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『はかなく燃ゆる、夜空の大輪』 作者:輝 / 未分類 未分類
全角3248.5文字
容量6497 bytes
原稿用紙約12枚
夜空に花が咲いた。
大きな音と共に。炎の花が。
初めてみた。キレイだった。初めて親父を尊敬した時だった・・。

−−−父さん、スッゲー!!何で空に花が咲くの??
−−−あれは『花火』ってんだ。キレイだろ?空で炎が弾けてんのさ。
−−−へぇ〜。父さんがつくったの?
−−−ああ。何たって父さんは、世界一の花火師だからな!!

色とりどりの光にてらされていた親父の笑顔は、今でも色あせないで残っている・・・。







突然、爆音が轟いた。村人達が何事かと騒ぎ始める。
そんな中・・・。
げんなりとした顔でため息をつく、刀を帯びた若い青年が一人。
「・・まさか・・。」
品定め中だった商品を戻すと、煙が上っているほうへと駆け出した。


「すいませんっ・・ちょっと通してください!!」
現場は、既に大勢の野次馬でごったがえしていた。
宿屋の隣の納屋−−だったもの−−が、煙を上げてくすぶっている。
もはや原型はとどめていない。
やっと前へ通してもらえたその時、突然目の前の瓦礫を押し上げて、下から人が出てきた。
村人達が驚きと賞賛の声をあげる中、青年は瓦礫から出てきた人物を思いっきり怒鳴りつけた。
「郁己っ!!お前って奴はぁっ!!!」
「うわっ、ごめんってマコやん!!ごめーん!!」
下から這い出てきたのは、通称「マコやん」と同年代の青年。
青スジをたてて怒鳴っているマコやんの前で、必死に手をあわせ頭を下げ謝っている。
「もうちょっとで成功だったんだって!!ホント!!マジで!!」
口では謝っていないが。
この後。郁己はマコやんにこってりしぼられたあげく、宿屋の女将にも土下座をするハメになった。
許してもらえる条件は、今夜一晩、村の畑の見張りをすること。

ところで爆発の原因は・・・・。

「また花火か・・・。」
マコやん−−誠がまたまた盛大なため息をついた。
その前には湯気たちのぼる茶とおいしい三色団子。
隣では郁己が5皿目の団子をたいらげていた。
「いやな、スッゲーいい花火のアイデアが浮かんだわけよ!!
 もう超ーーっスゲーんだぜ!!空中で花火が踊る歌う!!!」
「歌う・・!?;;」
本気で歌う花火を想像してしまった。ちょっと怖い。
この幼なじみなら本当に作ってしまいそうだから、なおさら怖い。
「お前なぁ。」
またため息。
「もう普通の花火だったら標準以上のモノが作れるじゃないか。
 花火師としての腕前はかなりのものだろ?
 なのに!!!
 何っっっでお前はあーいう危険物ばっか作るんだよっ!!!」
危険物イコールさっきの爆発物のことである。
郁己と二人で旅にでて数ヶ月。最近こんなんばっかりで。
一回二回は見逃してきたが、仏の顔も何とやら。流石にもう限界だ。
郁己は団子の串を軽く振った。
「マコやん甘い甘い。世界一の花火師ってのはこんなんじゃねーの。
 もっとスゴイの!!誰にも作れねーようなスッゲー花火が作りたいの俺  は!!」
「じゃぁせめて爆発しないようにしてくれ・・・。」
誠の苦悩は放っておいて、とりあえずは今日の畑の番である。



「ねみ〜・・。」
「誰のせいだ誰の!?」
深夜。二人は畑の前で座り込んでいた。
誠の腰には二振りの刀。郁己の横には、何やら巨大な筒が横たわっている。
「スッゲー暇〜。賊なんか出ないって絶対。
 暇〜暇〜。花火作りて〜。」
「やめろ;;」
「腹減った。さっきの団子食ってから何も食ってねーじゃん。」
「しょうがないだろ。時間なかったんだから。」
ダラダラとそんな会話を続けて。

暇度が絶頂に達した頃、畑の向こうの茂みがガサガサと音をたてた。
二人は何気なくそちらを見やる。
出てきたのは賊ではなく、数人の村の子供達だった。
「よ。」
郁己が片手をあげて挨拶する。誠がこっちにおいで、と手招きしてやると、少々物怖じしていた子供達が
こちらに駆け寄ってきた。
「どうした?」
「あのね、お母さんがおなか空いてるだろうからってコレ!!」
そういって竹の包みを差し出した少女は、よく見ればあの宿屋の娘。
包みの中には、ホクホクのおにぎりが4つあった。
「おっ、うまそーっ!!俺コレもーらいっ!!」
「あ、コラ!!・・ありがとう、わざわざ持ってきてくれて。」
「ううん!!だってお兄ちゃん達は村の畑を守ってくれてるんでしょ?
 頑張ってるんだよね!!だからいいの!!」
なんて無邪気な笑顔で言ってくる。先ほどまでのダラけた態度は見せられない。

