- 『ギニョール』 作者:蘇芳 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.3枚
2113年、アメリカの他国侵攻を引き金に、膠着状態であった世界各国で紛争が勃発。
戦火は次第に勢いを強め、中立地帯までもで戦争が勃発。
第三次世界大戦。
幕切れはあっけなくアメリカが世界に向けて放った核の雨だった。
地上全てを焼き尽くし、人類に放射能という名の猛毒を浴びせた。
この星は確実に蝕まれ、死に絶えようとしていた。
そして国連は他惑星ではなく、地球に対してテラフォーミングを決行。結果、地球は何とか復活した。
しかし、大戦最中に使用された《ギニョール》という名の兵器が残った。
ギニョールの意が示すとおり、それは人形だった。戦死者数が半分を切った時に完成。大したテストも行なわれず投入された、戦闘人形。
独自のAIを持ち、自分の射程距離内に侵入した物を破壊する。
実弾はおろか、機銃にも耐えうるだけの装甲。戦車の装甲盤させ剥ぎ取る怪力。
普通の人間ならば相手にもならない。そこで新たな職業が生まれた。狩人だった。
依頼を受け《ギニョール》を殲滅。報酬を受け取る。
これは狩人の生涯。狩人の名は環凪、魔弾の射手。
《ギニョール》の装甲は、実弾で破壊することが難しい。
遠距離となると迫撃砲や、対戦車ライフルなどが必要となる。
環凪は好んで刀剣類を使う。遠距離から各個撃破は性分に合わないのだろう。
「・・・・・・」
純白の装甲に、黒い関節部分。初期に開発された《ギニョール》だった。
顔はガスマスクのような物を付けられ、表情は伺えない。
4体の《ギニョール》と向き合う環凪。
最初に動いたのは《ギニョール》のほうだった。
3体は長く鋭利な爪からのコンビネーション。残り一体は関節部分に内蔵された、対人焼夷弾で後方支援。
爪の攻撃を後ろに引いて避け、腰にぶら下げられた刀を抜き払う。
チタン合金製の白刃が一閃し、《ギニョール》の身体を腰から両断する。切断面から白い体液が飛び散る。
単分子の厚みしかもたない刀は、あらゆる物を両断する。
のこり2体の追撃をかわし、切り捨てた《ギニョール》の頭を踏み砕く。生体脳と白い体液が飛び散り、地面を白く染め上げる。
ぱしゅっ、という渇いた射出音が響く。
「!!」
身を低くして横に跳ぶ。自分がさっきまでいた場所が、赤い炎に包まれていた。後方支援が本格的に動き出したらしい。
炎に見とれる暇もなく、爪が殺到する。
真上から振り下ろされた爪を側転で避け、横から迫る爪を刀で切り払う。
右手首から先が地面に落ち、切断面から白い体液が噴出する。
間髪入れずに焼夷弾が迫り、それも側転で避ける。
右手首を切られた《ギニョール》にそれが命中し、炎の塊となり迫り来る。
燃え盛る左爪を腰を屈め避け、背後に回り首を切り落とす。
切断面に火が燃え移り、じゅぶじゅぶと人口筋肉が融ける音を発しながら、崩れ落ちる。
焼夷弾が装填されたのを確認し、残り一体の《ギニョール》の爪を躱し、腕を取りそのまま後方支援の《ギニョール》に投げつける。
発射された焼夷弾と投げられた《ギニョール》が衝突し、《ギニョール》が粉々に弾け飛ぶ。
焼夷弾といっても発射直後に物体と接触すれば、爆発を起こす。
燃え盛る白い体液を浴びた《ギニョール》が、腕を前に突き出す。腕に内蔵された
機関銃から連続した射出音と共に、鉛の弾丸が発射される。
地面を削りながら迫り来る弾丸を、横に跳び避ける。
しかし、数発の弾丸が脛と大腿部に命中し、真紅の鮮血が舞い踊る。
「っ!!!」
着地に失敗し、刀が手から落ちる。
その間も弾丸は容赦なく降り注ぎ、身体に穴を穿っていく。
なんとかして刀を拾い上げ、《ギニョール》に向かい投げつける。
刀の柄が《ギニョール》の頭に当たり一瞬、弾雨が止まる。隙を見逃さず死力で大腿部に固定された銃を抜き取る。
うつ伏せのまま銃を《ギニョール》に向け、引き金を引く。
不可視の弾丸が《ギニョール》に当たる。
《ギニョール》が一瞬痙攣し、ぶくぶくと内部から膨れていく。《ギニョール》のマスクが弾け飛び、能面のような顔があらわになる。
ぼんっ、というくぐもった爆発音と共に《ギニョール》の体が内部から弾け飛び、白い体液と生体器官の一部を撒き散らして粉々になる。
環凪が起き上がる。
胸ポケットに入れられたデバイスからケーブルを引き出し、こめかみに開いたプラグに差し込む。
「終わった、負傷してる。至急救援を頼む」
そう言い終わると、環凪はその場に倒れ伏した。
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2004/02/22(Sun)21:14:46 公開 / 蘇芳
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■作者からのメッセージ
描写不足ですね。はい。
しかも短編にしようと思っても、できない。
環凪は「かんなぎ」って読みます。寡黙な男ですが、愛してやってください。