- 『涙のカタチ』 作者:南桜 / 未分類 未分類
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「ねえ、涙って、なぁに?」
そう唐突に、お父さんに聞いた。
だって、知りたかったんだもん。
お父さんは、笑顔で言った。
「それはね、悲しいとき、瞳からながすものなんだよ・・・。」
お父さんは、やさしく、優しく言った。
「じゃあじゃあ、涙って、悪いやつなの?!」
私は、また疑問ができたから、お父さんに聞いた。
すると、お父さんは、クスッと笑って、
「違うよ。涙はね、エリの瞳を、綺麗に、より可愛くしてくれるものなんだよ・・・。」
私は、その言葉で、顔がほころんだ。
「そうなんだ!知らなかった。」
私が、まだ、5歳の時の話。
でも、もう私は大きくなった。
今は、12歳。
「エリ!エリ!」
お母さんが、私の名前を大声で呼んだ。
「なあに?お母さん。」
私がお母さんに聞くと、お母さんは、涙ぐんでいった。
「お父さんが・・・お父さんが・・・。」
「えっ・・・・・?」
突然の別れだった。
長い間、ずっとそばにいてくれたお父さんが・・・。
私は、とても信じたくなかった。
でも、これは夢じゃなく、『現実』
逃げられはしない。
あんなにやさしかった、お父さんと、もう、あえないなんて。
私にそれ以上の悲しみはなかった。
たとえ12歳で、親離れのときだ・・とか言っても、やっぱり両親には、甘えたいもの。
まだまだ子供なのだ。
私は、お父さんが、とっても大好きだったから・・・。
私の名前をつけたのも、お父さんだって・・・。
「あの、ウィエルさん、亡くなったんだって・・・。」
「交通事故でしょ・・・?」
「そうそう、何でも・・・。」
「体も骨も、全てぐちゃぐちゃになっちゃったんだって・・・。」
近所のおばさんたちの話を聞いていた私は、とても辛い、辛い気持ちになった。
ここに、いたたまれなくなって。
私は走り出す。
踏み切りの中央に、立ち尽くす。
下りてくる遮断機も気にせず。
カンカンカン・・・。
汽車が近づいてくる。
だんだん迫る、私の『死』。
「お父さん・・・。涙って、これ?・・・私、もうすぐ、お父さんの所へいけるんだね・・・・。」
少女が残した最後の言葉。
それは、永遠の涙のカタチ・・・。
踏切には、彼女の涙が、まるで、宝石のように輝いていた・・・。
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2003/11/18(Tue)20:54:34 公開 / 南桜
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■作者からのメッセージ
初めまして。
南桜です。
初めてなんで、短編まず書いてみました。
どうでしょうか・・・?