- 『エンジェル・ダスト ―Angel Dust― 001』 作者:桐生龍太 / 未分類 未分類
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全角600文字
容量1200 bytes
原稿用紙約2.9枚
[PCP]
フェンサイクリジンという幻覚剤の略称
悪魔の薬とも言われる
催幻覚的薬物の中でもケタ違いに効力が強い究極のドラッグ
特に粉末状のものを、(天使の粉・天使の欠片と、)
エンジェル・ダストと、呼ぶ
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あたしは短く痙攣し、そして目覚めた。
頬を涙が伝り、冷たいコンクリートの床に染み込んだ。
――やっぱり、また死ねなかった。
あたしは激しく咳き込んで起き上がった。
薄暗がりの中でひとつ、蛍光灯だけが目映い。
それは紫色の仄かな光だ。
携帯電話が鳴っている。
それは少しして止まり、しつこくまた鳴り始めた。
あたしは目を閉じる。
綺麗な音。
形の悪い電子の音でさえ、このメロディは美しく変えてしまう。
ふらつく体を支え、寝返る。
ぱらぱらと白い錠剤が落ちて、床に転がる。
床にはところどころに黒い血の染みが広がっていて、何か感じの悪いものも混ざっ
ていた。
あたしはバスタブまで這い、ワンピースごと下着を脱ぐと、シャワーの蛇口を捻り
熱いお湯を浴びた。
咽喉がからからで、焼け付くような痛みを覚える。
途端、バスタブの床に手をつき、激しく嘔吐する。
白濁した、どろどろするものと同時に、血液も出す。
何もかも無くなってしまえばいい。
あたしの中の、全てが。
携帯はまだ鳴り続けている。
綺麗な音。
あたしがこの世で、一番好きな音。
あたしの為に、ヒカルが作ってくれた音だ。
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2004/03/18(Thu)16:24:47 公開 / 桐生龍太
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■作者からのメッセージ
短いです。
でも、これから続編を書く予定なので、読んで頂けたら光栄です。
今回読んでくださった方、ありがとうございました。