナエはマジで困った顔をしている。そして、それに連れて俺をにらむ顔もすごみを増してくる。仕方ない…そろそろ助けてやるか……
「あの先生……」
「何だ!?白峰」
先生は「邪魔するな!」と言わんばかりに俺をにらんできた。だが、それがどうした!ナエのが怖い!
「さっさと授業始めませんか?」
「何だと?」
「いや、だからナ…鵺野にばかりにかまってないで、早く始めましょうよ」
俺がそう言ったらクラスの奴が揃って言い始めた。ナエは人気者だからな。
「そうだ!そうだ!」
「早く始めろよ先生!」
「鵺野さんに迷惑だろ!」
殆んどは男子生徒だった。ナエの人気がよくわかる……。ん?俺の後ろの奴がひときわ声を張り上げてるような・・・…?
「早くやれ!」
やっぱり良か……。そういえばファンクラブ作るとかどうとか言ってような
「ムムム…今始めるつもりだったのだ…!」
木田はそういって授業を始め出した。なんか授業中殺気を込めて俺をずっとにらんでいた。しかも、問題をすごい俺にやらせるし…俺は数学が苦手なんだよ!
「はぁ……」
俺は授業が終わった後、憔悴しきっていた。なれない数学の問題をさせられまくったからだ。俺はこれからずっと数学の時間は当てられ続けるだろう…。あぁ、数学は俺の睡眠時間だったのに
「ありがとう白峰君。たすけてくれて」
休み時間ナエにお礼を言われた。なんか白々しかった。
「ふん。俺はそのせいで数学の問題当てられまくったんだぜ?」
「雅人ー!鵺野さんにそんな口をきくなーー!!」
いきなり、良が俺にドロップキックをかました。俺は椅子から吹っ飛び壁に頭を打った。
「イッテー。何すんだよ良!」
良はナエの手を握って何か言っていた
「鵺野さん、あんな奴の言うこと気にする必要ありませんよ。あいつはいつも寝ていたんです。これで丁度いいくらいです。」
「こら!良。お前だって数学の授業の時、前は寝ていたじゃねぇか。それなのに鵺野が来てからまじめ気取りしやがって!」
「何だと!俺は前からまじめ優等生だったぜ。な、猛?」
「………」
猛は何も言わなかった。しかし、良を見る視線は少し軽蔑が混じっていた。
「ゴホン!とにかく俺は生まれ変わったんだ!雅人、今度のテスト勝負だ!俺の本当の力見せてやるぜ!!」
「おもしれぇ。受けてたってやるよ」
俺と良は前々からクラス最下位を争うほどのレベルだった。自分で言って少し悲しくなるが。しかし、俺は殆んどの授業を寝ていて、良は数学を寝ているとはいえ他の授業は大体起きてる。なのに、寝ている俺とテストは同レベル。つまり、俺のほうが頭はいいのだ。
「二人とも少し落ち着いてよ。」
「邪魔をするな猛。男には戦わなければいけない時があるのだ。見ていてください、鵺野さ……あれ?」
ナエはいつの間にか向こうの女子生徒の集団と話していた。
「鵺野さ〜ん……」
良は悲痛な声を漏らした。ナエは気にもしていない。……悪女。
俺は家に帰って、自分の部屋に行くと、すぐに勉強道具を広げた。机で勉強するのはどれだけぶりだろう。
「よし!やるぞ!」
まずは世界史から始めた。ま、簡単だろうと高をくくっていた。
「えっと、何々…「始皇帝が作った世界最大の建造物は?」そんなのピラミッドじゃねぇの?」
「万里の長城だ、たわけが」
ナエが部屋の窓から入ってきた。ナエは俺と別々に帰る。もし、俺がナエと暮らしてる事がばれたら、俺はクラスの男子に殺されてしまう。
「ハ?何言ってんだ。万里の長城を作ったのは殷の紂王だろ?」
「たわけが!紂王は古代中国の伝説の王だ。そんな記録はどこにもないわ」
俺はそんなバカな、と思い、答えのページを見る。確かにそこには「万里の長城」と書かれていた。俺は気を取り直して次の問題に取り掛かった。
「え〜と、「三大ピラミッドは何王と何王と何王の墓か?」。え?ピラミッドって墓だったの?」
ナエは呆れたように溜息をつく
「阿呆だな……。クフ王、メンカウラー王、カフラー王の三人の王の墓だ。」
「ヘェ……」
「雅人、おぬしもしかして頭悪いのか……?」
その一言は俺のガラスのハートにぐさりと刺さった。俺はうなだれた。
「ふん、おぬしには今日の授業での借りがあるしな。私が教えてやろう」
「本当か?サンキュー」
そこで、俺はハッとあることに気付いた
「お前って……頭いいのか?」
俺はナエに殴られた。パンチ自体は余り痛くなかったが、その後の引っかきはきつかった。
「少なくともおぬしよりは遥かに良いと思うぞ。だてに二百年も生きておらんわ!」
「じゃあ、よろしくお願いします。」
ナエにしばらく教えてもらっていたら、あっという間に時間がたった。そろそろ妹の帰宅時間だ。
「ただいま〜」
やっぱりだ、妹が帰ってきた。俺が珍しく下にいないのに気付き、上に上がってくるようだ。ナエはタンスに隠れる。
「お兄ちゃんただいま〜。あれ?お兄ちゃんが勉強してる!!」
妹は余りの衝撃に後ろによろよろと後ず去った。そこまで驚くか?
「お…お兄ちゃん、熱でもあるの?」
「バカヤロ。良と勝負するんだよ。そのためだ!」
「ふ〜ん……じゃあ、あたしも手伝ってあげる。問題出してあげるね」
妹は教科書をパラパラとめくり、俺に問題を出してきた。俺はしばらくだったがナエに教えてもらったため結構答えられた。妹は感心してるようだ。
「へぇ、お兄ちゃんて結構頭いいのね……あ、ここ間違ってる。」
「何?あってるじゃないか」
「字よ、字。「万里の長城」が「万里の超城」になってる。」
「……あ」
今日はいよいよテスト本番。俺は一夜漬けなどと言う真似はしない。というか出来ない。もし したら、俺は学校で一日中寝ているだろう……
俺はその日は、一人で学校に行った。今は良に会いたくはない。なら猛と行けば?という感じだが、猛は良について行ったようだ。
学校について俺は下駄箱に靴を入れていた良も来た。
「あ」
「あ」
俺たちはしばらくじっとにらみ合った。
「よぅ、調子はどうだ?」
「フン、バッチリさ。何せ俺は昨日一夜漬けで頑張ったからな」
よく見れば確かに良は目の下にクマができていた。それにどことなくやつれていた。
「そう言うお前は?」
「俺は昨日ぐっすり寝たぜ」
「ほぉ、余裕じゃねぇか」
俺たちはしばらくまたにらみ合ったが、やがて、靴を履き替え教室に向かう。教室ではほぼ全ての生徒がテスト勉強をしていた。俺は今日はテストだけしか授業がないから鞄の中は空だった。俺だけ何もしないで机に座っていた。正直、浮いていた。
「よ〜し、お前ら机の上にあるもの全部しまえ。始めるぞ〜」
先生が入ってきてそう言うと、教室は一気に緊張の空気に包まれた。かく言う俺も心臓がドキンドキん言うのが聞こえそうだった。
最初のテストは国語。正直一番自信がない。
ここからの俺はかなり一杯一杯だったので、テスト中のことは悪いが飛ばさせてもらった。では一気にテスト返しから……(すいません)
「……白峰!」
俺は先生に名前を呼ばれ取りに向かった。かなり緊張していたので、俺は足と手が一緒に出ていた。皆がくすくすと笑っている。
「まぁ、お前にしては頑張ったじゃないか」
先生にちょっと気に食わない言葉をもらいテストを受け取る。まだ点数は見ない。良といっせいに見せる予定だ。
「次、烏!」
「は、はひ!」
量も俺に負けず劣らず緊張している。「はひ!」はねぇだろ、さすがに。
「良……」
「雅人……」
俺たちはいっせいにテストを見せ合った。
俺、48点、良は………45点!!俺の勝ちだ!!
