- 『空色の夢』 作者:葵 まひる / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.15枚
道を歩いていたら、小さな水たまりがあった。
水たまりに入らないように、大きく足を広げた。
・・・バシャッ!
忘れてた。
僕の足は短いんだ。
右足の指の先が冷たい。
だんだん足の裏も冷たくなって来た。
「こぉーくん、早くおいで。」
お母さんが呼んでいる。
早く行かなきゃ。
水たまりに入った僕の右足の周りから、波紋が広がる。
ああ、どうしよう。
ワクワクする。
そう僕は今、空に片足をつけているんだ。
ほら目を閉じて、ゆっくりと目をあける。
ほらね、
もう空の上。
上を見上げてごらん。
街が僕を見下ろしている。
街の人たちは、僕に気付いていないみたい。
前を見たまま、すごく早く歩いている。
あ、あそこに車雲が浮かんでる。
あそこまで行きたいなぁ...
でも、
ここから一歩でも足を動かせば、僕は地上に戻ってしまう。
「おーい、タクシー。」
お父さんのマネをして、
大きな声で呼んだけど、
愛想が悪いなぁ。
まっすぐ前に、ゆったりと進んでいる。
「ばかー。」
あっかんべーをしてやった。
あれ、あそこにクジラ雲がいる。
大きいなぁ...
でも、
ここから一歩でも足を動かせば、僕は地上に戻ってしまう。
「おーい、クジラくん。」
大きな声で呼んだけど、
クジラの耳には届かない。
まっすぐ前に、ゆったり泳いでいく。
「かわいくないっ。」
あっかんべーをしてやった。
あれ、こっちに何か向かって来る。
どんどん
どんどん
どんどん
あ、飛行機だ。
「おーい、おーい。」
大きく大きく手を振った、
まっすぐこっちに向かって来る。
どんどんどんどん
「うわあああああ。」
思わず右足を動かしてしまった。
気が付くと、もとの水たまりに戻っていた。
「こぉーくんったら、水たまりに落ちちゃったのね。」
お母さんが、ちょっと怒ってる。
えへへ
と笑うと、
うふふ
とお母さんが笑った。
「お家に帰ったら、お父さんとお風呂に入ろうね。」
「くるま」
「そうね、車のおもちゃも一緒にね。」
「クジラさん」
「クジラさんもね。」
「ひこーき」
「飛行機のタオルでちゃんと体を拭きましょうね。」
お母さんと手を繋いで、
えへへ
うふふ
笑いながら、お家に帰った。
ちょこっと足が冷たかったけど、
えへへ
うふふ
笑って帰った。
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■作者からのメッセージ
雨上がり、幼稚園の帰りに『僕』がみた空は大きくて少しこわい所だった。
空好きです★
時間とともに変わっていくのが好きなんですけど、とくに雲が流れていくのを見るのが大好きです♪