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『御伽話-消えた青色-』 作者:道化師 / 未分類 未分類
全角2019.5文字
容量4039 bytes
原稿用紙約6.9枚

 もうあの青色は見えないのですか?

 シンは水槽の中の観賞魚を見つめていた。赤や黄色が鮮やかで美しい。
「あたしも綺麗って言われたいなぁ」
 シンは真っ黒でパサパサな髪も、このメガネも大嫌いだった。友達は皆、サラサラの綺麗な茶色い髪。皆かわいくて憧れる。そしてキラキラとした笑顔が魅力的だ。シンは笑顔が上手くない。
「アイちゃんいるかな」
 電話を持ち、番号を押す。本当はケータイというものが欲しいのだが。
「ごめん、今日デートなの」
「――わかった。頑張れアイちゃん」
「ありがと、シン。愛してるわ」
 笑いながら電話を切った。少し淋しくもあり、羨ましくもあった。
「彼氏かぁ……」
 仕方が無いので勉強する事にした。シンは英語が大嫌いだった。
「わからんのじゃー」
 シンは一人、そう叫んだ。もやもやして、たまらなく苦しかった。ふうと息をつき、うつぶせになった時、ガシャガシャと机の上の物が落ちた。昔もらった貝殻がシンの目に映った。
「……海行こ、そう海だ」
 シンは財布を持って家を出た。何年も海など行っていない。水着を着るのが恥ずかしいので、友人からの誘いは理由をつけて断っていた。昔の記憶を頼りにして、シンは電車に乗った。

「なつかしいなぁ」
 少し古びた商店街、道端のススキ、それからよくわからないレトルトカレーの看板。昔、家族でよく来た街の風景が広がっていた。カタンカタンというゆったりとした汽車の音は、とても心地よかった。
「えーっと、どこだったっけ」
 駅から出ると、海を探した。歩いていると、汽車の窓からは見えなかった風景が目に映った。
「ショッピングセンター、すぐそこ」
 そういえば昔はこんなに空き缶なんて落ちてなかったような気がする。ガラガラと静けさを紛らわすだけの、それくらいのかわいい程度だった。コンビニの袋や、へこんだペットボトルが草むらに転がる。
「汚いなぁ」
 海も同じようなものだった。水はとても綺麗とはいえない。きっと夏になっても人なんて来ないのだろう。夜中に誰かが遊んだような跡だけが残っていた。
「変わっちゃうよね、人も海も」
「ホント困りますよね」
 誰も居ないはずのそこで、男の子の声が聞こえた。振り向くとそこには大きなカゴを背負った男の子……いや、少し年上のような気もするが。
「誰、君は」
「僕は太郎です。タロくんでもいいですけど」
「――太郎のほうが短いじゃん」
 太郎は静かな口調で、妙な事を言う。
「いやいや、まあまあ。貴方もしませんか? コレ」
 太郎は背負っているカゴを指差して言った。このまま帰るのも気が引けたので結局手伝う事にした。
「貴方の名は何というのですか?」
 シンがベトベトになったパンの袋を恐る恐るつかんでいる時だった。シンはそれをカゴの中に捨ててから言った。
「シン」
 太郎は少し動きを止めた。そして何事も無かったようにした。
「そうですか」
 しばらくの間沈黙が続いた。二人は黙々とゴミを拾った。
「もしかしたら、今日よりも空は青かったかもしれない」
「何がですか? シンさん」
「前、ここに来たとき。もっとここは美しかった」
 あたしはその時自分が好きだった。黒い髪も、それからこの顔も。そしてなにより笑っていた。
「変わってしまいましたよ。乙姫も、去ってゆきました」
 乙姫……?彼女だろうか。確かに太郎はいいひとそうで、利用されそうだった。
「ふられたんだ? 太郎」
「まぁ、そんな感じですね。カメももうクビになりましたよ」
 ロマンチストな奴なのだと思った。まるでなんかのおはなしだ。
「周りは変わりすぎる。アイちゃんも昔はおどおどしてたし、彼なんていらないって言ってた」
「流れてゆくのですよ、人も時も。シンさんが思う以上に、はやく」
「……」
「ここも昔のような青色じゃありません。今は濁っています。けれども、変わらないものもあるのですよ」
「何?」
「毎朝太陽が昇りここを照らすのです」
 そんなのは当たり前だ。だからなんだというのだ。
「シンさんも変わっていません。いつまでも笑顔は美しい」
「どうも」
 ゆったりとした台詞と空間。それはあたしにとって必要なものだった。
「貴方は、貴方です。たとえ性格が変化しようとも」
 ゴミが広がるそこも、にごった水も太陽は照らす。
「太郎も、太郎だよ。昔から変わらない」
 太郎は驚いたようにあたしを見た。
「もう、こんな時間だ。あたし帰るわ」
 沈む太陽が少し眩しかった。カゴにはたくさんのゴミが集まっていた。
「そうですか。今日はありがとうございました」
 太郎は深々と頭を下げた。
「じゃあね」
 そう言って別れた。
「あっそうだ、いつかの貝殻ありがとう。ウラシマさん?」
 太郎は何も言わなかったが、ニコニコと笑っていた。

 カタンカタンと揺れる列車の中で、シンは眠っていた。シンは幼き日、あの海で遊んだ日の夢を見ていた。

「また、会いましょう。乙姫」
  
2004/02/01(Sun)18:35:22 公開 / 道化師
■この作品の著作権は道化師さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
御伽話シリーズ(?)第2弾です。
今気がつきましたが、私はカタカナ2文字の名前が好きらしいです……(汗
それにしても、小説は難しいです。まだまだ未熟です。
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