- 『レレイラスの王国1〜2』 作者:柚紀かなめ / 未分類 未分類
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原稿用紙約12.75枚
【レレイラスの王国】
+++序章+++
長い長い通路には赤の絨毯が同じようにつづいている―。
やっと,つきあたりまで行くとそこには綺麗に装飾されて大きくて立派な扉が目の前に立ちはだかった。
決して,一人では開けられそうもない扉を前に少女はポツリとつぶやく。
「・・・traveler」
ぎぎぎぎぃーと,扉は意思を持ったように少女に先に進むようにとゆっくりと扉を開けた。
少女はためらいもせずに,ゆっくりとその扉の奥へと去っていった―。
☆
「只今,レーミル・シャレン・ミルティナ。父上にお話したい事があって参りました。」
そうゆうと,レーミルは父であるサンデルク王に一礼をした。
彼女は,一国の王女であり細身の体で綺麗な赤毛をしている。美しい顔立ちをしている。優しい感じとはほど遠い冷めたく大人びた顔をしている。
「堅苦しいのはよい・・・今度はなんじゃ?」
サンデルクは溜め息をつきながら大広間の椅子に腰掛けて耳を傾けた。その顔からはもう,うんざりだという顔がうかがえる。
(またか・・・・もう,何回目かのぉ〜。)
「さっそくですが,何かカリュシェ王国のために役だつ仕事をやらせてください!!」
「だから,何回言ったらわかるのじゃ・・・13のお前ではまだ知識が足りなさ過ぎる。それに,剣も魔法の基礎も使えんでわないか。」
それを,聞いたレーミルはぐっとこぶしをにぎった。
自分には,有って無くてはならない物が無いのだ―。
兄のファイゾは非常に剣術に優れていて,つい最近17歳という若さで騎士団の団長となったのだ。
王のサンデルクは,計り知れない力をもっていて,魔法も剣術も並外れて優れているのだ。それに比べ,レーミルは基礎中の基礎も身に付ける事が
出来ないのであった。
しかめっ面をしていると,サンデルクは重々しく口を開いた。
「コホン・・・・書物室の本をすべて読み尽くしたら別だがな―。」
カリュシェ王国の書物は世界の全ての本がそろえられており,世界に一つしかない本さえも全てこの国の一番上の塔にある書物室にあるのだ。
そのため,どの国より知識が豊富で剣術と魔法にすぐれている。城下町の子供さえ,基礎ぐらいは習得している。
その言葉に,カチンと来たのかいつも冷静で冷たい姿を作っているレーミルがついにいつもの大口をひらいた。
「お言葉ですが!あんな大量の書物を読み尽すなんて無理です。絶対,無理の無理な話です!!」
レーミルは,落ち着きがなく,いらだちを押さえられないようだ。
サンデルクは今日二度目の溜め息をついた―。
(まったく・・・・今度は開き直りおって。)
「まあ,落ち着け。じゃが,ワシやお前の兄・ファイゾはとっくの昔に読み終え全て覚えているのだが?」
レーミルは,ひるみもせずに,疑いの目で手を前で組み何かを考えているようだ。
「じゃあ,言わさせていただきますが,【ドラグーンランスの歴史】の138ページの三行目は何て書かれてるかわかります?もちろん,暗記なさっているんだから分かりますよね〜?」
そういうと,勝ち誇ったように余裕の笑みをうかべている。しかも,絶対わかりっこないわ!と,言わんばかりのようすだ。
ところが,そんなレーミルをよそにサンデルクは涼しい顔でいとも簡単のようにこう答えた。
「ドラグーンランスの第一の特徴は地上でも扱えるようしており,使いやすい造りになっている。しかし,昔は空中でもっとも扱いやすい造りになっていたため地上に降りたときの…これぐらいでよいか?」
すでに,大広間から扉を思いっきり叩いてきたところだった。
「ああ!!悔しい!なにが,『…これぐらいでよいか?』よ!!」
レーミルはサンデルクの声真似をやってのけ,また思い出しお腹のあたりがむずむずしてきた。どうも,最近すっきりしない。まるで,これから始まる事を知らせるように―。
「絶対,絶対,絶対!あの書物の山かたずてみとめさせて,ギャフンといわせてやるわよ!!」
その後,私はこんなこと言わなければ良かったと後悔するのだった―。
+++第一章+++〜庶民王女〜
私の祖国,カリュシェ王国は戦も食糧難などもまったくない,かなり平和な国である。
父である国王サンデルク・ナクス・ミルティナは若かれし頃に,私の祖父であるエリクス様と冷静かつ,無駄な犠牲を払わずに明確な
指揮をとり,この国を治めた―。