「やっ……たーーー!!!」
「クソーー!!3点差か〜」
レベルの低い勝負だった。両方50点いかないとは……
「じゃあ、これから一週間昼飯おごりな。」
「仕方ねぇな……」
量は財布を確認して、俺に一週間おごれるか確認している。少し、ガッカリした表情になった、足りないのか?俺が勝負を受けた理由はこれだ。負けた方は昼飯をおごる。それがルールだ。
「猛はどうだった?」
「ワァ!!」
猛は慌てて隠そうとするが俺と良は見てしまった。92点………。間違いは4問だけ……
「ケッ!!」
「これだから頭のいい奴は!!」
「何だよ!その言い方!僕だって頑張ったんだよ?」
猛は必死に弁解する。
「今回もお前が学年一位だな……なぁ、天才さん?」
良が猛をからかっている時、俺はナエにテストが帰ってきたのを見た。
「おい、鵺野。何点だった?」
俺は覗き込んだ。そのテスト用紙には丸がいっぱい、ついていた。
「100点!!??」
「何ぃ!!?」
俺の言葉にクラス中が驚く。確かにそこには100点のテスト答案があった。
「スゲェーー!さすが、鵺野さん!!」
良が自分のことのように喜んでいる。俺らとは2倍以上の差……。ケッ!ペッ(つばを吐く音)。ナエは俺の方を向いて、俺のテストを見ると、バカにしたような笑を浮かべた。なぜか俺は以上に腹が立った。それと、家に帰って妹にテストを見せたときの反応を考えると、震えが止まらなかった……
「ただいま……」
俺はそろそろと家に入っていった。心なしか声も小さい。家に入ってもシ〜ンとしていたので俺はガッツポーズをとって部屋へ行こうとする。
「お兄ちゃ〜〜ん」
俺はドキッとして声の方を振り返る。そこにはいたのは物凄い笑顔の妹だった。
「何でそんなにこそこそしてるの〜?」
「いや、あの、それは……」
俺があたふたしてると妹は一気に確信を着いてきた。
「テスト見せなさい!!」
「……はい」
俺は妹の何とも言えない迫力に押され、テストを取り出した。俺のテストを見た妹はわなわなと震えた。
「何よこれ!!あたしがせっかく教えてあげたのに、50点も行かないなんて!」
「けどよ〜俺だって頑張ったんだぜ?」
「問答無用!今日から1週間お風呂掃除だからね!」
「明菜〜〜」
妹はプンプン怒りながら、ご飯用意をしにいった。恐らく今日の晩御飯、俺の量は少ないだろう。
「ハハハハハ、相当怒られたようだな」
「あ、ナエ」
部屋にはすでにナエがいた。どうやら妹との会話も聞いていたようだ。
「何でお前が100点も取れるんだよ?」
「ここのできの違いだ」
ナエは頭をトントンと指す。
「で、お前合計何点だった?」
「ふむ、確か5教科で491点だったかな……」
「491!!?」
491点と言えば猛の取った過去最高の493点と2点違いじゃねぇか!こんなのねぇだろ!ナエは殆んど勉強してなかったのに
「見事学年一位だったぞ!」
「それはよぅござんしたね……」
今度のテスト、俺は本気で頑張ろうと硬く心に決めた。
4話.ナエはモテモテ。俺は?
「いってきま〜す」
俺はパンを銜えて飛び出した。いつも通りの俺の朝だ。今日は俺が余りにも遅かったから猛と良は先に行ったと言っていた。
「ふぅ、ぎりぎり間に合った」
「む、雅人」
「あ、ナエ」
俺が息を切らしてゼェゼェ言ってると、やや送れてナエも来た。ナエは学校来るの遅いみたいだな。
まぁ、猫は朝が弱いからな(←適当)
「何だお前も朝遅いんだな」
「ふむ、まぁな……」
そういってナエは下駄箱を開けた。そのとたん、ハートマークなどが書かれた手紙がドサーッと溢れ出てきた。
「またか……。」
「またってお前それラブレターじゃん」
「らぶれたー?」
「えっと、恋文ってことだよ」
俺が説明するとナエはホォと言って全部の手紙を鞄に詰めた。多分、こいつの事だから見もしないで捨てるんだろうな……。
「ナエは本当にモテモテだな」
俺は下駄箱を空けた。すると、ひらひらと一枚だが、ハートの書かれた手紙が落ちてきた。
「あ。」
「なになに、「昼休みに、校舎裏の伝説の樹にて待っています。坂本朔羅(さくら)」か。キレイな字の子だな……」
俺は教室で今朝もらったラブレターを読んでいた。俺の席だと、後ろは良で、隣は猛だから見られる心配がある。ていうか良に見られたらもう終わりだ。だから、俺は教室の後ろで読んでいた。
「なんか、聞き覚えがある名前だな……。なんでだろう?」
そういえば「伝説の樹」について説明しておこう。
「伝説の樹」校舎裏にある、この学校が出来た時からある大きな一本の樹。そこで告白して、成功すると、一生うまくいくと言う伝説があるのだ。しかし、俺はいまどきそんな事を信じる人がいるということに少し驚いた。
「ま、何はともあれ、行かなきゃいけないよな……」
「よっ雅人。何見てんだ?」
「ウワッ良」
俺は慌てて手紙を隠した。
「何だよそこまでビビル事ないだろ?で、何見てたんだ?」
「何でもねぇよ!」
「ふ〜ん、むきになって……。もしかして、ラブレター?」
俺はドキッとした。だが良は冗談で言ったらしく俺の様子に気付いていない。
「まさかな〜。お前に彼女なんか出来たら明菜ちゃんに殺されちまうもんな〜」
そうなのだ。俺が他の女と付き合っていたら確実に妹は俺と口を利いてくれなくなるに違いない。まぁ、どっちにしろ、俺は断るつもりだったが。
昼休み。俺は猛と良にばれないように、後者裏へ向かった。
途中、俺は断る言葉を考えていた。
「僕には他に好きな人が……。だめだ。誤解を生む。君と付き合うつもりはない……。傷つけちゃうかも……」
俺はブツブツ言いながら、後者裏の「伝説の樹」まで来た。まだ誰もいない。よかった、心の準備が出来る。
「なんて言えばいいのかなぁ」
すると、前から一人の女性が来た。正直、不細工だ。デブ、めがね、三つ編み。三拍子バッチリ揃ってる。俺はその女を見た瞬間、今まで考えていた言葉を全て忘れ、一言、正直な言葉が口から出た。
「いやです。あなたは。勘弁してください!」
俺は頭を下げてそう言った。その女は「はぁ」と顔をしかめた。
「何してるの?あんた」
「え?あなたが坂本朔羅さんじゃないんすか?」
「ちがうわよ。もう、失礼しちゃうわ!」
その女はのっしのっしと去っていった。なんか地面が揺れた気もした。
「何だ、違ったのか」
俺はさらに数分待った。すると、今度こそ坂本朔羅と思われる人物がやってきた。
「え〜と、あなたが坂本さん?」
その子はぶんぶんと首を縦に振った。髪の長いかわいい女の子だ。顔を見て判った。この子は生徒会長だ。だから聞き覚えのある名前だったんだだ。確か、学校でも結構人気がある子だ。そんな子が俺に惚れてたとは……
「あ、あの、白峰君。前から好きでした!私とつきあってください!!」
坂本さんはいきなり告白してきた。俺は悪いと思いつつも断りの返事をした。
「ごめん…」
坂本さんは俺の言葉を聞いたとたん目から光る滴を流した。俺は頭が真っ白になった。とても悪いことをした気になった。
「わわわ、ごめんと言っても嫌いな訳じゃないし、これから友達になればいいわけだし、ほ、ほら!まだお互いを良く知るべきだと思うんだよね。俺は、うん。」
俺は必死になって言い訳をし続けた。何か「伝説の樹」からガサガサと音がした。その内、坂本さんはくすっと笑った。そして、坂本さんが何か言おうとした瞬間、
「でよ〜猛。俺そいつに言ってやったんだ。「お前なんか、トラックの……」あれ?雅人?」
猛と良が現れた。ていうか、「お前なんか、トラックの……」の続きが超気になる!!何が言いたいんだ、お前は?
