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『君の心に、花火が咲いたら』 作者:輝 / 未分類 未分類
全角3579文字
容量7158 bytes
原稿用紙約13.55枚
「うあああああん!!!!」
子供のモノにしてはかなり広々とした部屋。
その部屋に散らばった大量のおもちゃ。
おもちゃにうもれて泣いているのは、まだ10歳程の、少年。
「こいつら役立たずだぁーー!!父さまぁーっ!!!うえええっ!!」
泣き出した子供はとまらない。
そんな子供を見て、疲れた顔でお互いを見やる青年が二人。
「どーするよ、マコやん。」
「この仕事を引き受けたのはお前だろ。何とかしろよ。」
「そんなこと言われても。」
事の発端は、二日前の金欠から始まった・・・。




「金がない。」
机をバンッと叩き、誠はいきなりそう宣言した。
目の前の友人は料理を口に運ぶ手を止め、ぽやっとこちらを見てくる。
そして。
「マコやんにしてはおもしろい冗談だね。」
「何が冗談だっ!!!」
「だぁって、金なら村を出る時にたんまりもらってたじゃんか。
 お兄さんのヘソクリだろ?」
「貯金と言え、貯金と!!」
思わずもう一回机を叩く。
この幼なじみと一緒に村を出る事にしたとき、我が身を案じてくれた優しい兄が渡してくれた金は、ゆうに2年分はあろうかという大金。
それがどうして数ヶ月で底を尽きてしまうのか。
あの大金の殆どと使い筋は・・・。
「お前が壊した建物、畑、道路、その他諸々の請求代だ!!!分かってんのかこの間抜けっ!!!」
「ひててててっ、らってひょーがないらろ〜〜っ!!」
怒り爆発の誠と、ほっぺを伸ばされ顔が変形しかけてる郁己。
二人が出した解決策は・・・・。
ずばり、バイト。





「あーもう、泣きやんでくださいよ〜。
 ほらぁ、おもちゃがこんなにいっぱい。」
誠が一生懸命なだめている少年。
この地の領主の一人息子である。名を悠太。
二人が引き受けたのは、この悠太少年の護衛だった。
が、護衛というのは表向きで、本当はわがままクソ餓鬼の遊び相手。
普段だったら泣いている餓鬼なんざ手荒に叱って終わりなのだが、
お偉いサマの息子に乱暴するわけにもいかない。
しかも今は真っ昼間で、郁己の得意技も使えない。
「どーすんだよ、泣きやまないぜー、この餓鬼。」
「郁己・・・頼むから敬語使ってくれよ;餓鬼とか言うなよっ!!
 態度最悪でバイト料引かれるぞ!!!」
「切実だねぇ、マコやん・・・。」
「誰のせいだ!!!」
二人が言い合いをする横で、まだ悠太を泣き続けている。
さっきから両親を懸命に呼んでいるのだが。
「父さまぁーっ!!母さまーーーっ!!!うああああんっ!!!」
そんな悠太を横目で見て。
少々のうんざりとした苛立ちと共に、誠はふと、思った。


何か覚えがあるこの感じ。
昔自分も同じようなことをして、誰かにひどく叱られたような気がする。
はて、誰だったか。


一行に泣きやむ気配のない悠太の様子に、だんだん郁己の顔も険悪になっていく。
イライラと右手に持ったアヒルのおなかを押していた。ぶびー。
そして。
「ああもうっ!!!限界っ!!!」
アヒルを床にバンッと投げつけて。
誠の袖をむんず、とつかんだ。
そのまま部屋を出ていく。
「お、おい!!郁己!!」
「昼飯食いに行って来ます!!!」
廊下にいた屋敷の召使いにそれだけ告げると、誠を引っ張ったまま、町へと出ていってしまった。




「あぁ・・・束の間の幸せだなぁ〜。」
「全く。」
屋敷の近くの小さな茶屋で。二人はゆったりとくつろいでいた。
屋敷を出てからゆうに30分は経過している。
「夜だったら泣いてる子供はお前の得意分野なのにな。」
「たとえ夜でも俺の特製花火をあんなクソ餓鬼に見せたくねー。」
「あ、そう。」
郁己が店員を呼んで注文の追加をしようとした時、目の前をいかにもウワサ好きといったおばさんが走っていった。
「ちょっとちょっと聞きまして!?さっき町の入り口で盗賊を見た方がいらっしゃるんですって!!」
その言葉に周りの町人達も息を飲む。郁己と誠も顔を見合わせた。
「ねぇ、おばちゃん。」
「あらぁ、何かしら?」
「その盗賊さ、どこ行ったか分かる?」
「そうねぇ・・。領主様のお屋敷へ続く森へ消えたとかなんとか・・・。」
瞬間、誠が刀を掴んで立ち上がった。
「行くぞ、郁己!!」
「バイト料確保のためにぃ〜っ。おーっ!!」
「お前な・・。」
何だかんだ言いつつも、二人は全力疾走で屋敷まで走っていった。




