- 『流れ星の笛』 作者:宮沢 / 未分類 未分類
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原稿用紙約9.6枚
序
この地球上にある「生命」とは、何処から来たのでしょう。
神様が、地球上にお作りになられたのでしょうか?それとも、何処から来ることもなく、勝手に、いつの間にか地球上に在ったものなのでしょうか?
まだ解っていないことについて……誰もその答えを知らないことについて……勝手にその答えを想像するのは自由です。そして私は、この答えについて、こう考えます。―地球上にある生命は、他の星から来たのだ―と。
一、
今夜もまた、笛の音が聞こえます。カロンは、この音が聞こえると、必ず流れ星がやってくることを知っています。そして、この音が聞こえるのは、カロンだけであるということも。
笛の音がはじめて聞こえたのは、カロンが四歳の時のことでした。カロンは両親を早くに亡くし、お祖父さんに育てられました。
冬のある晩、お祖父さんに絵本を読んでもらっていると、何処から聞いたことのないメロディーが聞こえてきました。それを奏でている音もまた、聞いたことのないものでしたが、笛のような音でした。
「お祖父ちゃん、笛の音がするよ」
お祖父ちゃんが絵本を読むのを遮って、カロンはお祖父さんに話しかけました。
「おや、お祖父ちゃんには聞こえないがね。お祖父ちゃんもそろそろ、お耳が悪くなってきたんだろうね。ご近所に笛を吹く人がいるのかな」
読むのを遮られたお祖父さんは、一寸むっとして答えました。
「お嬢様はお耳がよろしいのですね。私にも聞こえませんよ」
女中も言います。
でも、カロンの耳には確かに、はっきりと聞こえるのです。聞いたことのない、澄んだ音……。カロンは庭に飛び出して、笛の音に耳を傾けました。すると黒い空に一筋、白い流れ星が通りました。
「お祖父ちゃん!流れ星!」
「珍しいね。お願い事はしたかな?」
なんということ!カロンは流れ星に夢中で、お願い事をすることに気付かなかったのです。そして、笛の音がもう聞こえていないことにも……。
それから、笛の音は時々聞こえるようになりました。そして笛が聞こえると、決まってあの白い流れ星が通るのです。
何度言っても、お祖父さんも女中も、信じてはくれませんでした。でも、カロンには聞こえるのです。
いつしか、笛の音がすると、庭に飛び出して流れ星にお願い事をすることが、カロンには当たり前になりました。
そして今夜も、その笛の音は聞こえたのです。
二、
カロンは今夜も、いつもと同じように庭に出て、流れ星を待ちました……といっても、流れ星が通るまで、そう時間はかかりませんが……。
お願い事は、もう決めてありました。叶えたいお願い事は一つだけ……年に三、四度も機会はあるというのに、そのお願い事を三回唱えることができ
たことがないのです。
そして、流れてきた星に、いつものようにお願い事を唱えました。
ところが、今日の流れ星はいつもと違いました。いつもなら、お願い事を三回唱え終わる前に……すぐに消えてしまう星が、今夜はお願い事を三回唱えても消えないのです。
(これはきっと、神様が私のお願い事を叶えてくださるってことなんだわ!)
そう思って、消えない流れ星を見続けて居ました。
すると……どうでしょう、流れ星は少しずつ大きくなってくるのです。カロンも、これは不思議だと思い、お祖父さんのいる部屋に駆け込みました。
「お祖父ちゃん! 流れ星が大きくなってくるの!」
本を読んでいたお祖父さんは、突然のカロンの声に驚きながらも言いました。
「ほう、不思議なこともあるもんだね。でもカロン、夜に大きな声を出すのはいけないよ」
カロンは少し、しゅんとして部屋を出ました。
(お祖父ちゃん、また信じてないんだわ!)
さて、流れ星はどうなったでしょうか。カロンがまた庭に出て見てみると、さっきよりもまた少し、大きくなっているじゃありませんか。いえ……よく見ると、星が大きくなっているのではなくて、流れ星がこちらに向かってきているのです。
「ぶつかっちゃうじゃない! だめよ! こっちに来ては!」
と、どうでしょう。カロンの声が聞こえたのか、星はそのまま向かってく
ることはなく、少し逸れていきました。カロンの家の裏山の方へ……。
「裏のお山に落ちる気かしら!? あぁ、どうしよう! お山がなくなっちゃうかもしれないじゃない!」
カロンは、裏山の見える窓へ走りました。女中の「家の中を走ってはいけません!」なんて言っている声が聞こえた気もしましたが、カロンは聞こえないふりをしまして走りました。こんなとき、広い家は不便なものです。
裏山を見ると、もう星は裏山にぶつかろうとしていました。
「あぁ! もうだめだわ! なんてこと!」
カロンが嘆き、目を閉じ耳を塞いだそのとき、辺り一面を真っ白にするような光を放って、星は裏山にぶつかりました。強烈な光が、カロンの目蓋を押し上げてカロンの目に入ってきます。
しかし……どんなに待っても、ぶつかったときの大きな音はしません。光が治まっても、衝突したと思われるような音はありません。
カロンが恐る恐る目を開けてみると、ぶつかったはずの星はどこにもありませんが、裏山の一部が真っ白い光を放っています。
「これは大変! あそこに落ちたんだわ!」
カロンは自分の部屋へ行き、コートとランタンをひったくると、霜の降りた道を、裏山へ走りました。
三、
「何処に落ちたのかしら。この辺りのはずなんだけど……」
白い息を切らして低い山を駆け上り、さっき光っていたはずの場所へ来ましたが、何もありません。それどころか、さっきまで光っていたはずの所も、もうあの白い光を放ってさえいないのです。
「夢なんかじゃないはずよ! 私、この目で見たんだから!」
と、落ちた星を探し回るカロンの前に、小さな縦穴がありました。
「いつのまに、こんな穴ができたのかしら? この前来たときにはなかったわよね。まさか、あの星が作ったなんて……」
光っていたのも、ちょうどこの辺り。カロンは好奇心に駆られ、腰を屈めて中に入って行きました。
中は真っ暗で、何も見えません。
「ランタンを付けてても前がよく見えないなんて……さっきまでの光は何だったのかしら!」
周りの岩には苔がたくさん生えていて、ランタンをかざすと鮮やかな緑が見えます。上からは岩が迫ってきていて、一寸でも腰を伸ばせば、頭をぶつけてしまいます。周りに気を配りながら、カロンはゆっくり奥へと進んでいきました。
しばらく進んで行くと、前が少し明るくなってきました。
「やっぱり、ここに落ちたのね。こんな小さな穴に、よく入ったわね!」
一寸感心しながらランタンの火を消し、幾分か歩きやすくなった洞窟の中を、さらに奥へと進んでいきます。奥へ行くにつれ、光はさらに白さを増します。
洞窟の中は、まるで真昼のように明るくなっています。その奥はもっと明るいようで、カロンの居るところより白くなっています。さらに奥には、出口と思われるところがあり、この光はやはり、そこから放たれているようです。
「あれが出口のようね。あぁ、なんて長い洞窟かしら!」
独り言を言いながら、カロンは尚も奥へ進んでいきます。
光は突然、強くなりました。もう出口は目の前だというのに、ちゃんと目を開けていられません。壁伝いに進んでいくと、さらに光は白くなり、目を閉じていても白く見えます。光は容赦なく強さを増します。
そして、ついに――カロンはあまりの眩しさに気を失い、その場に倒れてしまいました。
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2004/03/18(Thu)16:28:25 公開 / 宮沢
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