- 『さぼり。』 作者:らぃむ。 / 未分類 未分類
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 原稿用紙約4.6枚
 サボリ
 
 最近の授業に、ついていけなくなった。授業のスピードはそんなものではないのだが、やる内容が中学のものとは違う。更にレヴェルが高く、頭の弱い私には少々きつかった。
 中間テストの点数が、非常に危険だった。数学Tなんか赤点だ。もちろん、追試を受けたが、さっぱり分からない。2次関数、2次不等式。なぜこんなものが必要なのだ?
 「なんでこんなのやるんだろー?」
 「そうだねぇ…数学なんて必要ないのに。」
 赤点を取った者同志、シャーペンを片手に問題用紙を手に取った。
 必要なのは数学ではなく、算数なのだ。足し算引き算掛け算割り算の4項目が出来れば上出来なんだ。あと出来ることならば割合も出来れば消費税の計算も出来る。
 それだけで、十分じゃないか?
 大人達は私達に何を望むのだ?
 数学だけではない、英語も、かなり危険。本当は赤点のような点数だが、担当の先生が面倒だと、追試をやらない。それはそれで別に構わない。
 テストだけではない、授業自体にも、緊張感が抜けてしまった。
 そうなると、授業がつまらなくなる。
 そして、サボる人間が、出てくる。
 私も、その一人になった。
 
 「あれー、どこ行くの?」
 荷物を持って、教室のドアを開ける時、誰かに言われた。
 「保健室。サボってくる。」
 そういうと、その誰か――友達の女のコだった――が、『いってらっしゃい』と手を振ってくれた。
 保健室は、私の教室がある校舎のお向かいの校舎の1階にあった。移動するのが多少面倒だったが、暇な授業に出るよりは楽だった。校舎の端っこにある保健室に入った。
 「失礼しまーす。」
 ドアを開けると、にっこり笑った保険の先生が出迎えてくれた。
 「今日はどうしたの、サボリ?」
 ざっくりと言い当てられた。流石保健の先生。生徒の意図なんかお見通しだ。そう言われると、私は頷くしかなかった。
 「あら、今は何の授業。数学?」
 「いえ、英語です。伊藤先生の。」
 「あぁ、アノ人ね。それじゃあ仕方ないわ。ゆっくりしてっていいわよ。」
 この先生、生徒の気持ちをよく理解してくださる。英語の伊藤は、女子生徒しか当てないというエロジジイで有名だった。特にこの学校は女子生徒が多い為、奴にしてみれば居心地がいいらしい。奴は気に入った女子を下の名前で、しかもちゃん付けで呼ぶ。女子全員、奴が嫌いなのだ。
 この保健室にも、奴のターゲットにされた女子が相談に来る。それで、保健の先生は伊藤の授業から逃げてきた子をかくまってくれた。優しい先生だ。どうしてこんな人が授業をやってくれないのだろう?
 「あ、先生。紙、書くね。」
 保健室に来た者は、赤い紙に、クラス・番号・氏名の他、保健室に来た理由などを書かなければいけない決まりがあった。さぁ、今日はなんと書こう。
 「んー、頭痛でイイや。」
 いろいろ書いてある項目の中から『頭痛』という文字を見つけ、丸をつけていく。
 最後に先生のサインと、生徒への対応の項目を記入してくだされば、文句無し。
 「はい、オッケー。」
 そういうと、先生はベッドに寝ていいと言ってくれた。もちろん、本当の急患が来たら起きるという条件付で。
 サボってベッドに横たわって、布団をかける。目を閉じて、ゆっくり呼吸をする。
 いい夢を見て、オヤスミ。
 
 
 チャイムが校舎中に鳴り響く。
 ベッドから起きて、上履きをはく。どうやら急患は来なかった模様。
 荷物を持って、赤い紙を貰った。
 
 授業なんか、大嫌い。
 勉強なんか、もっと嫌い。
 大人は何かと子供に押し付ける。
 子供は大人に押しつぶされ、窒息寸前。
 サボリは、ちょっとした反発。
 
 「――……眠い。」
 ベッドの温もりを感じつつ、教室に戻った。
 *end*
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■作者からのメッセージ
 サボりたいです。英語と数学が嫌いです。赤点取りました。
 携帯用のHP作りました。パソからドウゾ。名前は違いますが、私です。