「おとなしくしていて下さいよ、坊ちゃん。」
「そのままじっとしていてくれれば、何にもしねぇからよぉ。」
その頃屋敷では。数人の男達が、悠太の部屋に押し入っていた。
悠太は召使いに抱えられ、部屋のスミで泣きながらふるえている。
男達は、その辺に散らばっているおもちゃを蹴散らしながら、何かを探しているようだった。
「アニキィ!!ありませんぜ!!」
「もっとよく探せ!!ここの領主が持っているハズだ!!!」
「だって、ここ餓鬼のおもちゃしかないッスよ〜。」
「ええい!!この根性ナシどもが!!!」
「お前がな。」
最後に聞こえた声は仲間のものではなく。
「だっ、誰だ!!!」
あわてて部屋を見渡すが、自分達以外には餓鬼と女の召使いのみ。
あとは・・・・。
「ココだよ、こ・こ♪」
−−−バンッ!!
と窓が蹴破られた。続いて飛び込んできたのは、小さな球が数個。
コロン、と床に転がると、いきなりそれは光やら煙やらを吐きながらはじけ飛んだ。
「うおぉっ!!」
「何だこれは!!!何も見えねぇっ!!!」
「なははは!!どーだ、新作!!!」
「まぁたくだらんモノを・・・。しかも花火じゃないし。」
目くらましに続いて部屋に飛び込んできた少年が二人。
有頂天に笑っている郁己を尻目に、誠は刀を引き抜いた。
次の瞬間に男達が床に転がっていたことは、言うまでもない。

男達を完全に縛り上げて外へ転がして。
その間も悠太はまだ泣いていた。召使いは何とか立ち直って仕事へ戻ったようだが。
一段落ついて悠太のところに戻ると、彼は部屋のスミでうずくまっていた。
郁己がゆっくりと近寄り、頭にポン、と手をおく。
と、その瞬間。
「は・・・はなせっ!!この役立たずっ!!!!」
「・・いって!!」
なんと。悠太がその手に握っていた積み木の一部分で郁己の頭を思いっきり殴ったのである。
「何すんだこのクソ餓鬼・・・!!」
予想外の出来事に郁己がつい条件反射で怒鳴ろうとした時。
−−−パンッ!!
と、乾いた音が部屋に響いた。
郁己が自分の隣にいる幼なじみを見、目を丸くする。
誠は悠太に平手をかましたのだった。
その目はいつもとは違う、本気の怒りですわっている。
「お前は今まで、親に何を教わってきたんだ!!!」
「・・え・・・。」
「人に助けてもらったら『ありがとう』!!迷惑をかけたら『ごめんなさ  い』だろ!!!
 そんな人間の基礎知識も持ってないのかお前はっ!!!」
でた。お得意のお叱り方法。悠太のほっぺをぐにーんと引っ張り、まだまだ彼の説教は続く。
「物は人を殴るためにあるんじゃないだろ!!お前の親はそんなことをして ほしくて、お前にそのおもちゃを買ってくれたと思うか!?」
「・・・お・・思わない・・・。」
「親に買ってもらったおもちゃで人に怪我をさせてうれしいか?」
「・・う・・・ふぇ・・・。」
「泣く前に言うことがあるだろ!!」
「・・ご・・・ごめんなはいぃ〜・・・。」
「よし。いい子だ。ちゃんと言えたら嬉しいだろ?逆に、相手に言ってもら った時には、嬉しくなると思わないか?心があったかくなるだろ?」
「・・うん・・。」
散々怒ったくせに、最後は優しく頭をなで、またあふれてきた涙を拭いてやっていた。
うーん、親の鏡、などと郁己が後ろで感心しているとは露知らず。


また、思った。
俺は昔、同じことを誰かに言われなかったか・・・?
だから俺は、今こんなことが言えるのか・・・。



「いやぁ〜、良かったねぇ、マコやんっv貧乏脱出だ♪」
「ホントにな。これに懲りたら新作研究は控えてくれよ。」
「いやでも、マコやんホントお兄さんに似てきたなぁ。」
「え?」
さり気なく話題をそらされたコトにも気づかず、思わず郁己の顔を見る。
彼はおもしろいモノを見るようにニヤニヤ笑っていた。
「悠太に言ってたあの説教。むか〜しお前がお兄さんに叱られてた時と全く おんなじなんだもん。」
「は!?」
寝耳に水。いや、それどころかお湯でもぶち込まれた気分。
あの兄が。怒っている顔など想像もつかない程穏やかな兄が。


少し嬉しかった。
自分に人としての基本を教えてくれたのがあの兄で、嬉しいと思った。
あの人が怒るのは想像がつかないけれど。


兄のおかげで、自分は人の痛みが分かる。
素直に礼と謝罪ができる。
心のあたたかさを感じることができる。
自分が人に言えた時、人に言ってもらえた時。




その時の心の暖かみは、

まるで花火が咲いたよう。





2003/11/16(Sun)23:49:53 公開 /
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■作者からのメッセージ
これは「はかなく〜」と同じ系列の話です。
別に続きってわけでもないけど、あっちも読んでもらった方が今回不完全燃焼でくすぶってる郁己を分かってもらえるかな、と。
今回はマコやんこと誠よりのお話でしたが、いかかでしたか?読んでくださってありがとうございました。
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