- 『透明』 作者:はるか / 未分類 未分類
-
全角3858.5文字
容量7717 bytes
原稿用紙約12.35枚
「校庭に集合して下さい」
その放送からHR中だった生徒が校庭に集まった。下駄箱でごったがえしの時私はみんながカバンを持ってきている事に気がついた。
「ねぇカバン持ってきてる?」
友達に聞いたつもりが男子だった。
「いや、持ってきてへん」
「あっ・・・じゃあ一緒に取りに行かへん?」
「うん」
って・・・なんで一緒にカバン取りに行く約束なんかしてるんだろうか。こんな事より校庭に行かないと・・とあたりを見回すと誰も居ない。
「嘘?!皆行った?!」
あせあせしながら校庭を見ても誰も居ない。ただ、雨が降っていた。体育館になったんじゃないかと体育館に入った瞬間すごい勢いで何かに吸い込まれる様な感覚にあった・・・。
気がついたら大きなブロックの山の中に居た。と1人の男が近づいてきた。
「このブロックすべてを集めるんだ」
「・・・」
呆然とその男を見つめて、ハッとして
「なんで・・」
と聞こうとしたと同時に背中に静電気みたいなものを感じた。顔をしかめて男を見上げると不気味な笑いを浮かべていた。
「集めるんだ・・」
さっきより低いトーンが増して不気味な雰囲気を見せていた。おずおず私は、分かりました。と言いブロックを集めに行った。
一体あの男誰なんだろうか?憎しみや哀しみがブロックを集めるとか、嬉しさや楽しさがブロックを遠ざけるとか・・・確かナオという名前だった。でもあの顔・・・どっかで見た記憶があった。毎日の様にブロックを集め日に日に人が増えている様だった。しかし、誰も居ないの同然。1人だけ独立してた。喋ろうなんて考えも毎日のブロック集めで欠片もなかった。もし、あったとしても喋る事は許されなかった。ただ、ブロックを集めるだけ。体力だけを消耗するならまだしも何故か哀しみにつぶされそうになる。特にブロックを持って歩いている時。誰とも喋る事が出来ない。孤独だった。喋るとしてもナオとだけ。私達がブロックを集めるたびに、ナオは不気味な笑みを見せて私達を脅した。
「ねぇ」
「・・・はい?」
ブロックの山の後ろの方に1人の少女が手招きをしてこっちを見ている。私はあたりを見回してナオが居ない事を確認してからその少女に駆け寄った。
「喋ったらだめなんだよ。ナオに・・」
小声で喋ると少女は最後まで聞かずに
「名前はなに?」
なんてのん気な事を言ってる。
「だからぁ喋っちゃ駄目なんだって」
ちょっとキツイ口調で言うと少女はごめんと一言言ってブロックに向かって行った。その少女に向かって私は言った。
「由紗だよ」
くるっと振り向きありがとうと少女は笑ってブロックを集めに行った。なんだか嬉しい気分になって小さく笑いながらブロックを担ぎ上げ運んでいるとナオは目の前に立ってニッと歯を光らせて笑い去って行った。ぞわっと嫌な空気を感じながらブロックを集め続けた。
「由沙」
後ろから呼ばれて振り向くとこの前に会った少女だった。一言一言ずつの会話で対して何も喋る事は出来なかったけどナオには見つからなかったから会ってはこうして喋っていた。あの少女の名前は司というらしい。ブロック集めだけだったあの日から司と喋る様になってから少し楽しくなっていた。しかし、その一方で集めたブロックが消えるという現象が起こっていた。司と喋るようになってから。集めても消えてしまうので皆機嫌が悪かった。もちろんナオも機嫌が悪かった。
「由沙・・」
なんとなく嫌な予感がして振り向くとナオが怖い顔をして私を睨んでいた。
「由沙、お前に言ったよな?何がブロックを集め何がブロックを遠ざけるか」
「・・・・・・はい」
数秒考えて弱々しい声で答えた。なら皆の為にやめるんだなとキツイ口調で言ってナオはブロックの山へ消えて行った。知られていたんだ・・と、もの凄く怖くなって司が話しかけてきて無視するのは嫌だったから司から避けるようにしていた。不思議そうな顔はしていたけどなんとなく分かっていた様で近くに居ても喋っては来なくなった。順調に集まり出したかと思えばまた、消えて行く現象が起こった。多分他の人が喋ったんだろう。どれだけ小さな嬉しさも大きなブロックを遠ざけて振り出しに戻そうとする。ナオはそのたんびに喋った2人のどちらか1人に私に言った同じ事を言って脅したんだろう。何回かこんな事が続いたけどいつの間にかなくなった。
ブロックもあと少しになり後数個となった時、ナオはしずんだ気持ちだった。最後のブロックを積み上げて全部終わった瞬間皆が並び出した。私は呆然とその光景を眺めていると肩を叩かれた。
「由沙・・・来い」
訳も分からずナオについて行くとそこは皆が並んでいるまん前だった。
「これはなんだ?」
ナオの手に一つの箱があった。
「あっ・・それは・・」
冷や汗たらしながら小さな声で、返して。と言うとガチャという音と共に私の手に戻ってきた。ナオは皆の前に立ち大声を出した。
「ブロックはすべて集まったみたいだな。早速やらせてもらうぞ」
