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『天使の日記』 作者:竜紀 / 未分類 未分類
全角1388.5文字
容量2777 bytes
原稿用紙約4.6枚

第1章

いつもの放課後。私と友人の「りく」は、いつものように教室で2人喋っていた。

「あはははっ、それっ、超ウケるし!!」

「でしょ〜!?マジウケだよねっ!」

「ね〜ね〜、それってさぁ、誰から聞いたの?」

「・・・?りくぅ?」

りくは、今まで私の方に向けていた視線を、どこか一点に強く向けていた。

「・・・どした?」

りくの視線をたどってみた。


その先には、1冊の分厚い本があった。その本は、道長さんの机の上にあった。

「ねぇ、ゆい、これってさ・・・。」

りくはその机の前まで行って、その本を手に取った。
私も慌ててりくの横に立った。

その分厚い本は、どうやら日記のようだった。
ピンクの可愛いチェックの模様に、赤いペンで大きく『奈美の日記』と書いてあった。

道長さんは普段余り目立っていなかった。私達も、道長さんとは余り、いや、ほとんど喋った事は無かった。

ただ、高校に入ってからの今まで半年、『クラスメイト』ということだけで繋がっていた、ただの『知り合い』だった。

・・・少なくとも、その日、その時までは。

「道長さんの、日記・・?」

私は、りくの手の中にあった、その日記を取って、つぶやいた。
りくはやたらとキョロキョロ辺りを見回していた。私も、誰か来ないか心配だった。

「道長さんのかばんもないし、ジャンバーもないし、帰ったみたいだけど。どうする、それ?」

りくが言った。
このまま置いておくわけにはいかなかった。
誰かに読まれたら、道長さんがかわいそうだったから。
・・・それになにより、私達だって道長さんが日記を読んだ人に何か言われていたら、私達の『良心』というものが、きっと痛むから。

「読もうか?」

私は、とんでもないことを口にしていた。無意識のうちに、私の口からそんな言葉があふれ出ていた。

私は、その日記に手をかけた。その手はかすかに震えていた。
だけど、私には、好奇心を抑えるほどの強さは無い。

「あっ・・!」

りくが思わず声をもらした。
私の手はもう震えていなかった。そして、ゆっくりと、1ページめくった。

その1ページが、私とりくと道長さんを、不思議な関係へと導いていくのだった。

1ページ目は、何も書いていなかった。いや、一言だけ書いてあった。
右上に、きれいで小さな字で。

「この日記を今読もうと思っているあなたへ。
 今この日記をあなたが手に取ったのは、きっと、運命。」

そう書いてあった。私にも、りくにも、その言葉は理解出来なかった。

2ページ目と3ページ目には、ぎっしりとそのきれいで小さな字で書き綴られた文章が、びっしりと並んでいた。

私は、1回せきをして、その文章に目を向けた。
そこには、こう書いてあった。

『今日から日記を書くことにした。

何でか、そのワケは、1つだけ。

誰にもわかってもらえないから、だから、文字にしたいんだ。私の気持ちを。

もしかしたら、誰かが読んでくれるかもしれない。期待はしていない。

でも、自分から読んでもらうためにわざと落とすとかは、しようとは思わない。
あくまで運命に、全てをまかす。』

2ページ目は、ここで文が終わっていた。りくの肩が、かすかに震えていた。

「もう、読むのやめようよ。ねぇ、ゆい。」

りくの中に、嫌な予感が走ったんだろう。

「大丈夫だって。」

私は、3ページ目に視線を向けた。

第2章へ続く・・・
2003/12/21(Sun)14:12:28 公開 / 竜紀
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