「げ!良?」
以外にも坂本さんが言った。
「む!お前は坂もっつぁん。どうしてここに?」
「その名前で呼ぶな!!」
「あの〜二人はどういう関係?」
俺はおそるおそる聞いた。
「あぁ、こいつとは小学校と中学校で同じクラスだったんだ。いわゆる幼なじみ。お前らは?……ん?待てよ。校舎裏の「伝説の樹」…男と女…赤くなった二人…まさか告白か!!?」
俺と坂本さんはどきっとなった。良はさらに追い討ちを仕掛けた。
「そうなんだろ?あ〜良いよな。雅人はモテモテで。俺も告白されてぇなぁ」
良はわざとらしく溜息をつき、首を横に振る。
「そういえば、何で坂もっつぁんは雅人に惚れたの?」
良のバカ!女の子に普通そんな事聞くか?ていうか、俺も恥ずかしいし。
言って欲しくなかったけど、坂本さんはテレながら言い始めた。
「それはね……。ある日、私は遅刻ぎりぎりで学校に猛ダッシュしてたの。そしたら転んで、足をくじいてしまったのよ……。その時!白峰君が現れて何も言わずに私の前にしゃがみこんでくれて私をおぶさってくれたのよ!!それ以来私は白峰君のことが好きになったわけよ」
「へぇ、こいつがねぇ……」
良は俺をチラッと見た。俺は頭の中で、そのことを考えていた。確かに、足をくじいたのか道路で倒れている女の子をおぶったことはある。しかし、その話には裏がある。実は俺もその時遅刻ぎりぎりで走っていた。そしたら、前の方に足を痛そうにさすった女の子がいた。俺は気の毒だなと思いつつ無視して学校へ行こうとした。その時!なんと俺の靴のヒモがほどけた。俺は結ぶためにしゃがみこんだらいきなりその女の子が俺の背中に乗ってきたのだ!俺は焦ったが、まぁいいかって感じでそのまま学校に行ったという訳だ。つまり、坂本さんのさっきの話は“完全に”勘違いです。
「あの〜―……」
俺が正直に言おうとしたら良が話しを遮った。
「雅人君は優しいですねぇ。そんな手段で一体何人の女の子を騙したのやら……」
良はそう言いながらも、「良一特製・八重高の全て」に俺たちのことを書き込もうとした。やばい!止めなければ!明日には全校生徒がこのことを知ってしまう!!
「コラ!良。なに書こうとしてんの!やめなさい」
俺より先に坂本さんが止めた。坂本さんの方が付き合いは長いから、良の事をよく知ってるようだ。
「へん!やめねぇよ!」
良は逃げていった。坂本さんはそれを追う。そこには俺と猛しかいなくなった。
「……良もバカだなぁ…」
猛がポツリと言った。
「え?何で?」
「知らないの?坂本さんて、女子空手で全国大会出場経験もある凄腕なんだよ?」
「え?」
あの顔、あの細い体でよくもまぁ……人は見かけにはよりませんなぁ
「あれだけギャップのある人も珍しいよな……」
俺は家に帰りながらまだ、猛の言ってた事を思い出し、つぶやいていた。
家に着き、ドアを開け、中に入る。ドアをあけると、なぜか玄関にナエが立っていてニヤニヤ笑っていた。
「そういえば、ここにもいたよ……ギャップの激しい奴…」
「ん?何か言ったか?色男」
「別に………。え?」
いろおとこ【色男】―好男子。美男。俗に言う、モテル男 広辞苑より 何でこいつが俺を色男って言うんだ?…まさか!!
「まさか、お前。知ってるのか?」
「何をだ?今日お前が女に告白された事をか?」
「知ってるじゃねぇか!!何で知ってんだよ!!」
「私は化けといえど猫だぞ?お前が教室の後ろでこそこそと読んでいた手紙を盗み見して、伝説の樹とやらに先回りして、樹に登って聞いていたのだ」
ナエがより一層ニヤニヤ笑う。あの時、上の方で樹がガサガサ音をたてたのはこいつがいたからか!
「てんめぇ……」
「おもしろかたぞ。「わわわ、ごめんと言っても嫌いな訳じゃないし、これから友達になればいいわけだし、ほ、ほら!まだお互いを良く知るべきだと思うんだよね。俺は、うん」だと!ハハハハハ。お前の慌てようといったら!ハハハハハ」
「この野郎!!」
俺はナエに飛び掛った。しかし、いつもの通り、軽くあしらわれ顔には無数の傷あとが……
これから俺はしばらく、ナエにこの事でからかわれ続けた。
翌日。
「オイ!見ろよ雅人!俺にもラブレターだぜ!」
見れば、確かに良の手にはラブレターが握られていた。良は飛び跳ねて喜んでいる。
「本当にお前宛か?」
「本当だって。ほら、」「前々から貴方が好きでした。放課後、体育館で待っています。貴方を想う女の子より」だって。ク〜、可愛い子だといいなぁ」
良はルンルン気分でスキップしながら自分の席に戻っていった。
良がそのラブレターは告白を無茶苦茶にされた仕返しに、と坂本さんが送ったニセモノだと気付くまでしばらくかかりそうだ。それまで、せいぜい夢を見ておきたまえ。
5話.あぁ金髪と関西弁
「ここやな……ここに白峰雅人がおるんやな…」
ドハデな金髪を頭に、関西弁を喋る男が八重高前に立っている。
金髪といえば関西弁、関西弁といえば金髪。この二つは切っても切れない関係。そう、まさに「花とミツバチ、男と女」(by良一)のごとく。
この男は確かに雅人の名前を口にした。さて、どんな関係が?
