- 『ぽとふ 弐』 作者:一卵性 / 未分類 未分類
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ビルの下では警察が騒いでいました。『無駄な抵抗はやめろ!』とか『お前達は完全に包囲されている!』とか、本当に言うんですね。
あ、ごめんなさい。 ハイ、ホントもうしません、はい。
「殺した男は警察官だった」
今まで喋らなかった目出し帽の男が、初めて口を開きました。
逞しい腕の先には、汚物を持つように親指と一指し指でつまむ物、それは多分手帳だと思います。
警察手帳じゃないかと思います。
暫くすると、こう言うのもなんですが、その、皆、一段落した様な雰囲気になりました。 人が殺されているのに、少し緊張が解けた状態に。
「良かったですね! 皆さん、政府が要求を呑んでくれました!
上手くいけば貴方達はもう少しで自由ですよ!」
ガスマスクの男が本当に嬉しそうに言えば、人質の私達も安堵の溜息を洩らしたり、小さな歓声をあげます。
「でも! 喜ぶには未だ早いですよ〜!」
男はとても大きな拳銃をこちらに向け、脅します。
それは、事件発生から二時間経過した頃でした。
「さて、そろそろ皆さんに私達の目的を伝えようと思います」
突然、神妙な面持ちで ……あ、顔見えませんね、面持ちって、いやはいすいませんはなしをつづけます。
とにかくもう、神妙な感じで、口を開きました。
「私達が要求した物は、ヘリでも食料でも金でも有りません。
たった二百萬円の、退職金なのです」
言うと、今まで顔を隠していたものを、ガスマスク、目出し帽を、彼らは投げ捨てました。
皆、孫が居そうな、壮年のおじさんでした。
「銃はアメリカで買って違法に輸入しました。
私達は、官僚の、御偉方の、とにかく上の方々を恨んでいます。
濡れ衣を着せられ、一時期は牢に入れられた!
何が! 何が訓練中の人殺しだ!
お前らが! その山でやれって言ったんじゃないか!」
ガスマスクの男は、もう禿と呼べる、普通のおじさんでした。
まるで目の前に当の本人が居る様に、声を荒げる。
「…………取り乱してすいません。
そして、御免なさい。
本当はもう、退職金なんて要らないのです。
意地を張っていただけなんです」
深呼吸をし、冷静を取り戻したおじさんは、泣いていました。
銃を持ちながら、他のおじさんも、涙を流していました。
「だから、最後まで意地を張らせてください。
御免なさい、本当に御免なさい、もう、後戻りしたくないんです。
皆さんを巻き込んで、本当にすいませんでした。
……謝るのは、一度やめます」
もう一つ、深呼吸
「残りは地獄で謝ります!」
おじさんは、百円ライターで何かに火をつけた。
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2003/12/12(Fri)23:12:20 公開 / 一卵性
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