不気味な笑みと共に積み上げられていたブロックが形を変えた。
「それは爆弾だ」
ニッと笑ってこっちを見てきた。
「なっなんですか?」
箱を抱えながらそう言うとナオは皆の方に向き直って
「ここは爆破する。つまり皆・・・死ぬんだ」
死ぬんだと言うところだけやけに低い声で言った。ざわざわとし始める。私は泣きそうな顔でナオを見上げた。
「なんで・・・?」
「由沙、何がブロックを集めるか答えろ」
そう言われて小さな声で始めた。
「憎しみや哀しみがブロックを集めます」
「そうだったな。って事はここにいる皆が憎しみや悲しみを持っていたと言う事になるよな?」
「そうですね・・・」
「その感情が向けられるのは俺だけだよな?喋るのは俺だけなんだから、喋りもしない人に憎しみなんて感じない」
「そうなるんですかね・・」
「第一お前も俺を憎んでいただろう?」
「・・・・・・」
私は黙り込んでしまった。確かに憎んでいた。喋る事も許されずただ、ブロックを集め続ける事をやらされて集まったら集まったで私達は殺されるなんて。しかもここを出る事も出来なかった。ストレスが溜まる一方だった。ここまで追い込んだナオを憎んでないなんて言えなかった。
「やっぱり、憎んでいるんだな」
はぁ・・とため息をつき哀しそうな顔をして爆弾の方へと歩き出した。皆の視線の先はナオだった。足音と泣き声だけが響いていた。私は箱を開いた。中には光る硝子の破片のようなものが入っていた。その箱を閉め、マジックを取り出し何かを書きだした。とナオが大声で笑い出した。
「もう、終わりだ。この場所は、この世界は!」
泣き声が大きくなった。箱を抱えたままナオに向かって歩きながらこう言った。
「やめてよ・・・先生」
「先生?」
「ナオ・・・あなたは私のクラスの担任でしょう?」
「違う!何を言っているんだ。そんな事聞いてられるか!」
「先生!!止めてく・・・・・」
私の声は聞えなかった。語尾が濁って何も言えなくなった。箱に書かれた文字が、涙で滲んだ。
「先生・・・先生・・・・・・」
消えそうな声で何回も何回も言った。だけど、聞えてない。声の大きさは自分にも聞えるか聞えないかぐらいだった。
「旭日由沙・・・君は確かに俺の生徒だ・・・・・・」
そんな声が聞えたと同時に凄まじい光が体育館の中に広がった。
爆発した体育館の外、ナオは立っていた。と、足もとに箱があった。由沙が持っていた箱だ。箱の表面には文字が書かれている。
「ごめんなさい。先生。あり・・・がとう」
滲んだ字で読みにくくなったその文字を読んでナオは涙を流した。箱を開けて中にあるものを手で握り締めた。綺麗なモノが好き先生が言っていた事を思い出した由沙は見つけては拾って取っておいたのだった。
「ありがとうな・・」
「おぃ!おい!!」
「ん・・・・・」
「どうしたんだ?旭日!」
「先生?!先生?!」
大泣きしながら先生にしがみついて泣いた。あれは夢だった。なにがあったんだ?というよな顔をした先生はずっと、由沙を見ていた。それから数時間経ってカバンを取りに行こうと男子に言われた。
「え?」
「一緒にカバン取りに行こうって言ったんちゃうんか?」
「・・・・・・あぁ・・・ごめんごめん」
先生はいつの間にか居なくなっていて男子と私だけだった。
「私、変な夢見てん・・・体育館が爆発する夢」
「おいおい・・・だから泣いていたのか?」
「だって先生が爆発させたんだよ・・・?」
ふ〜ん・・・と無関心な声で返事をして教室へ入って行った。私が入ると誰も居なかった。「木月?」
男子の名前を呼んでも応答なし。帰ったのかと思い、カバンを取って教室を出ようとすると黒板に何かが書かれていた。
「旭日の事好きや」
真っ赤になって黒板消しと手に取り消し始めた。と手を止めてチョークを手に取り何かを書き出した。
「ありがと」
そう書いた。すると木月が後ろから声を出した。
「由沙て呼んでもええ?」
「・・・・・・勝手にすれば?」
「なんやねん!その態度!」
「・・・修哉」
真っ赤になった木月の顔があった。
「お前がなんで先に下の名前で呼ぶねん!」
「呼んだもの勝ちだよー!!」
と言いながら走り出した。その後ろを木月が追う。廊下に2人の足音が響いた。
「旭日・・・悪かったな。夢って事で許してくれ。お前には怖い思いをさせたな。変わりに木月をプレゼントしてやるぜ」
そう言ったナオ、いや先生の手にはきらきら輝いた透明のブレスがあった。
-
2003/11/15(Sat)22:10:58 公開 / はるか
■この作品の著作権ははるかさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
何が言いたいんだか・・・。悪夢を見てしまった少女を書こうかと書いたんですが途中で話が変わってますね・・。恐怖におびえた後、つまり嫌な事があった後にはいい事がある。って事が言いたかったんですかね・・。不思議な何かを感じてもらえれば幸いです!感想お願いします!!