「お兄ちゃん!起きろ〜!!!」
いつも通りの朝。俺は飛び起きて、飯を食う。
「まったく、お兄ちゃんは朝寝坊しすぎだよ」
「しょうがないだろ。それが俺なんだから」
「なに訳の判んないこと言ってんのよ……。ホラ早く着替えて」
「はいはい」
俺はついでにナエの朝飯を持っていった。ナエは多分腹をすかしてるだろう。
「雅人!今日の朝ごはんは何だ?」
やっぱり
「ああ、これだよ。」
俺はご飯に味噌汁をかけたもの、いわゆる「ねこまんま」を出した。ナエの不満そうな顔に気付き謝る。
「あぁ、悪い。マタタビ忘れてたな。」
「バカにするなぁ!!」
ナエは俺にねこまんまを投げつけた。熱いです。
「お前は私を愚弄する気か?今時、こんな物、本当の猫でも食わんわ!!」
「じゃあ、食わなくても良いよ。せっかく持ってきたのに」
俺が床を拭いて、飯をもって行こうとすると、ナエは俺を止めた。
「まぁ、今日はそれで我慢してやる……」
俺は不満だったが、何か言うと絶対引っ掻いてくるので素直に渡した。
良と猛の声がする。さて、行こうか。
「おい、雅人知ってるか?今日、転校生でが来るみたいだぞ」
「はぁ?またかよ。鵺野も最近来たってのによ。」
「その転校生って男みたいだよ」
猛が言う。こいつも何気に情報通だ。
「つまんねぇな」
「まぁ、いい奴だったら良いけどなぁ」
学校に着き、教室へ。もちろん俺は今から睡眠時間だぜ。この時間が一番俺は好きさ……
俺は意識が遠のいていった。さぁ、夢の世界へレッツゴー!
「……と……さと……黒峰雅人!!!」
「ギャーー!!」
俺は先生にたたき起こされた。せっかく人が気持ちよく寝ていたのに。
「なんスか先生!?せっかく人が気持ちよく寝てたのに……」
「ほぉ〜逆ギレか?いい度胸だな」
「わわ、タンマタンマ!そんな腕ポキポキ鳴らさないで……ね?」
「まったく、お前って奴は……。こほん。今から転校生を紹介する。入ってきてくれ」
俺は、つまんなさそうだったから、また寝ようと机にうつぶせになった。
転校生が入ってきたようだ。ドアが開く音がしたから。
「よっ、しらみー。久しぶりやな。探すのえらい苦労したで、ほんま」
ム!この俺を虫みたいなあだ名で呼ぶ関西弁は!もしかして!
俺は顔をガバッと上げて、そいつを見る。間違いない。なんか金髪になってるけど、紛れもなく
「仁!?本当に仁なのか??」
「覚えとったんかい?良かったわ〜。せや、ワイは紛れもなく阪印仁(さかいん じん)や。」
「君たちは知り合いなのか?」
先生が皆を代表して、尋ねる。
「せや、こいつ昔、関西に住んでてん。そん時の親友や、ワイらは。な、しらみー?」
「その名前は虫みたいだからやめろって昔から言ってるだろ!」
「おぉ、嘆かわしい。昔はあんなにキレイやったお前の関西弁が、今じゃ東京かぶれの標準語になっとる。オヨヨ…お母さん悲しいわ…」
「誰が母さんじゃ、誰が!」
「何言ってんねん。誰があんたを産んだか忘れたの?お母さんがおなかを痛めて産んだのよ?」
「気持ち悪いんじゃ!ボケ!」
気付いたらクラス中が笑っていた。俺と、仁は驚いて目を丸くする。
「なんか君たち漫才みたいだよ」
猛が言った。確かに俺らはボケとツッコミをしてた気がする。やっぱり、俺は関西人か……。そう思ってしまった。
休み時間。仁は女子からの質問攻めにあっていた。仁は顔も良いからな。それに金髪が良く似合ってる。
「チッでれでれしやがって……」
どこにでもいる、クラスの不良が仁をにらんでいた。まぁ、不良だし顔悪いしひがむのも無理ない。
それだけなら良いにしても、そいつらは仁の方に向かっていった。そして、わざと肩をぶつける。
「お〜いて。おい、金髪。慰謝料払ってもらおうか?」
「あん?そっちからぶつかってきといて、何言ってんねん?アホと違うか?」
「あんだと〜!!」
不良は仁の顔を殴った。仁は口から血を流す。あ〜あ、俺知らね
「殴ったな…?」
「何だよ殴られたのが気にくわねぇのか?何ならもう一発殴ってやるか?」
「先に手を出したのはお前や。やから、俺が手を出しても文句は無いな?」
「あん?何言ってんだお前!!」
不良はもう一発殴りかかる、だが仁はそれを受け止めた。
やめときゃ良いのに、もうダメだな。なにせ、仁は………
「調子に乗るんやないで。」
仁は不良のアゴにアッパーを食らわせた。アゴにパンチを入れられると脳に直接……。面倒くさいしいいや…。まぁ、なにせ仁はボクシングで『西日本新人王』だもんなぁ……。プロ目指してるらしいし
「ワイと勝負するのは十年早いわ。出直して来いや、ボンクラ!」
良がふざけて仁の手を掲げてる。仁はまんざらでもないようだ。
何はともあれ、俺の高校生活はまた大きく変わりそうだ。ナエだけで十分なのに……
6話.良の恋
*注 今回の話は良の視点で進めていこうと思います。尚、この話の時点ではまだナエは学校に来ていません。
恋。それは生きとし生けるもの全てに許された最も素晴らしい感情。
恋をした相手に自分の思いを伝える事、それを告白と言う。今日ここにもまた好きな人に思いを伝える少年がいた。
「俺と…俺と付き合ってくれ!!」
俺は決死の覚悟でそう言い、お辞儀をし相手の返事を待った。
「ゴメンね。私他に好きな人がいるの」
かる〜く言われちゃいました。……あれ?目から汗が流れてくる。
「そ、そっか……」
俺は走って逃げてった。これで何人目だ?
「また、ふられた。こうなりゃ、小説投稿掲示板【登竜門】に書いてあった、何とかアカデミーに行くしかねぇ……」
俺は教室の自分の席にうつむけになってブツブツ言っていた。
「何言ってんだ?お前」
「よう、雅人……またふられちまったぜ」
こいつは白峰雅人。俺のダチだ。
「本当?何人目?」
こいつは黒峰猛。こいつもダチだ。
「え〜と、幼稚園から数えて49人目かな……?」
「そんなにいるんだ……ていうか幼稚園の時の人とか、全員覚えてるの?」
「当たり前だぜ!!」
俺は椅子から立ち上がった。そう、今でも鮮明に思い出せる。
「明美ちゃんは目の大きな可愛い子だったし、里見ちゃんは長い髪の子だったなぁ。直子ちゃんは笑い顔が可愛かったし、彩ちゃんは甘えんぼだったなぁ……」
「もう……いいよ…」
「え〜これからがいいところなのによ」
猛と雅人は呆れた顔で俺を見ている。なぜ?
