- 『−B−第四章』 作者:最低記録! / 未分類 未分類
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第四章「車内にて」
パリィィン
ガラス窓は見事に砕け散って、俺たちを宙に放り出した。
俺はカリウスに抱かれて下まで落ちていく。
本当に大丈夫なのか?
不安でいっぱいだったが、俺はこの2人を信じると決めたのだ。
だから、とことん信じる。その先に何があっても・・・
風と雨が轟音を上げているような気がした。
雨粒はこれでもか、と言うほどに俺を打ち付ける。
すると、突然轟音が鳴り止み、俺はすっと立たされた。
「はい、ご乗車ありがとうございました。」
と、イオが一笑する。
「そんな事いってる場合か!」
カリウスが半ば笑いながら怒鳴った。
雨のうえに、風も強く、時間帯もちょうどよかったために、人はほとんど居なかった。
しかし、居た人はその音にこっちを見ていた。
そのため、カリウスが最初に走り出した。
続いて、イオと俺も追いかけた。
何処に向って走っているのか分からなかったが、町から出ようとしているに違いない。
それにしても、随分速いスピードで走っている割には息切れもしなかった。
車より、少し遅い位だった。
やはり、俺はもう人間ではないのだろうか・・・
半B・・・といった所か・・・・・・
少し、面白くなった。それも、決して悪くないと思い始めたのかもしれない。
しばらく走っていくと、商店や住宅の街を抜けて、もう少しまばらな所まで着いた。
と思うと、突然カリウスが止まったので、俺はブレーキをかけきれずぶつかってしまった。
「あ、悪い。突然に止まりすぎたな」
と、カリウスが行っている間にイオが虚空を掴んだかのような格好をして、引っ張り上げた。
すると、路地裏に止めてあった車がこっちに走ってくるではないか。
俺たちの目の前で止まると、ドアをパカッと開いた。
バンのような、軽トラのような・・・
荷台があるような、無いような・・・
なんともいえない。初めて見た車だった。
イオが運転席に乗り込み、カリウスが助手席に乗った。
「ほら、お前も早く乗れ!」
と、言われたので、俺も後ろの席に飛び乗った。
ドアを閉めると、イオは猛スピードで道を走らせた。
「うわぁ、びちょびちょだなぁ。」
またかよ、と言わんばかりにカリウスが言った。
すると、イオが。
「それにしても、健二。お前、よくやったじゃないか!」
それを聞いて、カリウスも。
「ああ、すごかったぞ!お前は命の恩人だな。」
俺は、少し照れ笑をして、頭を掻いた。
そして、胸に秘めた決意を言うべきだと思った。
「俺、あんたらに着いて行くよ。今までは敵だ。と、信じられない。と、思ってたけど、今なら信じられる気がする。」
そうすると、2人とも笑顔で軽く笑った。
そして、疑問になった事を聞いてみた。
「さっきの奴らも、シリウスなのか?」
二人がそろって「いや・・・」という。
そして、イオが続けた。
「あいつらは人間だ。ふつーのな。」
!? 俺はビックリした。人間はBの存在を知っているのか?
「実は、一部の人間にはばれている。それも、この日本の特権階級者達にな。」
「な、なんでまた・・・」
今度はカリウスが言った。
「我々がシリウスを倒した後は、必ず処分する事になっているんだ。だが・・・ある奴が、それを面倒がって人目につかないところに放置した事があるんだ。」
俺は濡れた髪を手櫛で整えながら前に顔を出した。
「だから・・・?けど、なんで殺そうとして来るんだよ!?」
今度はイオが言った。
「さぁーな。けど、捕まえて仕組みを理解したら、生物兵器にでもするんじゃねぇのか?・・・ったく、あきれるぜ。勝てるはずも無いのによ。殺されに来てるようなもんじゃねぇか。」
顔をしかめるイオに更に問う。
「なんで、そんな思いしてまでBを?」
はぁっと、ため息をついて答えた。
「報奨金が出るんだよ。訓練をトップクラスで抜けた精鋭達にのみ知らせて、志願者を派遣するんだ。B波探査機とか言うのを使ってな。」
「そんな物まで作られているのか!?」
知らなかった、日本とBの関係にビックリしてつい大きな声を出してしまった。
「それだけじゃない。普通の拳銃はBには効かないんだが、奴らの銃は確実に射貫く。装備だって、Bの波動を多少吸収するように作られているんだ。・・・国家の予算にも含まれているらしいぞ、開発費やら、報奨金やらがな。」
小さな声で、うわぁ〜と声を出してしまった。
「ってことは、敵はシリウスだけじゃないって事か!?」
うむ、と2人とも頷いた。
車はなおも、スピードを上げて雨の中を走りつづけた。
しばらくすると、カリウスが包みをくれた。
ありがとう、と言って受け取ったが俺の嫌いなホワイトチョコレートだった。
「げっ!?」
「なんだ?嫌なのか?」
「い、いや、ホワイトチョコレートはちょっと・・・」
と言うと、2人は笑い出した。
「な、何がおかしいんだよ!」
すると、イオが。
「悪いが、ホワイトチョコレートなんて贅沢な物はねぇな!」
と言って、笑った。
更に、カリウスが続けた。
「とりあえず、食ってみろ。甘いもんじゃないぞ!」
と言って、笑った。
俺は、ムッとして要らないと、言おうかと思ったが、それもそれで悔しかったので、無理矢理口に押し込んだ。
「どうだ?」
と、カリウス。
なんだ?この味は・・・
チーズか!?
「これ、チーズ?」
と言うと、また2人は軽く笑って、カリウスが答えた。
「ん〜、まぁそんな味はするな。本部で作られている物でな、派遣されたBの栄養剤みたいなものだ。2つ食べるだけで、腹も膨れる。・・・ほら、さっき食いかけだっただろう?だから、試しにやろうと思ってさ。」
確かに、チーズとは少し違う味だが、俺は気に入った。
「そういえば、本部ってどういう所なの?」
俺は、前から思っていた疑問を口にした。
すると、イオが言った。
「すぐに分かるさ。今向っているんだからな。」
少し顔が暗かった。
そして、カリウスが言った。
「お前は本部に認定してもらわないといけない。」
?どういうことだ?
「お前みたいな人間が間近にいることを俺たちは気付いてやれなかった。そのためにこの世界に入ってきてしまった。だから、俺たちは処分を受けなくてはならないかもしれない。それに・・・」
暗い顔つきでうつむいた。
「それに?」
一時の静寂が車を包んだ。ただ、ただ、雨が車に打ち付ける音がする。
その静寂をカリウスが破った。
「もし・・・お前が本部に認定されなかったら・・・」
「たら?」
・・・・・・・・・
「・・・・・・お前は処刑されるかもしれない。」
俺は音を立てて、つばを飲み込んだ。
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2003/11/15(Sat)17:28:33 公開 / 最低記録!
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■作者からのメッセージ
さぁ、本部に着いて健二はどうなる!?
つまらない、会話ばかりの四章でしたが、
暇があれば感想お願いしますm(_ _)m