- 『恋愛指南役』 作者:宣芳まゆり / 未分類 未分類
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全角1238文字
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原稿用紙約4.35枚
ぽかぽかぽかぽか,小春日和.
小春日和は春の暖かい日じゃなくて,冬の暖かい日のことなんだよ.
あそこで眠っているのは我が校期待の星,小林先輩ではないか.
日当たりのいい図書室,机に突っ伏しておねんねしている.
学年主席も大変だね,うちの高校初の現役K大学合格者になるかもと先生方も息巻いているし.
私は司書の先生に整理を命じられた本を持って,先輩の傍までやってきた.
机に広がった参考書やノート,先輩が図書室で勉強をするのは図書委員である私のせい…….
そう,何をとち狂ったのか,この小林先輩は昨日私に告白をしてきたのだ.
「好きだって,私のことがですか?」
南校舎と西校舎の間,渡り廊下でのできごとだ.
「それ以外の何に聞こえた?」
神経質に眼鏡を上げて,小林先輩は言った.
「いや,でも,だって……,」
私はもじもじと俯いた,夕日に照らされて私と先輩の影が横に長く伸びる.
すると先輩はもう用は無いとばかりに立ち去ってゆくではないか!
「ま,待って!」
私は思わず引き止めてしまった.
「何か用か?」
冷たい視線で,本当にあなたは私のことが好きなのですか,振り返る.
「わ,私の返事は聞かなくていいのですか?」
「興味ない.」
そっけなく先輩は答えた.
「卒業までに君に告白をするという目的は果たしたし,これで明日からは受験に専念できる.」
本当にせいせいしたように先輩は笑った.
「君のせいで昨日は眠れなかった.」
へ?
私のことが好きで眠れなかったの?
「もう君の姿を追いかけて図書室で勉強する必要も無いし.」
なになになに!?
なんかすごいことを言われているような気がするのだけど,なぜだかちっとも感動できないよ!
「それじゃ,呼び止めて済まなかったね.」
そして先輩は何事も無かったかのように去って行った…….
あのぉ,先輩,私の気持ちとか,付き合ってほしいとか……,本気で何も無しですか?
頭のいい人って,やっぱりどこかおかしい…….
人の少ない放課後の図書室.
私は気持ちよさそうに眠る小林先輩の髪をそっと撫でた.
昨日の話ではもう図書室には来ない感じだったのに,小林先輩は今,ここにいる.
その理由は……,
するとびくっと体をふるわせて,小林先輩は唐突に起き上がった.
「な,なんだ!?」
真っ赤な顔をして,しかも眠っていたせいで眼鏡が微妙にずれている.
あのぉ,先輩,昨日の告白では普通の顔だったのに,どうしてこうゆうときに限ってそんな顔なんですか…….
「なぜだ……?」
赤くなってしまった顔を隠すように下を向いて,先輩はため息を吐いた.
「今日も眠れなかった…….」
うぅ……,その理由,まさか私が教えないといけないのですか……?
「それはですね,先輩,」
私は先輩の顔から眼鏡をさっと奪い取った.
「私と付き合ってみれば,分かりますよ.」
思っていたよりも澄んだ瞳が驚いて私の顔を見つめる.
まったくもぉ,恋愛指南役も楽じゃない…….
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■作者からのメッセージ
読んでくださってありがとうございます.
無自覚な恋ほど,はたから見てて恥ずかしいものはないですね.