「まぁ、次ふられりゃ記念すべき50人目だな?」
雅人がニヤニヤしながら言う。小憎たらしいやつめ。
「けっ、次で連続ふられ記録ストップさせるからそうはならないぜ」
「そうなると良いな」
「はぁ、とは言ったものの、そう巧くいきますかねぇ」
俺は溜息をつきながら家路を帰っていた。気分転換に公園にでも寄ろうと思い、公園にいったその時。
「あ」
俺は体の中に電気が通ったような感覚がした。今迄で始めての感覚だ。
俺の視線の先には一人の女性。ベンチに座り本を読んでいる。髪が黒く、肩まである。顔立ちもきれいで、まさにお嬢様みたいな?
(あの子だ……。きっと、あの子が俺の運命の人なんだ!)
俺はその後しばらく遠くから彼女を眺めていた。
俺はその日からその子のことが忘れられなかった。家に帰ってもその子のことばかり考えていた。
ノートに“あの子は俺が好き”と何回も、何回も書いた。断っておくが俺は変態ではない。そのノートを母ちゃんに見られたとき、俺は死のうかと思ったが、それは別の話。とにかく、俺はその位あの子を好きになってしまった。これが、きっと恋なんだ。本当の恋なんだ!!
「はぁ……」
これで何回目の溜息だろう……。俺は学校に来ても欝な状態だった。
「ねぇ、良、明らかにおかしいよ?」
「あぁ、確かに変だな」
何か俺の噂をしているようだ。けど、今の俺にはどうでもいいこと……
「おい、良。どうしたんだ?元気ないじゃねぇか」
「フッ、お前らには判るまい」
そう、こいつらのようなガキには俺のような大人の恋は判らんだろうよ……
「変な良」
二人は去っていった。
放課後、俺はいつものように公園に向かった。後で二人に聞いたが、俺の様子がおかしいからってこのとき後をつけてたようだ。
(あぁ、今日もあの人がいる……)
俺はベンチに座るあの人を眺めていたら、後ろから声が聞こえた。
「よっ良。何見てんだ?」
猛と雅人だ。二人は俺が見ていた方向を見る。俺は止めようとするが遅かった。
「んあ?女か?良お前まさか……!」
「まさか!」
猛と雅人が同時に言う。俺はハラハラしていた。
「あの女と友達なのか?」 「あの子が好きな……って、え〜!!雅人マジで言ってんの?」
「あぁ、違うのか?」
「「ニブッ!!!」」
「??」
まさかこいつがこんなにおバカちゃんだとは……猛でさえ判ってるみたいなのに。
「ふ〜ん、ま、良頑張ってね」
猛はまだ頭に?を浮かべている雅人を引っ張っていった。
俺はその言葉で吹っ切れた。告白しよう!!
俺は急いで花屋に行きバラの花束を買った。さぁ、準備は万全だ。
公園に行くと、あの子はまだいた。俺は近づいていった。
「あの……」
「何?」
あの子はこっちを向いた。ヤバイ、キンチョーしてきた。
「前から好きでした。受け取ってください!!」
「え?」
相手の困った顔が判る気がする。
「何も言わずにこの花束を!」
「君、何か勘違いしてない?」
「は?」
俺は顔を上げる。
「俺、男だぜ?」
「……はぁ?」
よく聞けば、そいつの声は少し低く女の声ではない。よく見ればそいつののどにはのど仏が出来ていた。――俺、男だぜ?――その言葉が頭の中で響いた。
「ほ、本当に男?」
「おう」
俺は急に恥ずかしくなった。俺は現実から逃げるため相手に言いがかりをつけた。
「紛らわしい髪型してんじゃねぇよ!この×××野郎!!」
「何だと!お前が変な勘違いしたんじゃねぇか!お前は、××なんじゃねぇのか?!」
「何だと!」
「何だよ!!」
俺たちはバトルを開始した。
数分後
俺は公園の真ん中で大の字になって、鼻から血を流して気絶していた。情けねぇ〜〜〜。嗚呼、俺の記念すべき50人目の失恋相手はなんと男だとは。誰がこんな展開を予想できただろう?おのれ、作者め!
「あの時感じた運命はニセモノだったのか……」
もし、あの感覚が本物なら、俺はその道を進まなければならない。
そう、つまりホ〇だ。絶対嫌だ。男に興味はねぇ。
あの、大失恋(大勘違い)から、一週間がたった。俺は学校に行くため雅人の家へ猛と共にいった。
今日は珍しく起きていたようだ。しかし、それでも遅い。
「御待たせ」
「ったく、毎度毎度、遅いんだよお前は!明菜ちゃんに迷惑だろ!」
「まったくその通りよ。良一くんの言うとおりだわ」
家から奴の妹の明菜ちゃんが出てきた。まったく、奴の妹にゃもったいないくらい可愛い。ゆくゆくは俺が……
「お、明菜ちゃんおはよう」
「おはよう。じゃあ、お兄ちゃんよろしくね」
明菜ちゃんはまた家に入っていった。
「うん、明菜ちゃんやっぱり可愛いなぁ。誰かさんの妹にはもったいねぇぜ」
「悪かったな……ていうか明菜に手ぇ出すなよ?」
雅人が俺をにらんで念を刺した。俺は何も答えない
「あ、そうだ。雅人知ってる?きょう転校生が来るらしいぞ」
「おい、そういう話題は情報通の俺からだろう?」
雅人と猛は俺を無視して話しを続けた。俺がその情報を言うつもりだったのに……。猛め、俺と情報力で競う気か?
「へぇ、男?女?」
まぁ、俺もそこまでは知らない。
「女の人らしいけど」
何でお前は知ってんだよ?まさか……情報力でも負け?そしたら俺の存在意義がなくなってしまう。
「マジで!?楽しみだな。美人だといいな〜」
だが、俺はこちの方が気になった。
俺はその転校生に運命の出会いを感じていた。
7話.阪印兄弟・前編
「しらみーしらみー」
「何だよ仁」
朝いつものように机で寝ていたら、仁が話しかけてきた。
「宿題写さして〜な」
「……」
一発殴ってからまた寝る。ちなみに仁はボクシング部。
「何すんねん!」
「うるさい!俺の睡眠の邪魔するな!宿題くらい自分でしろってんだ」
「や〜か〜ら、昨日はマイク・タイソン対曙の試合を夜遅くまで見てたんや。せやから、する時間なかったんやで」
そ、そんな面白そうな対戦カードがあったとは……。曙のおっさん、ボブ・サップへの挑戦で懲りたと思ってたのにな。やっぱ今回も1R負けか?
