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『World 第一〜二話』 作者:疾風 / 未分類 未分類
全角1882.5文字
容量3765 bytes
原稿用紙約6.5枚
『世界』と言うシステムがある。
それは神が地上を創造したときに創った、神の立場を守るシステム。
このシステムは地上の人間に、視覚的、物理的な修正を施す。
通常、ならばこれだけで地上の人間は天界に干渉を及ぼすことは不可能。
しかし、その中でもやはり異端は存在し、神をも危うくさせる事が起きる。
それを未然に防ぐのが、『監視者』と呼ばれる、天界に住む五人の神徒。
その監視者達はその能力に応じて、役割が決まっている。
『統率者』オーディン。
『策者』サキエル。
『勇者』シャムシェル。
『賢者』ラファエル。
『使者』ルシフェル。
これらの要素の総称が、『世界』。
 ◇
それは、とても悲惨で、絶望的で、自らも消えてしまいたいと思うほど、凄まじい光景だった。
目の前に広がるのは、先程まで自分と言葉を交わしていた友達の、変わり果てた姿。ただの肉塊になったソレを見て、何度か胃の中の内容物を戻した。

「君…大丈夫かい?」

突然、掛けられた言葉に、ビクリと身体を震わせ、恐る恐る声の主の方に目を向けると、警察官のおじさんが立っていた。

「そんな所に座ってないで。此処で何が起こったか、教えてくれないかい?」
「……そんなこと、自分が知りたいです」

震える喉から、やっと声を絞り出す。
警察官のおじさんは、にこりと笑うと、「とりあえず、こっちに来なさい」と僕を招き寄せた。
それから――僕は救急車に運ばれ、その中で僕の意識は深く沈んでいた。


二話

中学三年生の修学旅行中に起きた事件。
二泊三日のその旅行で、最後の夜を過ごすこととなるホテルでそれは起きた。
それは夕食をバイキング形式で食べている時だった。
気付くと、目の前に血飛沫が広がり、視界を赤に変えた。次々と悲鳴が響き、肉片へと変えられていく友人達。
ただ、自分は成すすべも無く立ち尽くしていた。
――わけがワカラナカッタ。
そのときの自分の思考は真っ白で、目の前は真っ赤だった。
そして、その後警察が来て――気付くと病院だった。
 ◇
「ラファエル。君はどう思う?」
「…人間が六十人余り同時に殺害された、と言う事件か?」
「そう。そして生存者はただ一人。その生存者でさえ、何が起こったか理解出来ていないようだ」

ラファエルは興味が無さそうな表情をしていたが、不意に、
「『世界』にも不良点があるからな」と漏らした。

「どういう事だ?」
「…『世界』の対象は人間のみだ。――そうか、新人のお前は知らないんだな。『世界』の対象にならない存在のことを」
「そんな存在、有り得るのか?」
「有り得るから言っているんだろう。良いか、人間を構成しているのは二つの要素からだ。一つは肉体。二つ目は魂。この両方が成り立って初めて人間と称される。しかし、肉体だけの人間や魂だけの人間、これらは『世界』にとって人間と認識されない。――おそらく、いや確実と言って良いだろう。その事件は、魂だけの人間の仕業だろうな」

そう言って、ラファエルは教会の長椅子の一つに腰掛けた。
丸眼鏡に鋭い目つき。太っても居なく痩せているわけじゃない知的な感じの彼は賢者。監視者の中で、地上に関する全ての知識を記憶している。
「そうか」とルシフェル。
一方、彼は使者。天界と地上を繋ぐ存在。
地上で起きている通常では有り得ない出来事を天界へと報告し、その出来事への対処法を検討したものを再び彼が地上の組織、「ヘヴン」へと通達する。
ヘヴンは神徒より各下の、天者によって構成されている組織。
その存在は極秘裏で、一般は勿論政府レベルでも掴みきれて居ない組織。
彼らは統率者オーディンに絶対服従し、地上の異端を消去する役目を負っている。

「…で、何で魂だけの人間と断定できるんだ?」
「質問の多い奴だな。良いか、地上では人間は死ぬと肉体と魂に分かれる。その内肉体は人間の目でも捉えられるが、魂は違う。
魂は『世界』によって視覚的に修正が行なわれ見えなくなる。同時に物理的な修正も行なわれ、触れなくなる。無論、修正を受けるのは人間だけだ。死んだ者はその対象に入らない。
だから――その生存者が――犯人を見ていないと言う事は、魂だけの人間になる訳だ」
「…なるほど、勉強になった」
「お前はこんなことを知らなくて良いだろ。さっさとサキエルに報告して、どうすれば良いか聞いて来い」
「分かってるよ」

ルシフェルはそう言うと、ラファエルの前から消えた。報告のため、天界へと向かったのだ。
ラファエルはその後教会で何かを呟いていたが、少しして天界へと向かった。

「…らしくない。他人に知識を与えるなんてな」












2004/02/15(Sun)21:50:56 公開 / 疾風
■この作品の著作権は疾風さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
二回目です。説明文多いです。
とりあえず天使の名前に関して指摘があったんで、説明しときます。
まったく神話などに関係なく名前を使っております。なので、ただの固有名詞として取ってくれたら幸いです。神話とか、あんま詳しくないんで。では。
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