- 『めぐり回廊』 作者:冬簾 / 未分類 未分類
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全角1282文字
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「 めぐり回廊 」
葵 琉娃
辺り一面白い世界、まるで壁の白い屋内プールのような所だった。辺りから水の跳ねるような音が聞こえてくる。
「此処は、何処?」
「此処は、幻想世界。」
と少女が答える、先程までは、何処を見渡しても誰も居なかったはずなのに。そう言えば自分も水の上に立っている。
「此処は、人の想っている幻の世界。すなわち幻想世界、死者の回廊。」
なおも少女は、言う。
「そうか…私死んだのだよね。」
「そう、病院で手術の際、薬の間違いでね。」
「別に私なにも悪いことしてないのに…」
ふと、涙が零れ始める。
「生まれた時から体が不自由で病院生活だったからお外に出たことなんて無かった。」
私は、続ける。
「一度でも良いから外に出たかった。」
「貴方が悪い訳じゃない。」
少女が涙を拭いてくれる。
「じゃあもう一度戻ってみる?」
少女が訪ねる。
「え?」
「貴方が死ぬ二日前に。」
いきなりな発言に私は、驚いた。
「私の力じゃ二日前にしか戻せられないけど。貴方が望むなら戻してあげる。」
「うん、戻ってみる。外を見て死ねれば良い。」
そして少女は、二、三歩後ろに下がり。両手を上にかざす。
「頑張ってね。」
と少女は、言ってくれた。そして最後に、
「…生きて…」
と笑顔で言った気がした。
目が覚めたそこには、いつもの変らぬ景色。いつもと変らぬ部屋、いつもと変らない天井、何処も変っていない。
「戻ってきたんだ。」
両手を上にかざす、天井の電気の光で少し眩しい。
「動く。」
そして私は、体に付いている線を全て外し。血が流れ落ちる体を連れ病室を出た。
「今居るのが此処だから…入り口は、あれね。」
病院内の壁地図で確かめる、後少しで外が見れる。
私が通ってきた道を看護婦が走ってくる、このままだと外に連れ戻される。
走った、血が流れながらでも走った。途中で転び掛けても走った。
「見つけた…此処が入り口。」
もう外の光が見える、そしてドアを開ける。
「此処が…外…なんだよね?」
誰も居ないのに独り言のように聞く。そろそろ視界が悪くなってきた…よく見れば血が流れすぎている。
「でも…最後に外が見れて良かった…」
そうして私は、息を引き取った。予定より二日早いけど、またあの子に会える。
辺り一面白い世界、まるで壁の白い屋内プールのような所。辺りから水の跳ねるような音が聞こえる。
「外、見れて良かったね。」
少女が言ってくる。
「うん、外があんなにすばらしい景色だなんて思わなかった。」
涙が零れる。
「これからどうするの?」
少女が言う。
「此処に居ても良い?」
「うん!大歓迎。」
少女は、嬉しそうだった。此処に来て初めて見た少女の笑顔だった。
「私、雨下 鈴菜です。」
私が言う。
「私、雨下 砂蓮 貴方の妹です。」
昔、母から聞いたことあった。私には、妹が出来るはずだったが流産したと聞いた。じゃあ砂蓮は、本当に私の妹。
「よろしく砂蓮。」
此処は、人の想っている幻の世界。すなわち幻想世界、死者の回廊。
人は、生涯を終えてからも楽しい人生がある。
〜終わり〜
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2003/11/28(Fri)18:00:17 公開 /
冬簾
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■作者からのメッセージ
どうも冬簾です。どうでしたか?この作品いきなり浮かんだストーリーなのであまりピンと来ない作品だと思いますが…
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