- 『わたしのせんせい 第1話  』 作者:うさぎ / 未分類 未分類
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 「おはよう〜先生、今日も早いねぇ〜」
 まだ眠い目をこすりながら、亜希子は食卓についた。
 「おはよう〜亜希子ちゃん。私に気を使って早く起きなくてもいいのに。」
 そういって微笑んだ桃子先生は亜希子のコップに牛乳をついだ。
 「亜希子は先生と一緒に学校に行きたいのよね〜、前は起こしても全然起きなかったのにね。」と亜希子の母美代子は亜希子を意地悪そうに笑いながらみた。
 桃子先生は、うれしそうに、「ふふ、私がこの村に来てから、毎日亜希子ちゃんと一緒に学校に行けて嬉しいよ。」と言った。亜希子は桃子先生の方を見て、ふふと笑い、食パンをかじった。
 「ほれ、早くせんと亜希子、先生が遅れてしまうがねぇ〜」
 
 この生活が、今年の四月から続いている。
 亜希子の住む村は、過疎化が進んでいる小さな村で、亜希子の通う小学校は一学年一クラスだった。そして、新しく赴任してきた先生は、生徒の家に居候しながら教鞭をとるのが通例となっていた。
 
 
 「寒くなってきたね・・」と桃子先生は亜希子の手を取った。
 「うん。寒い〜でも先生と手をつなぐとあったかいね。」
 「ねぇ先生、私ね、先生がだぁい好きだよ。」
 「亜希子ちゃん、先生ね、亜希子ちゃんがだぁい好きだよ。」
 くははは。
 二人でのいつもの会話だ。
 
 一方、
 「おい、また桃子と、亜希子一緒に来てるぜ。」
 「だって、しょうがないじゃない、亜希子ちゃんと先生、一緒に住んでるんだから。」
 「だけどよぉ。」
 そんな会話をしているのは、亜希子のクラスの、翔太とあけみだ。
 「なによ・・」
 「でもよぉ、なんか亜希子に桃子の悪口いえなくない?」
 「それはそうね・・」
 「確かめてみようぜ、俺たちと、桃子、どっちの見方なのか。」
 あけみは、なぜ翔太がそこまで亜希子のことを気にするのかが分からなかった。
 だが、ひそかに翔太に思いを寄せていたので、そのとおりにすることにした。
 
 校門を入ったところで、桃子先生は職員室へ、亜希子は教室へと手を振って別れた。
 
 教室へ行くと、亜希子の席に、あけみがいた。
 
 「おはよう、あけみちゃん」
 亜希子の挨拶にあけみは心が痛んだが、こう言った。
 「ねぇ、亜希子、あんたさぁ、桃子先生と私たちどっちの見方なの?」
 「え・・」あきこはぽかんとしている。
 「だからぁ、桃子と私たちどっちが好きなの?」
 「そんな・・・。」
 「もし、私たちの見方だったら、明日から桃子と来ないほうがいいよ。」
 翔太が影から見守っている。
 「あけみちゃん・・どうして?どうして桃子先生と来たらだめなの?」
 「だから・・・。もう、そんなこと言わないで、わかったね?」
 そういうとあけみは行ってしまった。
 
 「桃子先生ときたらだめって・・なんでなの?」
 亜希子は分からぬまま、置いていかれてしまった。
 
 この村では、寒くなるとすぐに雪が降る、その日の帰り道は、雪が降っていた。
 桃子先生は会議があったので、亜希子は先に帰ることにした。
 亜希子が帰っていると、翔太がやってきた。
 「おい、亜希子、分かったな、明日から桃子と来るなよ。」
 「いやよ、どうしてそんなことしなくちゃいけないの?」
 「だってよ、お前・・」
 「明日からも桃子先生と学校来るから!」亜希子の見せた意地に触発された翔太は、
 「あ、あのよぉ、亜希子が傷つくと思ってよぉ黙ってたけどよ、桃子がよぉ、
 おまえの家に住むのイヤだっていってたぜ、亜希子と毎日学校に来るのも。
 それなのによ、お前よ、いいのかよぉ、イヤイヤ毎日一緒によぉ。」といった。
 「うそよ・・そんなの。」
 亜希子の傷つく顔を見て、翔太は、それが嘘だと言ってしまいたくなった。
 しかし。
 「うそじゃねぇよ。」
 と、言ってその場を立ち去った。
 
 
 その日、遅くなっても、桃子先生が帰ってこなかったので、亜希子は小学校に続く
 道を眺めていた。
 すると、一台の車が亜希子の家の前に止まった。
 
 その車から桃子先生が降りてきて、亜希子は嬉しくなったので、駆け出そうとした。
 しかし、運転席に、体育教師の赤城寛先生がいた。
 「じゃあ、気をつけて、先生も生徒の家で大変だろうけど、頑張ってくださいね。」
 「ありがとうございました。それじゃあ。」
 と桃子先生が車のドアを閉めると、その車は行ってしまった。
 
 それを聞いていた亜希子はショックだった。
 (やっぱり、桃子先生は私の家で大変だったんだわ。)
 
 「ただいま帰りました。」
 少し、頭痛を感じながら家のドアを開けると、美代子が出迎えてくれた。
 「先生、遅くまで大変ですね。ご苦労様です。」
 「えぇ、すみません、遅くなってしまって、亜希子ちゃん、もう寝ちゃいました?」
 「えぇ、さっきまで先生を待っていたんですけどね・・」
 「それより、先生、少し顔色が終わるいですよ。お疲れですか?」
 「えぇ、少し・・。でも、大丈夫です。ちょっと亜希子ちゃんの顔、見てきますね。」
 
 亜希子の部屋の前で、疲れきった体に力を入れて、桃子先生はドアをノックした。
 コンコン。
 亜希子は、もうベットに入っていたけれど、返事をした。
 「はぁい。」
 
 「亜希子ちゃん?私です。ただいま。待っててくれたのね、今日は会議が遅くなっちゃって、ごめんね。」
 
 
 亜希子は、ベッドの中で、五月の誕生日に桃子先生がくれたくまのぬいぐるみを抱きながら泣いていた。でも、桃子先生の、この問いかけに、思わず、
 「いいの、待ってなかったもん、じゃあおやすみなさい。」
 
 と、言ってしまった。
 つづく
 
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2003/12/06(Sat)23:40:18 公開 / うさぎ
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■作者からのメッセージ
 初めて書きました。
 つたない小説、読んで下さってありがとうございました。
 感想をお聞かせくださったら幸いです。