おにぎりを平らげ、子供達としばらく談笑していると、今度こそ本命が来たようだ。
何やら誰かの気配がする。
「マコやん、来たぜ。」
「・・お兄ちゃん、どうしたの?」
「何でもないよ、下がってて。・・・郁己、アレ頼むぞ。」
「りょーかいっ!!」
郁己が答えた瞬間、黒い服に身を包んだ数人の男達が茂みから姿を現した。
首領格の男が、刀をこちらに向け、すごみをきかせた声で言ってくる。
「そこをどいてもらおうか。」
「やーだね。マコやん、やっちまえ!!」
その声を合図に。
黒服の男達の間で悲鳴と血しぶきが上がった。
「な・・何だ!!何があった!!?」
チン、と音がして誠が刀を納める。
ちゃんと子供達には目の前の光景が見えないように死角に立って。
「きゃーっ、マコやんかっこいーっ!!しびれる〜っ!!」
「ふざけてるバアイじゃないだろ。早くやれ!!」
「わぁってるって!!」
ニマッと笑って。それまで横に置いてあった筒を肩にかついだ。
まだ動揺がおさまらない賊に向ける。
「いくぜっ!!!『俺様花火』っ、ファイヤーーーッ!!!」
その叫びと共に。
筒の先端からもの凄い勢いで炎の固まりが噴出された。微妙に人の顔に見えるような・・。
黒服の男にぶつかり、そのままの勢いで茂みまでつっこみ・・・。
そこで一気に炎上した。
男の絶叫がこだまする。
「お〜、上出来上出来♪よく燃えるじゃないの。」
「バカ言ってる場合か!!火消すぞ!!」
「は〜い。」
二人(主に一人)の消火活動により、賊の首領は炎上したにもかかわらず一命をとりとめた・・・らしい。

「アレはいつ見てもスゴイけどさ・・もうちょっとどうにかならないのか?
 毎回火消すの面倒だろ。」
「しょうがねーじゃん花火だもん。」
火を消して畑に戻ると、子供達が待っていた。
誠によってあの光景を見るのは避けられたとはいえ、かなりの恐怖だったようだ。
お互いに抱き合って未だ震えている。
「あー・・ごめんな?怖かったろ?」
誠が優しく問いかけても、泣きじゃくるばかりでまるで話にならない。
とそこで。今度は郁己がため息をついた。
「ったく。いつまでもビービー泣くなっての。
 しゃあねぇな。ちょっと見てろお前ら!!」
筒を今度は夜空に向けて。
ドンドンドン!!!
と3発打ち上げた。そして・・・・

-----ドーーーーン!!!

すさまじい音と共に、夜空にあざやかな花が咲いた。
続けざまにもう2輪。
子供達は泣くのも忘れて叫び声をあげている。

「うわぁうわぁ!!今の何!?」
「スッゴーイ、キレイ!!お兄ちゃん、もう一回やって!!」
「よっしゃ、見てろよー!!」
「・・普段もこーいう普通のを作ってくれよ。」

誠の苦情はスッパリ無視。
何発も何発も。夜空に向かって打ち上げた。
その度に子供達が笑顔になる。
昔自分がそうだったように。
親父が打ち上げる花火を見て、この子供達のように喜んでいいたあの時。

夜空に開く、炎の花。
はかなく散って消えるけれど、心の中では止まらない。
あまりのはかなさの中で輝く優雅さ。
それはまるで、人の生。
一瞬の輝きのために。自分の進む夢のために。
はかなく消えて散ろうとも、走る自分は止まらない。

「お兄ちゃんどうしてこんなコトできるの??」
「何やってる人なのー!?」
あの時の自分と同じ、無邪気な笑顔を向けてくる子供達に。
あの時の親父のように。
俺は親父のようになってみせるから。

「俺はな・・世界一の花火師だぜ!!」


人が夢を持つ限り、花火は未だ止まらない・・・・・


2003/11/14(Fri)22:24:13 公開 /
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■作者からのメッセージ
ここではないどこか世界のお話です。
現実の花火はこんなんじゃないですよね;;
お読みくださってありがとうございました。
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