- 『罪人の国 第一章』 作者:緋鈴 / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.25枚
冷たいコンクリートの壁。閉ざされた鉄格子。
それはここが一種の牢屋だということを意味している。
「初めは何もなかったんだよ
でもね、全て壊してしまったの・・・」
「どうしたことだろう?あの少女は・・・。」
くじ引きで負けて無理やりここに回された看守。彼の名前は・・・もう本人も覚えていないだろう。彼も所詮罪人の一人。IDしか持ってはいない。
ID:ai0933
「第一級犯罪者。危険度S。」
彼の耳元でささやいたのは同じ班の青年だった。ai0933より少し年下だ。彼もまた犯罪者であり看守でもある者達の一人だ。
ID:mi1223
「マジかよ!」
「お前ホント何も知らなかったんだな・・・」
ai0933はこの国でも世間知らずで有名だった・・・。
「悪いかよ。俺が『こんな国』で拾われなければなぁ。」
「そっか。お前はこの国に捨てられたんだったな・・・」
この国ではあまりにも罪人の取締りがきつく、犯罪者リストも数え切れないぐらいだ。牢屋の土地も足りたものではない。
無論看守も必要で、犯罪者の中からまともな奴を選んでいる。もはや、この国には市民さえもいない。
全て国を滅茶苦茶にして支えられなくなり壮大な政治プログラムを残して逃げて行った国王のせいとも言えるだろう。
今、彼らは所詮機械でしかない。完璧で、最悪なプログラムに従っているのだった。逃げることさえ許されはしない・・・
物語はこの国から始まる・・・
「ねぇ、遊んでよ・・・」
また少女が口を開いた。
「喋った・・・!」
「そりゃあ、機械じゃあねぇからな。」
あきれた表情でmi1223はからかう様に言った。
「ここから出して・・・。」
ai0933は息を呑んだ。
「残念だけど、それは出来ないんだ。」
「何で・・・?」
「いいじゃねぇか、別に。」
少女はクスッと笑った。ai0933はmi1223に拳を突き出した。
「いい加減な事いうなよ・・・!」
「逃げれば良い。」
「はぁ?お前、この国からは出られないんだぜ。そんなのこの俺だって十分理解している。」
ai0933はいつになく熱演している。その後ろでは少女がつまらなそうに牢屋の中をふらふら歩いていた。
「こいつを使うんだよ。」
mi1223は少女を指差した。
「この子を・・・?」
「つい最近調べたんだけどな。こいつは相当使える。手助けになってくれるはずだ。」
ai0933は首をかしげた。彼の言っていることは、確かに無謀である。
「計画は前からあったんだ。ただ・・・嬢ちゃんが協力してくれるかってね。ここから出たいんだろう?」
「うん・・・。」
少女は静かに。力ずよくうなずいた。鉄格子の間から、赤く染められた細い手が伸びてきていた。
「そんな・・・無謀だ。」
「やってみないとわからないだろう?」
mi1223は少女に鍵を渡すと彼女は器用に錠前をはずした。
「行くか・・・」
「えっ・・・どこへ?」
「知らない。とにかく外へ・・・外を目指して。」
NEXT・・・
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2003/11/10(Mon)21:24:10 公開 / 緋鈴
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■作者からのメッセージ
初投稿の作品です。
少し重い話になりますが、楽しんでいただけると良いと思います。