- 『いつかの夕べ -祈り-』 作者:PAL-BLAC[k] / 未分類 未分類
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原稿用紙約2枚
穏やかな夕べの祈りの声が風に乗って流れてくる。
低く高く、朗々と切々と。いろいろな表情を見せる調べだ。
この辺りは、まだまだ敬虔な信者が数多いのだろう。
どんな日でも、夕方になれば、いくつもの声の重なりが響いてくる。
何百年を経ても、この時の流れは変わらないのだろうか?
いや、不変の時など存在しない。現に、私は祈りを捧げなくなっているのだから。
数年前のあの日、事は起こった。
遠く、遠く離れた国から、何百人もの人間がやって来た。
砂埃をあげ、荒々しく突き進んでくる戦車
洋上から禍々しい炎を吐きながら飛来するミサイル
散発的に鳴る銃声、断末魔の悲鳴
土地の者は、皆、手に武器を持ち、立ち上がった。
先祖伝来の生活を脅かすものに立ち向かうために。
出来そこないの、手製の猟銃
都会の軍から横流しされた手榴弾
豊富なのは空元気と怒りだけ
勝敗は、誰の目にも明らかだった。
装備と頭数の揃った訓練された敵に、ばらばらの弱い抵抗が何になろうか?
奴らは、大威張りで通りを行進していった。
そして、自国流の「正義」と「文明」を我々に押し付けだしたのだ。
『未開の土人に理を教えてやろう』と、恩着せがましく。
あの日の夕べ、我々は誓った。
自分達が自分達である権利を取り戻す、と。
私はさらに誓った。
我々の国を取り戻すまで、御名を崇め奉るまい、と。
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■作者からのメッセージ
久方ぶりに投稿します。
文字数を少なく、いかに表現できるかに挑んでみました。
語り口は、淡々とさせてみようと挑んでいます(汗)。
さて、この話の主人公はどこの国の…