「曙が勝ったんやで」
「え〜〜!!!うそ〜ん!?」
なんと、曙がマイク・タイソンに勝ったらしい。バカな……
「ほんまや。見事な1R勝ちやったで」
しかも、1R勝ち
「というわけで宿題見せて〜」
「関係ないだろ!!」
「お、えぇ突っ込みやな」
話にならないぜ。俺と仁が話してる所へナエがやってきた。
「お、鵺野。おはようさん」
「おはようございます」
ナエはぺこりとお辞儀をして、笑いながらあいさつを返す。猫かぶりか
「白峰君もおはよう」
「おはよう……」
俺は適当に返事を返した。ん?殺気……?
「雅人ーーーーー!!!」
良が俺に向かって飛び蹴りをしてきた。俺は豪快に吹っ飛ぶ。
「何すんだ!」
「お前こそ鵺野さんになんて口利くんだ!せっかく鵺野さんが天使のような笑顔であいさつをしてくれたのに、お前と言うう奴は〜〜!!」
良は目の中に炎を燃やして、俺に説教をする。おれが不満そうな顔をしていると、殴りかかりそうになったが、慌てて猛が止めた。
「アッハッハッハ、おもろい奴らやな」
「ケッ、いい迷惑だぜ。ったく良め、あいつの本性も知らずに……」
「本性?」
仁が尋ねてきたので、俺は慌てる。
「いや、別に……」
「さて、と。帰るとしますかね」
授業も全て終わり、下駄箱で靴を履き替え、帰ろうとする。
「ちょい待ち!」
仁が俺の肩をつかむ。何か用か?
「何だよ仁?何か用か?」
「ちょっと帰りにワイの家寄っていかへん?ちょっと会わせたい人がおるねん」
「別にいいけど……」
家といっても、こいつは引っ越したてだからアパートみたいなもんか?
仁は誰かをきょろきょろと探していた。
「あ、おった。お〜い鵺野。ちょっとちょっと」
仁はナエを呼び、俺と同じように家に誘った。何が狙いだ?
歩いて20分ほどで、仁の家に着いた。俺の予想とは違い、大きな和風の一軒家だった。玄関には門までついている。こいつの家がこんな上流階級の家だとは……。人は見かけで判断してはいけませんよ皆さん
「ささ、入って入って」
仁に進められ中に上がる。玄関も広い、俺の部屋くらいある。部屋の数もよく判らん位ある。仁は一つの和式の部屋に俺たちを案内した。
「ここにおるんや。お前らに会わせたい人が。お〜い、兄貴、連れてきたで」
「お〜判った。入ってや」
中から声がする。許可がでたようだ。そういえば、こいつは兄貴がいたな。もう、20になるんだっけ
「この二人や。鵺野ナエと白峰雅人」
中にいたのは、仁と対照的な銀髪の男だった。仁より更に軽そうな感じがするな。部屋の中の兄の前にはなぜか紐がぶら下がっていた。
「で、どうや兄貴?」
仁が聞くと、仁兄は重要な事に気付いたような顔をして、ぶるぶると体を振るわせた。
「こ、こいつは……」
「やっぱりそうなんか兄貴!?」
仁が尋ねると
「めっちゃ可愛い子やないかーーーーー!!!」
そう言って仁兄はナエに近づいた。
「好きなタイプは?彼氏おる?こいつとの関係は?スリーサイズは?」
などと、様々な質問を浴びせる。仁は兄貴の頭をハリセンでどつく。
「兄貴っ!!」
「すまんすまん。可愛い子を見るとつい、な」
「まったく……。ホラ兄貴、本題に」
「あぁ、せやな」
兄貴はゴホンと咳払いをすると、まじめな表情で話しだした。
「自己紹介が遅れたがワイは阪印勝之助(さかいん かつのすけ)っていうんや。勝っちゃんでええよ。」
勝っちゃんは俺とナエに視線を向ける。
「鵺野さん言うたな、あんた可愛いな……冗談や冗談。せやからそんな物騒な物持たんといて仁」
仁は鬼の形相でハリセンを振りかぶっていた。
「さて、と。鵺野さん、あんた妖怪やろ?」
「! さ、さぁ、何のことかしら?」
ナエも俺も驚いた。まさか、こんな事を言われるとは
「隠しても無駄や。その証拠にホレ!」
勝っちゃんはマタタビをナエの前に投げた。まさか、こんな手に引っかかるわけが
「………」
ナエはマタタビとメッチャにらめっこをしていた。目がギンギラギンだ。
「ほらな。どこの世界に、マタタビをそんな物欲しそうな目で見る女がおるんや」
ナエは観念したように、息を吸い、素の状態で話す
「なぜ、私が妖怪だと判った?」
ナエの迫力、変貌振りに少し驚いたようだが、勝っちゃんは冷静に話す。
「そんな、怖い顔しんといてや。別にワイはあんたを退治しようなんて思てないんやから」
「兄貴?」
仁が話に割り込んでくる
「あぁ、仁。この猫さんはそないな悪い奴やない。退治しんでも問題はないわ」
仁はホッと胸をなでおろした。実は阪印家は代々続く由緒正しき妖怪退治屋なのだ。結構儲かるらしく、この二人の稼ぎだけでこのでかい家を建てたらしい。なんでも、仁がナエの事に気付き兄に頼んだらしい。「学校に妖怪がおるんやけど、悪い奴には見えへんのや。兄貴見てくれるか?」と
「なら、俺たちに何の用ですか?」
俺はまだ、兄の前にある紐が気になっていた。
「あぁ、あんたらが出会ったいきさつを聞かせてもらおか?」
俺とナエは話しだした。あの日、山で出会ったこと、俺がナエを助けたこと、ナエが仲間を裏切ったため里に帰れず俺の家に住むことになった事を。
勝っちゃんは真剣に全部聞いてくれた。
「ふむ、大体判った。んで、ナエちゃんにまだ、追ってはきてないんか?」
「恐らく来ない。普通、妖怪が仲間のいる里を離れたら生きてはいけない。だから、里の物も裏切り者は追わず、野垂れ死にさせるのだ。よもや、里の物は私が人間と共に暮らしてるとは思うまい」
「そうか、では……」
その後も勝っちゃんは俺たちに2,3質問をした後、今度は気をつけることなどを言ってくれた。その話も終わり、俺はそろそろ帰ろうかと思った。けど、俺はまだあの紐が気になっていた。
「じゃあ、話もすんだようなので、俺たちはそろそろ帰ります」
俺は立ち上がり行こうとする。
「ちょっと待ちぃや」
勝っちゃんが俺を引き止める。俺は振り返る。
「このまま帰さへんで」
勝っちゃんは残酷な笑みを浮かべ、さっきから気になっていた紐に手を伸ばし……思い切り引いた。
「ウワッ!!」
俺は目の前が真っ暗になった。そして、その次の瞬間、尻餅をついた。
上の方に、明かりが見える。そして、勝っちゃんの顔も。
どうやら、俺は地下に落とされたらしい。
8話.阪印兄弟・後編
「おい!俺をどうする気だ!?」
ずっと上の方に見える勝っちゃんもとい勝之助に尋ねる。
「フフフ……。さっきはあんな事言うたけど、やはりナエ君は退治させてもらうわ。だって、わいらは妖怪胎児屋やし」
「! なんだって!?」
「そういうことや」
仁もひょっこりと顔を出した。
「じゃあな」
そういって、穴のふたを閉じようとした時
「「ギャーーー!!」」
二人の悲鳴が聞こえた
「ほんまスイマセン。軽い冗談だったんです……。ほら、その証拠に、落とし穴のカベにはちゃんと上に上がるはしごを用意してあったでしょう?」
「まったく……。呆れた兄弟だ」
実はアレは大掛かりなどっきりだったのだ。ナエと俺を動じにビビらせて、大笑いしようと言う、何ともあくどい計画だった。
しかし、退治する、と聞いたナエが仁と勝っちゃんに先に攻撃をし、あっけなく計画は失敗と言うわけだ。
「何でこんなことしようと思ったんだよ?」
「いやな、兄貴が二人とは始めて会うんだから、何かインパクトを与えようとか何とか言いおって、こういうことを計画したんや」
「あ、仁!ワイ一人のせいにする気かいな!?」
「実際せやろが!」
「ちゃうで、ナエちゃん、雅人君。こいつが、「あの二人、いつも真顔でおるから、一回マジでビビったとこみたいわ」とか言いやがったんやでさ。つまり、言いだしっぺはこいつや!」
その後も「ちゃうわ!」や「お前のせいや!」とか言い合う、レベルの低い兄弟げんかがしばらく続いた。さらに「死ね!」などの暴言も出てきた。
俺がとめようと思ったら、ナエが立ち上がった。
「う・る・さーーーい!!!この…たわけどもがっ!!」
ナエの鶴の一声で二人はぴたっと止まった。
「さっきから聞いていればなんだ。お前が悪いなどと言い合って!しかも、死ねだのなんだの、そんな口は二度と利くな!いいな!」
「でもよ、ナエちゃ……」
「黙れっ!!」
勝っちゃんが反論しようとしたがナエにぴしゃりと抑えられた。
「責任を取って、今後一週間私の昼飯をおごれ!わかったな!」
マテ 何かお前に都合のいいほうに行ってないか?
