- 『天使の日記U、V』 作者:竜紀 / 未分類 未分類
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原稿用紙約7.2枚
第2章
私の視線は完全にその日記に釘付けになっていた。
道長さんのことをよく知らなかったから、余計に私の好奇心をかきたてた。
「ねぇ、本当に、大丈夫・・・なの?」
りくは不安そうに私を見る。
りくも、道長さんと同じく日記をつけているのだ。
りくはプライベートなことばかりを日記に書くらしく、道長さんのプライバシーを侵害してしまうのではないかと、不安になったらしい。
でも、そんなりくの一言も、今の私の好奇心を止めることは、出来なかった。
私は黙って3ページ目を読み始めた。
『11月3日 月曜日 文化の日
今日は祭日で学校が休みだ。だから寝ていようと思ったけれど、習慣になっているのか、7時に起きてしまった。私は2度寝というものが、何でかわからないが出来ない。だから7時からは部屋でマンガを読んでいた。
ヒマだったから友達の美紀に電話した。でも出なかった。
だから今日は1日中部屋でマンガを読んでいた。』
「ねぇ、ゆい、美紀って・・?」
美紀・・・。私も同じことを疑問に思っていた。
「わかんない。次を読めばわかるかも。」
4ページ目。
『11月4日 火曜日
今日はいつもどおり学校があった。学校に行っても、誰も居なくて、クラスで1番早く登校した。美紀が来て、昨日電話しても出なかった、と言うと、美紀は笑顔でこう言った。
「あ〜、昨日ねぇ、有子ちゃんと遊んでたんだぁ〜!カラオケ行ってて、家には誰も居なかったから。あ!奈美ちゃんにも携帯の番号教えてあげるね〜!」
私は携帯の番号なんて、いらないと言った。やっぱり美紀も裏切るんだ。
有子って誰?どんどん私から遠くなってく。美紀だけじゃなくて、みんな、みんなそうだ。昔は仲良くっても、すぐ裏切る。人間不信になりそうだ。
クラスの子とも、上手く話せないし。どうしてこうなんだろう・・。』
・・・道長さん、悩んでいたんだ。こんなに悲しんでいたんだ。
ついていけなかったのかな・・。
「道長さん、私達と上手く話せなくて、悩んでたのかなぁ〜・・。」
「うん、きっとそうなのかもね・・。でもさ、別に裏切ったわけじゃないよね。嫉妬深いタイプなのかな。」
「う〜ん・・。そうなの・・かな。」
そんな会話をかわしながら、また視線を日記に向けた。
5ページ目は、目がチカチカするような文字ばかりが綴られていた。
日にちすら書いてなくて、さっきまでのきれいな字とは全く違う、書きなぐったような字だった。
「美紀、ごめんなさい。有子って人、ごめんなさい。恨んだりして、また昔のクセが出そうだ。本当に本当にごめん。
ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん・・・」
ずっとごめんが続いていた。
さすがにこの文にはちょっとひいた。素直な気持ちは伝わるけど、なんでいきなり、って思った。
キーンコーンカーンコーン・・・。
チャイムが鳴った。放課後になる、何の意味があるのか半年たってもよくわからないチャイムだ。
「ねぇ、もう帰らないとさぁ、先生達が来ちゃうんじゃない?」
りくは日記を閉じて、机の上に置いた。
「これ、どうすんのさ?」
「どうしよう・・。」
私は日記を手に取り、まじまじと表紙を見つめた。
「机の中に入れておこう。そうすれば誰も読まないでしょ?私達が読んだってことも、バレないし。」
りくの提案に、私は本気で関心した。
そして、慌てて机の中に日記をしまうと、私達は教室から逃げるように出て行った。
誰も来ないうちに。
第3章
私とりくは階段を降りていた。なぜか会話はなかった。
「ねぇ、あの日記さぁ・・。」
りくがそう言った瞬間、前から誰かの姿が見えた。
私は、先生だと思った。
この時間に学校に居るといったら、部活の生徒か先生しか居なかったし、
うちの学校では何部であっても大会以外の普通の活動のときはジャージでなくてはいけなかった。
前から見えた人は、制服のような感じの服装に見えたから、先生だと思ったのだ。
でも、その服は制服のような、じゃなくて、制服だった。
「っ・・!みっ、道長、さん・・!」
りくは声をあげた。
私は思わず凍りついて、しーんとなった。
「あ・・。」
道長さんが声をもらした。普段道長さんの声はほとんど聞いたことがなかった。道長さんの声はすきとおるような綺麗な声だった。
「・・・見た、の・・?」
道長さんは不安そうな表情を浮かべた。
こうやって正面からじっと道長さんを見るのは、初めてだったかもしれない。
道長さんはまつ毛が長くて、目もくっきりとした二重で、美人だった。
どうして今まで、道長さんの美人さに気付かなかったのだろうか?
男子も私達も、道長さんなんて気にもとめていなかった。
りくは、静かに頷いた。私も慌てて頷いた。
「はぁ〜・・。」
道長さんはくっきりとした目を床に向け、ため息をこぼした。
「ごめんなさい!本当に本当に、ごめんなさい!」
私は無意識のうちに大声でそう言っていた。
「い、いえ!良いんです、でも、ひいた・・よね?」
「ううん!全然そんなことないって、すっごくキモチが伝わったし・・。」
道長さんは黙って微笑んだ。私達はそこに立ち尽くし、何も言う事が出来なかった。
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2003/12/21(Sun)19:56:06 公開 / 竜紀
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■作者からのメッセージ
第2章と第3章をまとめて書きました。りくと主人公のセリフがどっちがどっちだかちょっとわからなくなっちゃってるんですが、本当にすいません。