- 『メモリアル・キー *第3章』 作者:桜貝 / 未分類 未分類
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 原稿用紙約4.5枚
 
 ガタッ・・・
 家の扉が開く
 二人はそっと静かな家に入った
 (この家に俺以外の人が入ったのは・・・何年ぶりだろうか・・・)
 真は居間にリュックを置いた
 綺阿羅は部屋を見回しながら真の後についていった
 
 「貴方の家って広いのね・・・私、研究所にしか見たことないから・・・」
 綺阿羅がそういうと、真は机椅子に腰かけた
 
 「俺も友達の家は行った事ないよ。だってそんなに仲の良い人いないしさ・・・。俺って親居ないから他人に「あの子は可哀想」とか、特別に見られてるんだよ・・・・」
 
 「特別に・・・・・?じゃあ私もだわ。格好だけで、人間じゃないもの・・・・人前に出ても、普通の扱いはされないと想う」
 「ゴメン、変なこと言って・・」
 
 真は気に障ったかと思うと、焦った
 
 (俺も同じだと想う・・・・)
 真は同じ事を話し合える綺阿羅に親近感が抱けた
 
 「私たちって似てるね!友達になれるよね・・・・?」
 
 ・・・・トゥルルルル
 
 その言葉と共に、電話がかかってきた
 
 「もしもし」
 「真・・・・?」
 
 その声はまさしく、母だった
 
 「何・・・?母さん」
 「あのね、研究所に居た、金髪の女の子知らないかしら?」
 「・・・・・知らない」
 
 真は息を飲んだ
 
 「で?どうしたの?その女の子が」
 
 「その子が研究室に隠れているのは判ってたんだけど、実はね、その子・・・研究員の「失敗作」だったの。もうそろそろ細胞が保たなくなって、ただの人形になっちゃうわ」
 
 「もうそろそろって・・・・?」
 「そうね、あと1週間持って良いほうだわ」
 「そ・・・・・う。」
 「まぁ、見かけたら言ってよね」
 
 その時、電話の向こうでかすかに研究員の声が聞こえた
 「あんなのが世間に知られたら、我らの恥だからなぁ?」
 
 ・・・今直ぐにでも叫びたかった・・・
 「うん、じゃあ見かけたら言う。」
 「よろしくね。じゃあ早く鍵持っていらっしゃい」
 「じゃあ」
 
 カタン・・・
 受話器を乱暴に置いた
 
 そして綺阿羅は脅えた様子で、真の怒り顔を覗きこむ
 「誰から?何があったの・・・・・?」
 「・・・・母さんからさ」
 「・・・・・もう行くの?」
 
 真は少し黙って、それからゆっくりと話し出した
 
 「行かなきゃ」
 「そう・・・・私、ここで待って良い?」
 「・・・うん」
 「絶対帰ってきてね?」
 「・・・うん」
 「行ってらっしゃい」
 「行ってきます」
 
 この会話で、よく耳にする光景が浮かんできた
 学校へ行くのに「気をつけてね」とか「行ってらっしゃい」とか・・・
 もちろん、俺はそんなことはなかった
 学校へ行っても、家で帰りを待っててくれる人は居なかった・・・
 
 でも
 
 今は自分を待っててくれる人が居る・・・・
 
 真はリュックを持たないで、家を出た
 
 (早く行かなきゃ。皆が待ってる・・・綺阿羅が家で。母さんが鍵を、竜が研究所で・・・・俺には助けを呼んでいるかのように思えた)
 
 そして研究所に向かった
 
 この日の天候は雷雨に襲われていた・・・
 
 
 ――――――――つづく
 
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2003/12/13(Sat)16:15:39 公開 /  桜貝
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■作者からのメッセージ
 第3章です^^
 何回も読み返して、誤字脱字が無いか確かめました!
 読んでくれると嬉しいです!!!