- 『僕の旅』 作者:琥紅 / 未分類 未分類
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僕の旅1:僕の見る空
ガッタンガッタンガッタンガッタン・・・・・・・・
電車が揺れる。僕の体もすごく揺れる。
窓の外を見ると、景色が流れている。
空を見て綺麗だという人はこの国に多くいるだろう。
何百、いや、何千何万と・・・・
けれど、僕はそうは思わない。
なぜなら、あんな汚い空を見て綺麗というならば、
僕は海の方が綺麗だと思う。
この電車の窓から見た空は、真っ黒くて雲一つない。
夜になっても月は出ないし星だって見た事がない。
けれど僕は、一切羨ましいとは思わないし、見てみたいとも思わない。
それを見る事で感動を味わえる物なら味わってみたい。
僕は、旅に出た。
特に宛てもなく。
けれど、この真っ黒な空以外の空を見れるのなら、
少しぐらい時間をつぶしても良いかな、と思った。
僕の旅2:自由という空
空は自由らしい。
誰かが僕の傍で噂をしていた。
電車の中で前に座った小学生が、将来何になりたいと親から聞かれて
”鳥になって自由に空を飛びたい”といっていた。
周りの人は微笑んでいたが、
僕はどうしてもその光景を見て微笑む事が出来なかった。
どうしてその子は、空を飛ぶと言う事は自由と思ったのだろう?
誰がそんな事を決めたのだろう?
空を飛ぶと言う事は自由なのか?
この真っ黒な空を飛んで、本当に自由なのか?
強風に狂わせられ、大雨に強く体を打たれ、翼がぬれると
その場に落ちてしまうのではないかと思う。
止まる枝を探し、ろくに枝のないところに来てしまったら
そこで力絶えるのかも知れない。
そんな過酷な空を自由だとは言えるだろうか?
僕の前で微笑む、まだ小さな子供と若い親たち。
その親子の話を聞きながら、僕はまた真っ黒な空を見上げた。
僕の旅3:海岸線
何となく降りた町で、何も考えずに歩いていたら海に出た。
僕は、海が好きだ。
海岸線に沿って歩いていたら前から一人の男が歩いてきた。
僕の方に少しちらっと目をやり、僕はその目をそらした。
「・・・・・・綺麗だな・・・・」
そう男は呟くと、僕の横を通り過ぎていった。
僕はその男が言っている意味が分からず、そのまま海を見つめていた。
一定のリズムを崩さず、幾度となくうち寄せる白い波。
砂をさらっていき、また、何度も。
それを見ていると、頭が狂ってきそうだった。
ずっと同じリズムで何度もこちらへこちらへと、招く手のようだった。
不意に吹く風は潮の香りがする。
僕の帽子をさらうほどの強い風でない、穏やかな空気。
ずっと向こうへ目をやると、海と空がつながっていた。
そこを見つめていると、僕の隣りにさっきの男が座っていた。
「あれは、この世の果てなんだとよ。」
僕は、男の方を向いた。
「海と空がつながる場所はこの世の果て。
誰もあそこにはたどり着けない・・・・だってよ。
そんな事言ったって、どうせたどり着くなんて事は無理だろう。
空に行き止まりなんてねぇんだからさ。」
僕は、黙ってその男の話を聞いていた。
男は、ジーンズのポケットの中からタバコを取りだして口にくわえた。
もう反対側のポケットからライターを出して、火をつける。
「・・・・・・・この世に果てなんてない。
綺麗なモノも、美しいモノも。
この世が汚いのに、綺麗や美しいモノなんてあるはずがない。」
僕は、いつの間にか口を開いていた。
「じゃあ、お前はこの海をどんな想いで見ていたんだ?」
男は聞いてくる。
「ずっと、狂いそうなくらいこの海を見ていた。昔から。
そして、狂うくらいこの黒い空も見てきた。
空は嫌いだ。真っ黒で太陽も見えないし、月も星も。
空は見る価値がない。」
男は口から白い煙を噴いて、僕の方を見る。
その時、黒いサングラスの横から覗いた紫の透き通った目。
それこそ、この世にある唯一の綺麗なモノだと、僕は想った。
「・・・・・海は見る価値があるのか?」
「海は、青い。それで生き物も住んでいるし、動いているし。
波が打ち寄せると、白いから。
きっと昔は、空に憧れて空の代わりにしょうがなく海を見てた・・・。
青い空に白い雲、翼を羽ばたかせて一生懸命飛ぶ鳥を見たかった。
でもこんな空、青くないし。雲もないし鳥も飛ばない。
そして気付けば、海の方が好きになってた・・・・。」
僕は、なぜか泣いていた。
「・・・・・・そうか・・・・・・。」
男はスッと立って、その場から去っていった。
3歩ほど進んでから、その男はくるっと振り返る。
「黒い色が好きになれば、空も綺麗さ。」
僕は、また海と空の界を見ていた。
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2003/12/28(Sun)23:54:32 公開 / 琥紅
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■作者からのメッセージ
「僕の旅」は、昔から考えていた作品です。いつか書こう書こうと思っていて、書く機会がなかったので、ここに投稿します!主人公の名前は、もう少し後に紹介したいと思います。よろしくお願いします!
ァ、もう少し続きがあります。