- 『くるみぱんちっぷのなんでも童話』 作者:くるみぱんちっぷ / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.55枚
くるみぱんちっぷは、南の森の、水色アザラシのぬいぐるみです。
年齢は不詳です。
なんでアザラシが森にいるのとか、ぬいぐるみが喋るわけないじゃんとかつっこんではいけません。南の森はそういうところなのです。
くるみぱんちっぷは、朝ごはんの後、新聞を読みながらお茶を飲んでゆっくりするのが日課です。
じまんの森一番の大きな樫の木のおうちには、朝の光がさしこんで、小鳥のさえずりまでやさしく窓からとどいてきます。
春うららで、本当に穏やかな朝です。
さて今日は、お茶を飲みながらくるみぱんちっぷはいい匂いに気がつきました。
「なんの匂いだろう。すみれかな? たんぽぽかな? いやいや、違う。これはバラの花の匂いだ」
と、家のドアをノックする音がします。
「朝早くのお客なんてめずらしいなあ」
くるみぱんちっぷはドアを開けました。ぬいぐるみなので、ちょっとドアを開けるのは苦労します。
「おはよう、どなた」
目の前には、かわいい小鹿のジェリーちゃんが立っていました。ごあいさつをして、ジェリーちゃんは言いました。
「くるみぱんちっぷさん、あたしの話を聞いてやってください」
バラの花の匂いはジェリーちゃんからしてきます。
「お洒落さんだねえ、香水でもつけてるの?」
くるみぱんちっぷは言いました。
「とんでもないです。ねえ、聞いてくれますか? この間ダンスの大会で優勝したんです」
「ああ、知ってるよ。新聞で読んだ」
「そしたら、お友達の一人がお花を送ってくれるようになって」
「へえ」
「バラの花をたくさんたくさん」
「そりゃ熱烈な」
「たくさんたくさんたくさんたくさん。もう家の庭がうずもれるくらいたくさん」
「加藤登紀子かよ」
くるみぱんちっぷが加藤登紀子を知っている理由を突っ込んではいけません。ここはそういうところなのです。
「それでそのお友達はジェリーちゃんと仲良くなりたいの?」
「バラを持ってくることに夢中で、あたしのこと見てくれません」
「もはやジェリーちゃんが好きなのかバラの花を持ってくるのが好きなのかよくわからないね」
「あたしもそう思います」
「で、ジェリーちゃんはどうしたいの?」
「とりあえずほうっておきます」
「まあそれがいいだろうね、はしかみたいなもんだ」
「だけど心配なんですよ」
「そりゃ心配だろうね、はしかでも病気は病気だから」
ぬいぐるみのくせに人間の病気の話をするなんて生意気な、なんて言ってはいけません。ここはそういうところなのです。
「くるみぱんちっぷさん、お話聞いてくれてどうもありがとうございました!」
ジェリーちゃんはぺこっと頭を下げると、バラの花の香りをふりまきながらおうちに帰っていきました。
新聞を広げると、三面記事にジェリーちゃんの家の写真が載っていました。
庭どころか一階の窓の下はすべてバラの花でおおわれています。ジェリーちゃんのママとパパは、バラの海をクロールしながら門に向かっています。
なんだか服が破れていたり、引っかき傷があるのは、とげのせいなんでしょうか。
「ジェリーちゃん、バラの花の魅力に負けるなよ」
くるみぱんちっぷはそうつぶやきながら、新聞をとじました。
おわり
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2004/03/17(Wed)13:11:33 公開 /
くるみぱんちっぷ
■この作品の著作権は
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■作者からのメッセージ
あ、どもうくるみぱんちっぷです。
昼のひと時を使ってこんなものを書いてみました。
初投稿になります。よろしくおねがいします。
なお最近作者を騙ったりする投稿が目に付きますが、念の為言っておきますが私は本人です。以後よろしう。
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