- 『−B−第五章』 作者:最低記録! / 未分類 未分類
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第五章「本部にて」
雨は弱まりつつあった。
しかし、かなりのスピードで走っているこの車には強く打ち付けられる。
車内は静まり返っていた。
「処刑・・・」
俺はもう1度繰り返した、その言葉の重みを。
再び静寂が訪れる。
風景はいつの間にか、山間の中にいた。
重い空気のまま、道を進み行くと二つに分かれてトンネルがあった。
その内、左は通行止めとなっていた。
しかし、車は鎖で阻まれたトンネルに入ろうとするではないか!?
「あ!あぶな・・・・・・!?」
一瞬その光景にビックリして眼をつぶってしまったので、よく分からなかったが無事なようだ。ちゃんと、トンネルの中にいた。
「Bが作り出したものは、Bの波動を持つ。そういう、原理を使って、この車しか通れないようになってる」
カリウスが暗い顔のまま言った。
トンネルは長かった、その上真っ暗だ。車のライトが無ければ、大変な事になるだろう。
やがて、遠くに光が見えてきた。やっと外か。・・・?違う、あれは外の光じゃない。電灯だ。なぜ、ここだけ?
と、思った時だった。
車は急に、右に曲がりその影響で僕は左の席の方へ吹っ飛ばされた。
「ぐへ!」っと、声を上げると二人は苦笑いして「大丈夫か?」と聞いたので、「ギリギリね」と、答えた。
まがった後はスピードを落として走った。
それにも関わらず、さほど時間もかからないうちに、大きな光が見えた。
「あれは・・・」
外の光という訳ではなかった。ということは、ここが?
「あそこが、Bの本部。“レグルス”だ」
青白く、淡いようで強い光を放っている中に、車はだんだんと吸い込まれた。
眩しさに眼が眩んだが、よく見ればもう車は止まっていた。
「ほらほら、早く降りるぞ」
イオがせかしたので、準備をしてなかった俺はあせった(特に物を持っていた訳ではないが)。
さっさと降りて見ると、そこは近未来都市のようだった。
小さい円形の部屋が横にずらっと並んでいて、そこの1つに車が止まっていた。
「ほれ、早くしないと、お前も車と一緒に倉庫に積まれるぞ!」
というイオの言葉に、再びせかされて車から離れていき、円形の部屋から出た。
すると、ゴォォという音と共に円形部屋の床はエレベータのように、下に下りてゆき、車が途中まで降りてゆくと床ごと横にずれて、下に見える大きなベルトコンベアに流されていった。
流されたと同時に、穴の間から床がスライドして出てきて、ピタリとさっきのようにくっついた。
「ほぅ〜」
「ほら!いいから、早く行くぞ!」
と、再びイオが俺をせかす。
走って、二人の後を追っていくと、左右ガラス張りの廊下を通った。
ふと、右を見るとさっきの車が光に当てられて浮遊し、収納ボックスのような所に入っていった。
周りを見てみたが、同じように車が並べてある。
しかし、それだけではなかった。他にも飛行機のような物、兵器のような物、いろいろな物が収納されていた。高さも幅も半端じゃない、ここから見えるだけでも、数十万台はあるだろう。
きっと、その能力故にBの方が科学力が発達しているのだろう。
俺は、感心してしまった。
廊下を進んでいくと、沢山の人々が行き交っている・・・これまたものすごい広い!
ロビーのような所だ。
床は綺麗になってて、よくある大理石のようだった。で、天上には大きなモニターが3つ付いている。
人々が沢山行き交っている中を真っ直ぐ進んで、受付らしき所に向った。
皆、Bなのだろうか?・・・そうだよな、本部なんだから。
「カリスト中将!」
受付の男が大変驚いた様子で言った。
ん?カリスト・・・?
名前はカリウスじゃないのか?