私の兄,ファイゾ・レイン・ミルティナは17才で国の騎士団の団長を務め,その腕は誰もが息を飲み,一瞬で憧れの人となるだろう。
わが国では,右に出るものはいないと言われている。
私の母は,私が物心つく頃には既に亡くなっていた。これまた,母も,物凄い魔法を使う方だったらしい・・・。
しかし,私はこの国に何一つ名誉あること,国民になにもしていない。
そのため,父や兄のように国民に信用されていない。
けど,ただ名誉や絶対的な信頼が欲しくて父に威勢良く「何かカリュシェ王国のために役だつ仕事をやらせてください!!」と言っているだけではない。
ただ,高級箱入り娘のように贅沢な食事をとり,キラキラ光るドレスを身に纏い,何でもかんでも使用人にまかせ,国民たちが汗水たらして働いて,納めてくれた税金を当然の事と私利私欲のために無駄に使う。
世の中を知らない無知な王女になりたくないだけだ。
周りにある国はそんな無知王女ばかり。
もっと,行き過ぎた国では国民を奴隷のように扱い多額の税金を巻き上げ,馬鹿げた賭け事に使う愚か者もいる。
このことを,知っているからこそ私は贅沢な食事などとらず国民と同じ物を食べる。キラキラ光る趣味の悪い服は着らず,軽く動きやすい格好だ。
と,いうか・・・何故,国民が国王と喋っているのだろうと思われるくらい庶民的。誰も,この国の王女とは思いはしない。
自分のことはもちろん自分でする。国民が汗水たらして働いて,納めてくれた税金の重みも痛いほど分かる。髪の毛も,
どっかのお姫さんと違って,ひょろひょろと伸ばさず,肩ぐらいである。
このように,私は国民のことをつねに思っている。だから,国民たちの役にたちたいのだ。
と,言っても・・・・・・・。
「こんな,馬鹿でかい書物室の書物すべて読むなんて!!」
わが国の書物室は一般公開されており,国民達も大勢ここを利用している。書物室のいたる所に館内の地図が設置されている。
私が,入り口で呆然と遠い目をすると,背中に何かの衝撃が・・・
ドンッ!!!
「いっ!!!!」
あまりの痛さに声が出なかった。うずくまって痛がっていると,太い声が聞こえてきた。明らかに,怒っている・・・・・。
「入り口で止まるんじゃねぇ!!本がよめねぇじゃねーか!!この小娘が!!!」
ガラが悪いのもほどがある。いや,けどこんなにガラが悪いやつでも本をちゃんと読むのか・・・・。
書物室にいる人の全員の目がこちらに向けられている。ふと,入り口から入って左側にあるカウンターを見ると,私の世話係が私の顔を見るなり今までよかった顔色が一瞬にして真っ青になっていった。
よそ見をしていたからか,太い声の持ち主が尚更怒り出した。
「今度から,いたしません!って言えよな!!!」
いやに,礼儀正しい。しかも,妙なアンバランスさ。いつのまにか,私はその男にむなぐらを掴まれていた。
そして,凄い形相でこちらを睨んで一発平手打ちされた。
バシッ!!!!
こんな奴でも,いちよう女の子にグーで殴るのは抵抗があったようだ。そして,私は床に投げ捨てられた。またしても,痛い。そのまえに,何故ここまで殴られなければいけないのだろうか・・・?
男は気分を損なったのか,書物室を後に出て行ってしまった。
私の世話係兼書物室のカウンターを勤めている,ミリアが急いで,こちらに向ってきた。
「大丈夫ですか!?レーミル様!そこの兵士!何してるのです!?医者を呼んできなさい!!」
「いいの。慣れてるから。」
「え?でも・・・・・。お顔がかなり腫れています。」
「平気よ。平気・・・。」
庶民過ぎて,国民は平手打ちされたこの少女を王女だとは思っていないだろう。
一国の王女が国民に平手打ちなんて,前代未聞中の前代未聞。まさに,貴方は庶民王女!!おめでとう♪みたいなうそ臭い称号が送られるだろうな・・・。
・・・・その前に,自分が何故ここまで冷静でいられるのかが不思議でたまらなかった。普通なら,こっちがいくら悪くても,相手が殴りかかってくるのであるならば,正当防衛を理由として殴りかかっている所だろう。複雑な気持ちと疑問で,私はよろよろと一般公開されていない奥の書物室にいくのであった。
頬は?というと・・・相変わらず,ヒリヒリ痛い。
この後,この出来事が自分自身の運命を大きく動かす事に関係しているなんて彼女は知らないのであった―。
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■作者からのメッセージ
小説書き始めて,最初の作品です。
長編になる予定のはずです^^
読んでくださった方,ありがとうございます!!