「はい、わかりました」
いいんかい!
もう、すっかり夜になっていた。俺たちは街灯のおぼろげな光の下を急ぎ足で帰っていった。
俺は、阪印家で気になっていたことをナエに尋ねてみた。
「なぁ、何でお前、あの二人が喧嘩したらあんなに怒ったんだ?」
ナエは水を被ったような驚いた表情をした。
「……」
ナエはしばらく黙ったままだった。
「あ、言いたくなかったら別に……」
「私には兄弟が二人おったのだ。」
ナエは珍しく過去のことを話し出した。俺は真剣に耳を傾ける。
「しかしある日、殺された。何者かにな……。私はその時、狩から帰ったばかりで、返り血を浴び、真っ赤に染まっていた。私は兄弟の死体の前に呆然といた。そこを、村人に見られ、勘違いされ、あの日、お前と山で出会ったというわけだ」
「そんなのおかしいぜ!調べれば簡単に判ることだろう?」
「無駄だ。我々は仲間を殺した者は決して許さない。だから、そんな所を見られれば裁判など関係無しに即、犯人になるのだよ……」
ナエは少し淋しげな笑みを浮かべた。
俺たちはその後何も喋らず家の前まで来た。
「なぁ……兄弟の事だけどよ。やっぱ淋しい……?」
「………無論だ」
「なら……」
俺はもう一度大きく息を吸った。
「ならよ、うちの妹いつでも貸すぜ。お前、化けるなりなんなりして、たまには兄弟のこと思い出せよ。そのためには家の小うるせい妹は貸し出すぜ」
俺はにやりと笑って言った。ナエはしばらく呆気にとられていたが、ナエも笑う。
「……すでに……貸してもらった」
「え?」
「すでに何度かお前に化けて、戯れた事がある」
「え〜〜!?」
だから、最近、何も記憶に無いのに妹が怒ってる時とかあったのか。俺は思わず吹き出す。
「ハハハッ、お前一体何したんだよ?」
「お前には関係ない」
「あんだとっ!」
「なんだ……?」
ナエの冷たい視線に俺はたじろぐ。けど、これがいつものナエだ。
俺たちは別々に家に入っていった。
―――やぁ、こんな話しを読んでくれる心優しい読者諸君。私はこの話の作者だ。もうすぐ、この話は終わりを迎える。ナエと雅人はどうなるのか。出来れば、楽しみに待っていてくれたまえ。では、また次の話で―――
終章.それは突然の雷のようで
「ム、雅人っ!ここが、シンジュクか」
「あぁ、そうだ。ここが日本で一番の都会だよ。」
俺たちは今電車の中、新宿に向かう理由は昨日の晩のこと――
俺とナエは俺の部屋でゴロゴロとしてた。俺は良に借りたゲームを、ナエは何かの雑誌を読んでいた。
「雅人よ……」
「あん?何だよ?かしこまった顔をして」
ナエがもじもじと話しかけてきた。こんなナエを見るとは、正直キショいぜ。
「ここに行ってみたいのだ」
「何だそれ?」
ナエが持っていたのは新宿の雑誌だった。俺が去年の修学旅行のときに貰った物を見ていたのだ。
「なんでも、ここは日本で一番の街だそうだな。ぜひ、行ってみたいのだ。」
「ヤだよ。交通費だってバカになんねえし、どうせお前金ねぇんだろ?」
「金はない。が、行きたい」
「バカなこと言ってんじゃねぇよ……」
俺はポーズをかけてあった、ゲームの画面を元に戻し、再びゲームに没頭する。
「行ってみたい!」
「ダメだって言ってん……だ……ろ……」
ナエはギラギラと光る爪を出して、その爪を舌でレロンとなめ、残酷な顔でこっちを見た。嗚呼、神サマ……。僕に選択権は与えらないのですか?
「行・き・た〜いな」
口調とは違って、何かこう、冷たい物が背筋を伝った
「じゃあ……明後日の日曜な…」
また、大きなため息がボクの口から出ました。最近多いです、神サマ。
「あんな雑誌さっさと捨てりゃよかったよ……」
「何か言ったか?」
「いえ……な〜んにも」
そうこうする内に電車は新宿に着いた。まったく長旅だったぜ。腰が痛い。財布が軽い……
「す、す、すごいな!む、雅人。あの服を着た人形は何だ?」
「あれはマネキンってんだ。服を盗られないように人を怖がらす物さ。」
「ほう、ではあの赤く光りながら、けたたましい音を出して走るあの車は?」
「あれは、パトカーつって目立ちたがり屋が乗る、改造車さ」
「ほほう ! 雅人見てみろ!あそこの飲食店の前に食い物があるぞ!盗まれぬのか?」
「あれは貧乏人用のただ飯さ。あそこの店の奴らはいい人なんだよ」
うそばっかナエに教えて(だが、あながち間違いではない。少なくとも、俺はレストランの飾りの食品を食おうとしたことがある)ナエは全部信じている。……面白い!!
