- 『夢人 第二章』 作者:棗 / 未分類 未分類
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 原稿用紙約3枚
 
 「旅立ち」
 
 
 …自分としては格好よく切り出して見たものの。
 ボクたちはしゃがみこんで、ケラケラと笑いあっているだけだった。何でかは分からない。
 
 そして、暫く当初の目的を忘れてワイワイしていたが、僕は本題に切り替える事にした。
 「さて、旅に出るといったものの。どうするか?」
 賑やかなムードが一変した。
 
 シ――――ン。
 
 その気まずい沈黙を明るく破ったのは、フィルが鞄を漁るガサガサという音。
 ガサガサという音が静まると、ニッコリ微笑み、取り出した物を僕の前でゆらゆら揺らす彼女がいた。
 「カルル!あたし地図帳持ってきてたのよ♪使って使って〜!」
 シェルも鞄を漁り、黒い筆箱を地面に置いて言った。
 「俺、筆箱に方位磁石のキーホルダーが付いてる」
 何だか胸がわくわくする。旅って楽しいかも、という思いを精一杯込めてボクは二人に呼びかけた。
 「じゃあ、何処に行くか?」
 
 シ――――ン。
 
 …地図帳を眺め回すしかなかった。
 
 目移りしてしょうがない。遠いあの町に行こうか?思い切って船で川を渡ろうか?それとも手頃なあの村にしようか?今景気が良いあの国まで長旅をしてみようか?
 
 すると、シェルが沈黙を切り開いた。彼の目も、ボクと同じように爛々と輝いていた。
 「そうだ、隣町のペルガンに行かねーか?俺の親戚も居るし…そこに一旦頼って見ようぜ」
 
 ペルガンは、港町だ。埋め立てられた海岸には沢山のビルが行儀良く並び、若々しい笑い声が溢れている。もちろん外交も多く、これから旅に行く場所を決めるには丁度良い場所だ。
 
 ボクはあの町があんまり好きではなかったけど、ジェリーはいつも、「ペルガンに行きたい」と駄々をこねていたっけ?
 ふ、と笑いがこみ上げ、ボクは高らかに言った。
 「よーし、そうしよう!そうしよう!」
 ボクは、多分壊れていたのだろう。二人は少し気遣いがちだった。
 
 そんな訳で、行き先についての討論は終わり、ボクたちは大して必要の無い方位磁石を見ながら、ああでもないこうでもないと言い合いながら、前へと進んだ。
 
 ペルガンの街で、僕らは運命と対峙しなければならないなんて事は、全く知らないで。
 
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2003/11/13(Thu)19:21:38 公開 / 棗
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■作者からのメッセージ
 この作品の方向性が完全に定まりました。
 軽く20章は行ってしまいそうな予感です(汗)どうか、愛想を尽かさずに見守ってやって下さいv