「噂は本当なのですか?」
少し、怯えた目つきで言った。
「ほら、この子だ。」
男が俺を見た。しばらく見つめて、ため息をつくと再び言った。
「健闘を祈るよ」
俺が軽く会釈すると、再びカリウスに向き直った。
「総司令はただ今、エンセラドス大将と日本政府の開発について掴んだ情報の報告を受けています。先ほど始まったばかりなので、まだ時間がかかりますが・・・」
と言いかけたところで、カリウスが再び言った。
「いや、俺たちもよりたい所がある。別に後でもいい・・・4時頃でも良いか?」
男が横に置いてあるコンピューターで打ち込む。
「はい、4時から少年についての報告。とさせて頂きます。4時になったら、直接総司令のところへ言ってください。」
「わかった。」
カリウスは頷くと、来た所とは別の道へ進んでいった。
俺はついて行くと、さっきの事を聞いてみた。
「カリウスっていう、コードネームじゃなかったっけ?」
「ん?」
「だってほら、さっきの人カリ“スト”中将って呼んでたじゃん」
カリウスは「あちゃ〜」というような顔をして言った。
「あれ、教えてなかったっけ?本来のコードネームはカリストで、親しい間柄ではカリウスって、呼ばれてるんだよ。俺の場合は。」
俺は一言ハハーンと言って
「ニックネームみたいなやつ?」
カリウスは、頭を掻きながら
「ん〜、まぁそんな感じかな?」
そんな会話の後、レグルスの色々なところをまわった。
必要な物を揃えたり、機械の修理をしたり、書類を渡して更に貰ったりした。
そして、最後に休憩所のようなところで一服した。
俺たちが、紅茶のような物(正確にはなんだか分からない。グレーフェというらしいけど・・・)を飲んでいると、後から低い声がした。
「カリウス!」
カリウスが驚いて後ろを向くと、男が俺の隣に座った。
「お!フォボスじゃないか!」
カリウスが喜びの表情を浮かべていた。
「久しいな。カロン騒動の件以来じゃないか?フォボス」
フォボスと呼ばれた男は頬杖をつきながら答えた。
「そうだな・・・あれから会ってないんだな。というと、もう4年も会ってないんだな。・・・って、そんな事より!カリウスお前!噂は本当なのか?」
カリウスが暗い顔をする。
「ああ、本当だ。この子だよ。」
と言って、カリウスが俺の肩に手をかける。
フォボスが俺のほうを見た。
「そっか、お前か。・・・なかなか、いい顔してるじゃないか!お前、きっと強くなるぞ!」
すると、カリウスが苦笑して返す。
「おいおい、まだ認定されて無いんだから」
だけど・・・と、フォボス
「子供のブラックメイデルが、認定された前例は沢山あるじゃないか!実際、処刑された奴もいるが、あいつは特例だ。邪魔をしたんだからな。しかし、こいつはそういう訳じゃないんだろ?」
え?じゃあ、もしかして俺が処刑される確立は低いのか?
「それ本当?」
思わず俺が、口を開く。
「ああ、本当だ。お前と同じような境遇・・・と言うわけではないが、処刑されたのは300人に1人ぐらいなもんだ。」
フォボスが答えてくれた。
すると、カリウスが再び話す。
「しかし!今は、時期が悪すぎた!!人間、シリウス、どちらとの戦いも激しくなる中でのこの件だ。『いまは、ブラックメイデルに構っている暇は無い!』ということになってしまいそうで・・・」
すると、フォボスが微笑んだ。
「おい、カリウス。お前、ゲイブの事も関係してこの子を助けたんだろ?なら、とことん助けてやってみろよ。助けたなら、助けたなりの責任ってもんがあるぞ!・・・なぁ〜に、大丈夫だって!お前が気に病んでいたらダメじゃないか!消極的だと、議論にも勝てないぞ!」
「・・・そう、だよな!」
少しうつむいて、笑顔のカリウスが言った。
すると、フォボスがカリウスの肩を叩いて立ち上がった。
「じゃあ、坊主!挨拶は、認定後だ!また今度な!」
と言って、手を振りながら行ってしまった。
「・・・さぁ、もうそろそろ時間だ。総司令の所に行こう」
そういうと、イオも微笑んで何か言いたそうだったが、だまってついていった。
俺は、何かを決意した(と思われる・・・)カリウスに全てを任せようと思った。
「評議会」
と書いてあった。
緊張する。これほど緊張したのは、中一の時にセンコーに喧嘩を売った時以来だ。
あの時は、殴り合いになる所だった・・・!なんて!事考えている暇じゃない!!
これから、俺は生死の分かれ目の議論にかけられるんだ。
まぁ、俺に何かできるわけじゃないが、きっとカリウスが救ってくれるはずだ。
さぁ、来るなら来い!運命の分かれ道よ!
扉は、機械音を鳴らして、ゆっくりと開いた。
それは、俺の運命の扉だったのだろう。
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2003/11/28(Fri)18:32:44 公開 / 最低記録!
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■作者からのメッセージ
本当は議論まで書きたかったのですが、
長すぎるとつまらなくなるので、ここで切りました(^^;
次回以降、戦闘シーンが入ってきます。
暇があれば感想お願いします!m(_ _)m