「雅人。ここだ。エイガカンという奴は。入ってみようぞ」
「え、オイ待てよ。俺そんな金……」
ナエは嫌がる俺をズルズルと中に引っ張っていった。もう、勘弁してください。
結局、中に入ってみたのは、「ブラザーソウル」と言う映画だ。兄弟を殺された者が、復讐をするというものだ。ナエは終始、目を離さずジッと見ていた。俺はそんなナエをたまに横目で見ていた。しかし、俺はこの時まだ、この先あんな事が起きるなんて夢にも思って見なかった。
「中々面白かったな?」
「……」
ナエは黙っていた。死んだという兄弟を思い出したのだろう。
帰りの駅への道の信号を渡った。
「あ〜、帽子が」
子供の帽子が突風で飛ばされ、歩道の真ん中に落ちた。
「あ〜ナエ。ちょっと待ってて」
俺はその帽子を取りに戻った。信号が点滅し始めた。俺は気付いてなかった。俺は、帽子を手にとって、その子に手を振った。信号が、赤に変わった。
「!」
カーブを曲がって、大型のダンプが猛スピードで突っ込んできた。俺は呆然として、動けなかった。
「雅人!!」
何かが俺の背を押した。何か、暖かい感触がした。それが、ナエの手だと気付いたのはそのすぐ後のことで。その後のことは全部スローに感じた。
俺は強く背中から落ちた。けど、撥ねられるより全然ましだ。けど、代わりにナエが撥ねられた。何で?どうして、ナエが?俺じゃなくて、何でナエ?ナエが俺を突き飛ばして、代わりに撥ねられたのだと気付くまで、しばらくかかった。
「大変だ!女の子が、車に撥ねられたぞ!!」
誰かがそういって、救急車を呼ぶ。しかし、車に引かれたのは女の子ではなく、一匹の猫だった。群衆は首をひねる。しかし、猫でも車に引かれたのだ。すぐに、救急車で病院に運ばれた。俺は飼い主という事で同行した。
その時、にわかに空が曇り、雨が降ってきた。一度だけ大きな雷が辺りに轟いた。
「……」
俺は集中治療室の前の扉で、結果を待っていた。治療室のランプが消え、医者が出てきた。
「先生、ナエは……ナエはどうなんです?」
医者は下を向き、首をふる。
それだけで、判った。かすかに、治療室からは一定の電子音が聞こえる。ピーと。医者に掴みかかり、ありったけの文句を言おうと思ったが、やめた。この人は懸命に救おうとしてくれたんだ。それに、元はと言えば俺が悪い。俺は振り返り、走った。
「しらみー。ナエちゃんが事故ったって……オワッ!!どないしたんやあいつ……」
「君は彼の知り合いか?ちょっと彼に言って欲しい事があるんだ」
「何や?」
仁は医者の近くにいきそのことを聞いた。
「実はあの猫は―――――」
「………!! ほんまか先生」
次の日、別段変わった様子もなく学校に向かう。
俺がナエと住んでいると知っている人はいない。だから、誰も変化など気付かない。はずだ。
「お兄ちゃんどうしたの?元気ないよ」
「……なんでもねぇよ」
学校でも、いつものように寝れなかった。何か眠れなかった。
「あれ、雅人、鵺野さんなんできてないの?」
良はやっぱり気付いて俺に聞く。
「……知らね」
知ってた。本当は知ってた。
俺は放課後、屋上へと向かった。別に自殺とかじゃない。ただ、行きたかった。
「………」
フェンスに手をかけて、遠くを見ていた。すると、仁が上がってきた。
「何や、てっきり泣いてるのかと思ったで」
「俺が泣くかよ。骨折した時も、親父とけんかした時も、お袋が死んだ時も泣かなかったんだぞ。」
沈黙。俺たちはしばらく黙っていた。
「……なぁ、雅人知ってるか?猫ってのは死期を悟ると、飼い主に見つからないようにどこか遠くへ行って、一人で死を迎えるらしいで」
何言ってるんだこいつ?
「あのなぁ、あのあと医者に聞いたんやけどナエちゃんは……伝染性腹膜炎って言う不治の病気でもう長くなかったらしいで」
「な!」
俺は驚いた。そんな、素振りすら見せなかったのに。ほっておいても死んだというのか?
「けど、おかしくないか?ナエちゃんは病気やったんにお前んとこ離れんかった。多分、ナエちゃんはお前のことが……」
仁はその先を言わなかった。俺は、その言葉を聞いた途端、今まで必死に堪えていた物が関を切ってあふれ出た。ポロポロ、ポロポロと。
それに気付いた仁は優しく微笑み、こう言う。
「何や、雨が降ってきたみたいやな。せっかくお前の泣き顔見れる思たんに」
空は晴れていた。だけど、俺の目から雨が止まらず流れ出ていた。
おい、ナエ。俺はおかげでピンピンしてるぞ。お前が、いなくなって淋しがると思ったら大間違いだ。誰が、淋しいもんか!誰が……
空に浮かぶ雲はまるで猫のようで―――
〜エピローグ〜
私の名前は白峰雅人。株式会社シラミネの社長である。
大学を卒業して、作った会社が中々当たって、今は結構な金持ちだ。
しかし、昔の友人とは今でも付き合っている。やはり、特に良と猛とは。毎日が仕事で大忙しだ。
「社長急いでください!」
彼女は秘書の白峰明菜。妹です。細かなところも気のつく、頼もしい秘書だ。
私は外に待たしてある車に乗り込む。私は社内でノートパソコンを開き、仕事ではない物を打ち込んでいく。
「あら、社長。また、例の小説を書いているのですか?」
「あぁ」
私は今小説を書いている。私の過した夢のような高校生活のことをだ。
私はこの小説にフィクションと付けるつもりは無い。このことは紛れもなく真実だ。
私は書き出した。“猫と”共に過した高校生活のことを。
私の名前は白峰雅人。“猫と”共に高校生活を過した、たぶんで世界でただ一人の社長だ。
―完―
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2004/04/18(Sun)10:05:34 公開 / 九邪
■この作品の著作権は九邪さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
こんにちわ。九邪です。
終わりました。終わらせました「猫と」
あの作者は雅人本人だったんです。大きくなった雅人が自分自身ことを書いたという事です。
だから、自分の視点で書けたんです。
終わってみたらあっという間だったなぁ(遠い目)まさか、こんなにもレス来るなんて……(またも感涙)
さて、新作の予告を。
今度は恋愛系(?)を書こうと思ってます。今度はまじめな内容です。少し暗め。
題して「死のうとした男、生きると決めた女」です。
恋人を失った彼がとろうとしたた行動は自分も彼女のところへ行く事。
家族を失った彼女がとった行動は家族の分まで自分が歩む事。
正反対の方向に歩み始めた二人は、ある日出会った。そこから始まる、二人の道。
二人はそこを歩むのか、それともまた、別々の道へと行くのか。
と言う内容です。乞うご期待。宣伝してよかったのかな?
猫とを読んでくれた皆様ありがとうございました。
できればまたお会いしましょう。See you next time.(^_^)/~
P.S. 伝染性腹膜炎という猫の病気は本当にあります。
早期発見が大事だそうなので、猫を飼っている方は気を受けてください。
お腹に水が溜まって膨れるそうです。
お腹がデブデブな猫は飼い主が気付かない事が多いそうなので、気をつけましょうね。
※一部修正しました